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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第6章 迫られる選択
24/46

6-4

 大柄な女とキラキラと輝く金色の髪の男が前を歩いていた。


「眞有!」


 女は彼女だとわかり、俺はぐいっと眞有の腕を引く。


「なに?」


 彼女はひやりと冷たい視線を俺に向ける。


「なにって、なんで撫山と一緒にいるんだ?」

「なんでって、私は撫山さんが好きなの。だから離して」


 眞有はそう言うと俺の腕を振り払う。


「撫山さん、行きましょう」

「眞有!」


 去ろうとする彼女を追い、その腕を再度掴む。


「母さん!?」


 しかし振り向いた顔は眞有ではなく、俺を捨てた母さんだった。


 そして情景は一気に二十年前のあの日に変わる。


「武!」


 母さんの腕を掴んだ幼い俺を、父さんが無理やり引き離す。


「父さん!離して!」

「武。母さんは、この家を出て行くんだ。追うんじゃない」


 しかし父さんがぎゅっと俺を抱きしめたまま、静かに言い聞かせる。


「母さん!待って!」


玄関のドアを開けた母を追い、必死に父さんの腕から抜け出る。そして裸足のまま家の外へ。しかし、そこには俺を待つ者はいなかった。


玄関から外に続く道はぎらぎらと輝く太陽の下、白く輝き、まっすぐ前に伸びていた。


「母さん!戻ってきて!お願い!」


 幼い俺はそう叫ぶと走り出した。


 ぱちっと目を覚まし、周りはまだ真っ暗で安堵する。

 夢だとわかっていた、でも苦しさは変わらない。


 洗面所に行き、濡れた頬を水で洗う。リビングに戻り時計を見ると午前3時。起きるには早すぎる時間だ。


 寝るしかないか。

 ベッドに横になると目を閉じた。


 なんて夢だ。

 眞有が裏切るわけがないのに。

 あんな女とは違う。



 ジリリリと目覚まし時計がなり、目を覚ます。

 二度寝のせいか、目覚めは最悪。


 しかし仕事に行かないと、体を起こす。


 よっし、今日がんばれば夜は眞有が泊まりにきてくれる。

 セックスはなしとしても、一緒に寝ればアホな夢は見ないで済むかもしれない。


 うーんと背伸びをすると身支度を始めた。


 電車に乗って、メールを打つ。

 もちろん、相手は眞有だ。


『おはよう。今夜は楽しみにしてる。早く会いたい』


 そう送ると、数分後に返事が来る。


『私も』


 眞有らしい、短い返事だが、それだけで嬉しくなる。


 今日は撫山と打ち合わせってところが気にかかるけど、ま、仕事だし。

 眞有のことだから大丈夫。


 そう言い聞かせると電車を降りた。



 午後五時、明日の仕事の段取りを同僚と話していると電話が鳴った。ディスプレイを見ると眞有で俺は悪いと同僚に謝って電話を取る。


「ごめん。今日は残業。8時にいけそうもない」


 電話口の彼女は申し訳なさそうにそう言う。

 残業か。

 でもまあ、今日は泊まってくれるし。


「そうか。でも、今日はうちに泊まるつもりだろ?家で待ってるから、何時もいいから来いよ」

「……うん」

 

 そうして眞有との電話を終わらせ、席に戻る。

 すると同僚の柴田がニヤニヤと笑っているが見えた。


「今の彼女?」

「うん、ああ」

「今回は格別いい玉見つけたよな。池垣。可愛くて金持ちなんて、逆玉も狙えるじゃん」

「逆玉?可愛い」


 眞有の家は金持ちじゃないし、彼女に可愛いという形容詞が当てはまるのか?


「ははは。隠さなくてもいいって。彼女って、あのコンビニにいた宮元カンパニーの娘さんだろう?」

「宮元カンパニー? 違う、違う。あいつは俺の彼女じゃないから」

「え、そうなんだ。俺はてっきりそうだと思ったけど。そうか、そうじゃないんだ。残念だったな」

「残念って。別にどうでもいいけど」

「あっさりしてるな」

「当たり前だろ?」


 俺の言葉でその話は終わり、明日の仕事の話に戻る。

 そして午後六時、同僚の背中を見送り、俺も帰り支度を始める。

 今日はラッキーなことに部長が休みで、邪魔されることはない。


 眞有、仕事どれくらいで終わるかな。

 見山の木村さんの店で飲んで待つのもいいかな。


 そんなことを思いながら、会社を出る。

 すると、見たことのある顔を見つけた。


「藤川」


 それは黒のスーツをびしっと着た男で、俺を見るとにこっと笑った。


「話があるんだ」

「なんだ? 玲美のことなら。俺は関係ないから」

「お前の実家のことなんだけど」

「実家?」


 俺の驚いた顔を見て藤川はくすっと嫌な笑いをした。


「知らないのか? お前の実家周辺の商店街は取り壊す予定だ。宮元グループのホテルを建てるつもりなんだ」

「取り壊す? ホテル?」

 

 そんな話知らない。

 だから、学の奴が引越って言ってたのか。

 なんで俺にちゃんと話さないんだ。


 父さんも……


「しかしだ。池垣。玲美さんが、お前がある条件を飲めばこの件、白紙にしてもいいと言ってる」

「どんな条件だ?」

「お前が玲美さんと結婚するという条件だ」

「……そんなこと、できるわけないだろう! 俺には彼女がいる」

「そうか、そうだったな」


 藤川は薄気味悪い笑みを浮かべたまま、頷く。


「お前はそうだよな。実家よりも自分の幸せが大事。人のことなんてどうでもいい奴だからな」

「うるさい」

「邪魔して悪かったな」

 

 藤川は噛み付くように答えた俺を見た後、くるりと背を向ける。そして街の中へ消えていった。


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