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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第6章 迫られる選択
23/46

6-3

 翌日、ソファで目を覚ました。

 ラッキーなことにいつもよりは早く目を覚まし、どうにかシャワーを浴び身支度を備えて、マンションを出る。

 会社に着くとぎりぎりで、部長はちょっと酒臭い息を吐きながら出社していた。


「はい。五時ですね」


 部長や他のやつらに捕まらないように、就業時間ぎりぎりで外の用事を作る。

 今夜こそは眞有と過ごすつもりだった。



 午後四時半、顧客の会社に向かう途中、携帯電話が鳴る。ディスプレイを確認すると玲美だった。

 長らく鳴った後、やっと切れ、俺はすぐにサイレントモードに切り替えた。


『武。お疲れ様。今日はどこで会う?』


 携帯を入れているポケットが再度揺れ、待たされている待合室で携帯電話を取り出す。すると眞有で顔の筋肉がゆるむのがわかった。


 五時半か。

 この調子じゃ、六時半までかかりそうだ。


 どうしよう。

 今いるのは中田か。あ、家に近いな。

 そうか、眞有に駅まで来てもらおう。

 家に近くにうまいレストランがあったし。


『お疲れ!今中田町で打ち合わせ中。瀬田駅まで来れる?おいしい店を知ってるんだ』


 そうメールを送ると、お客さんが姿を見せ、俺は携帯電話をしまうと腰上げる。そして打ち合わせを始めた。


「今日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございます」


 夜の付き合いに誘ったほうがいいかと思ったが、眞有に会いたい一身で、そのまま会社を後にした。

 次回、次回誘えばいいんだ。


 自分にそう言い聞かせると、携帯電話を取り出す。


『いいよ。何時?』


 返事がきていて、慌てて電話をかける。


「眞有。ごめん! 今どこ? 俺、やっと打ち合わせが終わったんだ。瀬田駅? ああ、わかった。今からすぐ行くから」


 電話を切り、駅まで猛ダッシュした。途中、電話が鳴り、ディスプレイを確認する。それは玲実で俺は無視を決め、眞有が待ってるはずの駅構内へ駆け込んだ。


「なあ、うちで飲みなおさないか?」


 最後に運ばれてきたデザートを食べ終わり、嬉しそうな眞有を誘った。


「う、うち?」


 彼女はぎょっとして俺を見つめる。


「そう。うち。近いんだ。家飲みの方が楽だし、そうしようぜ」

「……うん」


 眞有は戸惑いながらも俺の誘いにうなずいた。 

 

眞有まゆ


 飲んでるうちにどうも我慢ができなくなり、キスをした。触れるほどのキスから始めた俺だったが、そのうち彼女をもっと感じたくて、深く口づける。甘ったるいカクテルの味が俺の脳内を刺激する。

 

 自分で飲むのはごめんだが、こうやってキスして味わうのはうまいかも。


 そんなことを思いながら、眞有をソファに押し倒す。彼女がきゅっと俺の背中に手を回し、頼られているようで嬉しくなる。

 着ているシャツからちらりと鎖骨が見え、彼女の隠された肌が見える。もっと彼女が見たくて、彼女のシャツのボタンに手をかけた。


「ダイエットするまで待ってて」


 手を掴まれ、我に返った眞有が俺を見つめていた。

「なんだよ。それ!」


 俺は思わず子供みたいに文句を言う。

 気持ちが高まり、今日は絶対に抱きたかった。


「だって、お腹ぶよぶよだし。ちょっと見られるのが嫌」


 彼女は俺の背中から手を離し、赤くなりながらそう答える。


「だったら電気消せばいいだろう」


 そんなの気にしてないのに。 

 見られたくないなら電気を消せばいいのかと思い、ソファから体を起し電気を消そうとする。


「嫌、頑張ってダイエットするから。待ってて」


 しかし、眞有はぎゅっと両手でシャツの胸元を隠すように掴んで、俺を見上げる。

 それがなんだかいつもの勝気な彼女らしくなく、小動物のように思え、ますます抱きたくなる。


「ダイエットなんていいのに。俺は柔らかい方が好きだから」


 彼女をその気にさせたくて、深く口づける。しかし、彼女は強情でその両手は守るように胸元に置かれたままだ。


「なあ、眞有まゆ。だったら、服着たままでいいから」


 裸が気になるなら、そう囁くと彼女を早く味わいたくて、その首筋をぺろりと舐める。

 甘い、とても甘い。きっと中はもっと甘くて気持ちいい。


「着たまま?!」


 彼女は俺の言葉にぎょっとして目を見開く。


「うん。その方がそそられそう。オフィスで愛を確かめ合う男女ってシチュエーション。どう?」

 

 我ながらいい思いつき。

 試したことないけど、眞有とやるなら絶対に気持ちいいはず。


 俺がそんな妄想をしていると、彼女はするりと俺の腕の下から逃げ出した。


眞有まゆ

「だめ、ダイエットしてから」


 彼女はすくっと立ち上がると請うようにそう言う。その瞳からは涙が出そうで、あきらめて溜息をつく。


「頑固だなあ」


 体を起こすと、ソファに座り直す。

 そして眞有を見るとなぜか真っ赤になって顔をそむけた。


 なんだ?

 俺を見てた?

 

 やっぱり眞有もそういう気持ちはあるんだよな。


「俺は眞有まゆの今が見たいのに。きっとベッドの上のお前は全然違うはずだし……」


 抱きたい。彼女を食べたい。


 彼女の気持ちを変えたくてそう言う。


 しかし、ふいに携帯電話の音が鳴り響き、俺を見ていた眞有が鞄の置いてあるところに走る。そして携帯電話を取り出すと音を消した。


「誰から?」


 誰だ?なんでとらない?


「誰でもない。アラームセットしてたの。時間忘れるとまずいから」


 しかし眞有は顔色を変えずそう言うと携帯電話を鞄に戻す。


「ふーん」


 本当か? 

 撫山じゃないよな?


 俺の疑いに彼女は苦笑する。

 

 眞有が嘘つくわけないと思うけど、あの撫山はかなり危険だ。

 そんな嫉妬まみれの俺にかまわず、彼女は乱れたシャツやスカートを整え始める。


「じゃ、武。私、今日は帰るね」

「え、帰る?なんで?」


 セックスはなくとも泊まっていくんじゃないのか?

 鞄を持った彼女を止めようとソファから立ち上がる。


「明日は朝から打合せがあるから早く帰りたいの」


 しかし彼女はさらっとそう答え、俺に笑いかける。


「……それって撫山の?」


 思わず、俺はそう聞いていた。


「うん」

 

 撫山か。

 会って欲しくない、それが仕事だとしても。


 子供っぽい俺はそう思って口を開く。


「……行くな」

「?!」


 彼女が両目を見開き、俺を見つめる。


「行くなって言ったら?」


 無理だよな。

 仕事だから。


 半ばあきらめて再度そう言葉にする。


「無理に決まってるでしょ」


 彼女は驚いたまま、そう答える。

 

 そんなこと、わかってる。

 

「冗談だよ」


 子供じみた俺が馬鹿らしく、苦笑する。


「?」


 眞有はそんな俺が奇妙に思えたのか、戸惑いの表情を見せる。


 大丈夫。彼女は裏切らない。


 そう自分に言い聞かせるといつもの笑みを浮かべた。


「今度来る時は着替えもってこいよな」


 俺の言葉に眞有が安堵したのがわかった。


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