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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第8章 交錯する思いの中で
30/46

8-2

「武?」


 撫山と別れ、自宅に返ると電話がかかってきた。 

 それは玲美だった。


「なに?」

「今自宅?」

「ああ」


 短く答えながら、シャツのボタンをはずす。


「もう寝るの?」

「ああ、シャワー浴びたらもう寝る。明日も忙しいんだ」

「そう。わかった。じゃ、おやすみ」


 玲美は電話を切った。


 ほっとして、ソファに座りこむ。

 シャワーを浴びたら、報告書を作るつもりだった。

 玲実の父親にホテル建設に伴う損害報告書を見せ、あきらめてもらう。

 それが、奴の考えた方法だった。


 ビジネスをしてる限り、儲けのでない投資はしない。

 そう思わせるために、報告書を作るつもりだった。


 仕事柄、情報収集には慣れている。


ぱしっと頬を叩くと、まずシャワーを浴びるために腰を上げた。



「池垣。昨日はやりすぎたか?」


 朝から何度もあくびをしている俺に柴田が下世話な笑いを浮かべる。

 奴は昨日玲美が俺に抱きついていたのを見たらしく、やっぱり付き合ってるんだ?それとも二股かと朝からうるさかった。

 肯定も否定もせず仕事を続ける。


 そして昼近く、電話が鳴った。

 玲美だった。


「武」


 今日はイタリアン気分だからとイタリアンレストランに連れていかれた俺は、玲美と共にフルコースを味わう。

 めずらしく、無口な彼女が口を開けたのはメインの魚料理を食べ終わるころだった。


「昨日、撫山って男の人と会ってたんだってね」

「……なんで知ってるんだ?」

「なんで、嘘つくの?」


 俺の問いに答えず、彼女は目を潤ませて俺を見上げる。


「撫山はお客さんだ。嘘はついてない」

「嘘つき!」


 玲実はばんっテーブルを叩くと立ち上がる。


「今度嘘ついたら、許さないから!」

「玲美!」


 ぐいっと彼女の腕を掴む。

 しかし玲実は俺の腕を振り払うと、カツンカツンとハイヒールを鳴らして店を出て行った。

 彼女の後ろ姿を見送った後、椅子に座り直し、天井を仰ぐ。

 俺が玲実を追うとでも思ったのか、様子を見ていた他のお客がざわざわと話し始めるのがわかった。

 その騒ぎが煩わしくなり店員にビルを持ってこさせると、支払いを済ませ店を出た。



「池垣」


 店を出て数歩歩いたところで声がかけられる。振り向くと黒のスーツをきた男がいた。


「藤川か、何の用だ?お前の玲美さんは帰ったはずだけど?」

「……玲美さんを傷つけるな」


 藤川はその細い目をますます細くして俺を見つめる。


「そんなに心配ならお前がずっと一緒にいればいいだろう」


 俺には関係ない。

 玲美とは付き合うつもりも、結婚するつもりもなかった。

 俺が好きなのは眞有だ。

 守りたいのも、大切にしたいのも眞有一人だ。


「玲美さんを傷つけたら俺がお前を殺す」

「殺すときたか、そんなに好きならお前が玲美と結婚すればいい…!」 


 俺は最後まで言葉をつづけられなかった。 

 奴が俺の胸倉をつかみ、睨みつけていた。


「俺はお前が嫌いだ。昔から大嫌いだった。玲美さんを大切にしろ。わかったな」


 ふんと鼻を鳴らすと奴は俺の胸倉を離す。そしてくるりと背を向けた。


「藤川!」


 奴の名を呼ぶが、奴は無視して歩き続けた。


 まったく、そんなに好きなら、告白とかすればいいのに。

 俺が玲美を傷つけているのは、わかってる。

 でも優しくなんてできないし、抱くことなんてできない。


 奴が、奴が玲美をどうにかしてくれたらいいんだけど。


 しかし、それは無理みたいだな。


 俺は消えゆく奴の背中から視線をそらすと、会社に戻る道を歩き始めた。

 


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