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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第5章 新しい関係
20/46

5-6

 爽やかな風が吹き抜ける。

 俺の足取りは軽い。


 午前中の商談を終わらせ、俺は見山に向かった。

 昼食に誘うつもりだった。


 電話をかけようか迷ったが、驚かせてやろうと眞有の会社に向かう。


 頭の中でいくつかシチュエーションを考えるが、俺達はそういう甘いのは似合わないなと何度も消し去る。


 ビルに到着すると、受付嬢が艶やかに俺を迎えた。

 俺に興味があるみたいだけど、今は遊んでる場合じゃないと適当に相槌を打つ。

 

「武?」


 そうかすかな声が聞こえ、顔を上げた。


 眞有だ。

 相変わらず地味な色のスーツを着た、クールな感じだ。

 でもそれがいいんだよなあ。


「よかった。出てきてくれて。じゃ、野田さんまたね」


受付嬢に手を振ると、眞有に近付く。

 彼女は不機嫌そうな顔を俺に向けた。

 まだ怒ってるみたいだな。

 

 でもきっとそれは嫉妬なんだ。

 そんな風に考えて彼女に笑いかける。


「ご飯一緒に食べよう」


 俺の誘いに眞有が口をへの字に曲げる。


 本当、色気がないよなあ。

 でも可愛い。


「いいけど……」


 彼女が戸惑いながらもそう答え、俺達は近くの喫茶店で昼食をとることにした。



「今日は先に注文しような。えっと、ここは何がうまいの?」


 店に入り俺は店員を捕まえ、微笑む。

 

 それを見て、眞有が呆れたような顔を見せる。

 やばい、やばい。

 誠実さをアピール、アピール。


 店員に向けた笑顔をひっこめて、俺は言われたことを復唱する。


「ランチセットかあ」


 まあ、通常そうだよな。

 お勧めはランチセット。


「じゃ、ランチセットでいいや。眞有まゆ、お前はどうする?」


 早く注文して、彼女に告白したい。


「あ、じゃ、私もランチセットで」


 彼女は一瞬考えたが、そう答え、店員がかしこまりましたと紙に書き込む。


 やっぱりこういう決断が早いところもいいよな。

 さっぱりしてる。

 でも、可愛いんだよな。


「武。今日は何の用?」


 一人の世界に入りかけた俺に眞有が冷たく質問する。


 まだ怒ってるのか。

 これはいきなり告白するっていうのは効果がないな。


「聞きたいことがあって」


 俺はそう始めることにした。


「何?」

 彼女は頬杖をつき、俺を見上げる。

 その表情が色っぽく見え、息を呑む。


 そういや、こいつ処女じゃないって言ってたけど、誰と寝たんだ。

 まさか撫山?

 そんなわけがないと思いながら、俺はまず、これを確認することに決める。


「お前、撫山なでやまさんと寝たの?」

「!?」


 彼女はぎょっとして、頬杖をついていた手を離す。頭がかくんと落ち、俺は少し笑いそうになった。 しかし、彼女は俺に向かって声を荒げる。


「そ、そんなわけないでしょ。仕事とプライベートは一緒しないの。私は」


 まったく、いい歳なのになあ。

 眞有は。

 俺は可愛いなと思いながら、立て続けに質問する。


「そう、それはよかった。じゃ、付き合ってるの?」

「付き合ってるって……まだだけど」


 彼女は歯切り悪く、そう答え、うつむく。


 うーん。

 微妙だ。告白はされてる感じだ。

 これは急いだほうがいい。

 絶対に。


「まだってことは、まだ付き合ってないよな。だったら俺と付き合えよな」


 よし、言ったぞ。

 

「武……。昨日から言ってるけど、目的はなに?」


 しかし、彼女は疑わしく俺を見つめ返す。


「目的って。好きだからに決まってるだろう」


 そう、目的もなにも。 

 好きだから。

 好きだから、誰にも奪われたくない。

 

「本気なの?」


 彼女はじっと俺の瞳を見る。


「本気だよ。神に誓って本気」

  

 彼女の瞳に俺の顔が映る。

 彼女はどう思っているんだろう。


 彼女の表情からその気持ちを汲み取ろうとする。

 疑っているのがわかる。

 不安、喜び、いろんな感情が見えた。


「眞有。俺はお前が好きだ。奴にお前を渡すつもりはないから」


 彼女の信用を勝ち取りたくて、俺は再び告白する。


 眞有はじっと俺を見つめたままだ。


「眞有。俺はお前以外の女と寝るつもりもないし、付き合うつもりもない。だから今日から俺の純粋な彼女になってくれ」


 これでも信じてもらえないのかと俺は、彼女の瞳に訴える。


 瞳が揺れ、考えているのがわかった。


 考えるってことはやっぱり駄目なのか?

  

「……浮気とかしたら許さないから」


 しかし彼女は一度目を閉じ、開けた後、ぽつりとつぶやく。


「わかってるよ。俺も純粋な彼女が男と会うのは嫌だからよろしくな」


 そのつぶやきがOKだと理解して、嬉しくなってそう口にする。


 浮気なんてするつもりはない。

 今度こそ本気だ。

 だから眞有も撫山とは個人的に会ってほしくない。


「わかってるわ」


 彼女は柔らかく笑う。


付き合う記念に何かしたくなり、テーブルの上を見つめる。そしてそこにコップが二つ置いてあることに気づく。

  

 そうだ、こういうときは乾杯だ。


「じゃ、乾杯しようぜ」

「乾杯?」


 彼女が目を瞬かせる。


「そう、乾杯。俺逹の新しい関係に」


 俺達はそれまで友人だった。

 でも今日からは違う。

 区切りをつけたくて、コップを握りしめる。


 彼女は戸惑いながらも、同じように別のコップを掴む。

 そうして俺達はコップをカチンと重ねた。


 眞有の笑顔で俺の心がいっぱいになる。

 彼女と付き合えるのが心の底から嬉しかった。


 まさか数日後、彼女に別れを切り出すはめになるなど、思ってもいなかった。


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