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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第10章 幸せな結末
37/46

10-4

「いらっしゃい。あれ、武じゃねーか!」


 近くの食堂に入ると、やけに元気な声が聞こえた。現れたのは高校の同級生の鈴木だ。

 そういや、この食堂鈴木の親父がやっていたんだっけ?

 別の店にしときゃよかった。


「鈴木。久々だな」


 後悔しながらも、笑顔を浮かべて挨拶する。


「うおお。外人じゃねーか。すごいなあ。お前のお客さんか何か?」


 昔からちょっとおかしなテンションだったが、今もかわらない鈴木は大げさなリアクションをとりながら、ぶしつけな視線を撫山に向ける。

 奴はそういう視線が嫌いなのか、顔が引きつらせる。

 ちょっと可哀そうだな。

 借りもあるし、俺は鈴木の注意をそむけるため口を開いた。


「まあな。鈴木、おまえんとこのお勧めはなんだ?」

「それは当然、すずっちスペシャルよ」

「?!」


 『すずっちスペシャル』

 それはありなのか? 

 そう思ったのは俺だけじゃないらしい。

 眞有も撫山も唖然としている。しかし鈴木は構わずそのスペシャルについて説明する。

 要は親子丼なんだ。地元産の食材を使ったものか。

 まあ、頼んでみるか。


「……じゃ、俺はそのすずっちスペシャルをもらおうかな」

「OK。そうこなくっちゃ。そちらの二人はどうする?」


 鈴木は嬉しそうに頷くと眞有と撫山に視線を投げかける。


「えっと、じゃ、私もそれで」


 この状況で別のものは駄目だと思ったのか、眞有がそう口にして、撫山も同様に注文する。 


「じゃ、私もそれで」

「あれ、外人さん。日本語話せるんだ。すごいね!」


 完全に外見は外人の撫山が日本人同様の日本語を話すためか、鈴木はオーバーアクションで手を叩く。


「ハーフなので」

「そっか、ハーフ、ははっは」


 撫山が顔をひきつらせながらも生真面目に答えるのを見ると鈴木は陽気に笑いながら台所へ消えていった。

 俺達はとりあえずテーブル席に座る。

 俺の隣に座るのはもちろん、眞有で向かいは撫山だ。奴は穏やかな視線を彼女に向けている。

 奴は本当に眞有が好きなんだな。

 眞有はどうなんだ?

 本当に俺が好きなのか?

 俺が隣に目をむけると、彼女はどうしたの?と笑いかける。

 その笑顔に俺は救われるような気がした。

 眞有は俺の側にいてくれる。


「眞有。悪かったな。心配かけた」


 そう言うと彼女は両手をぶんぶんと振る。


「そんなこと」


 彼女は優しい。

 俺のことを考えてくれる。

 そう思いながら彼女を見ていると、撫山が息を吐いたのがわかった。 


「眞有。池垣さんはあなたが、私と一緒にどこかに行ったと勘違いしてたんですよ」

「撫山!それは言わない約束だろ!」


 今ここでいうことじゃないだろう。

 だいたい言わないって言ってたはずだ。


「そんな約束しましたっけ? あなたばかり、いいところを持っていくのはやはり許せませんから。眞有、今朝、会社を休んで連絡が取れないあなたのことを心配して、池垣さんは私に電話をかけてきたんですよ。本当、どうしようもない人だ」

 奴の言葉に眞有は顔を青ざめさせる。それは怒りと悲しみが混じったような表情だった。


「眞有。悪い。でも心配だったんだ。お前が俺の側からいなくなるかもって」


 謝ったほうが無難だと思い、頭を下げる。


「本当、馬鹿な人です。眞有がどれだけあなたを好きか、知らないなんて」


 しかし眞有が答えるより先に、奴がそう言い、深いため息をつく。

 悪かったよ。でも俺は自信がないんだ。

 眞有が奴よりも俺を選ぶことに。


「反省してる。でも撫山、何でお前は眞有が俺の実家に向かったってわかったんだ?」


 俺の疑問に奴はにこっと笑う。


「そんなの眞有の性格を考えればわかることです。まったく。やっぱり私はあなたが嫌いです。だから、眞有のことはまだ、あきらめられませんから」

「?!」

「撫山?!」


 あきらめないって、眞有は既に俺の彼女なんだけど。


「あなたが眞有のことを本当に想っていると思えるまでは、あきらめないですから」


 往生際が悪い男だ。


「……そんなの。勝手にすればいいだろう。俺は絶対に眞有を渡さないから」


 眞有が奴を選んだとしても、手放すつもりはない。


「はいはい」


 むっとして言い返したのだが、奴は余裕しゃくしゃくで笑う。

 それが余計俺を苛立たせ、俺は子供のように眞有を渡さないと繰り返す。しかし奴はそうですかと淡々と答える。


「あれ、昼ドラ中?」


 そんなやり取りをしてると鈴木の陽気な声が聞こえた。

 昼ドラとはなんだ!


「そんなんじゃない」

「池垣、お前は昔からそうだよな。他人のものを欲しがる」


 鈴木はそんな俺にへらへらと笑いながらとんでもないことを言いやがった。


「ど、どういう意味だ。眞有は俺の彼女だ」

「あ、そうだったんだ。悪かったな」


 しかし、奴は信じてないのか、意味深に笑った後、親子丼やお味噌汁、お新子が載ったお盆をテーブルに置いていく。

 隣の眞有はじっと詰問するように俺を窺っていた。


「何?」

「何でもない」


 俺の問いに眞有はぷいっと顔を背ける。

 何に怒ってるんだ。疑ったこと? それとも高校生のころのことか?

 目の前の撫山は怒った眞有に穏やかな笑顔を向ける。それは陽だまりのタンポポのように優しげで俺の胸がちりちりと焦がれる。


「眞有。食べ始めようぜ」


 撫山に眞有を取られたくない。

 その一心で俺は彼女に話しかける。

 眞有は俺を見た後、溜息をつくと箸を取った。


「いただきます~」


 そしてそう言うと彼女が食べ始め、俺と奴もそれに続いた。


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