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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第4章 可笑しな姉弟と美しい男
12/46

4-2

2012年の作品の修正版のため、スマホ時代ではありません。

 まじかよ。


 しかし永香えいかの表情は真剣だった。


 まあ、言いたい事はわかるけど、俺が彼氏だったら引くな。

 

 永香のお願いとは、うまいセックスのやり方を教えてほしいということだった。

 

 なんか、下手とは言え、こんな可愛い女性とできるのは嬉しいけど。

 そんなのありかよ。


 ああ、でもボランティアと思えば……

 別に後ろめたいことはないよな?


「池垣さん、だめかしら? 今度こそ本気なの。がっかりされたくないの、私」

 

 いや、がっかりとか。

 そういうのないと思うけど。

 まあ、確かにあの時は外見とはまったく異なり、全然素人の永香には驚いたけど。

 普通はそれでいいだろう。


 俺の言ったこと気にしてる?


「教えてくれたら、お礼はするわ」


 答えない俺に彼女はそう言葉を続ける。

 

 お礼か。

 そういえば、彼女の弟は眞有の後輩だよな。

 弟を使って眞有と撫山の関係を聞き出すって手段があるか。


「いいぜ。じゃ、お礼というのもおかしいが、弟の携帯番号を教えてくれ」

「友亜貴の?」

 

 とたん永香が驚いた顔をした。

 ま、突然だもな。


「池垣さんが、弟に興味があるなんて知らなかったわ。でもごめんなさい。弟は渡せないわ」

「……」


 ……今、何て言った?

 弟に興味がある?

 ありえないだろう。その思考……


 俺は気が遠くなりそうになるのをどうにか、こらえる。


「永香……。何を勘違いしたか知らないけど、俺はお前の弟には興味がない。単にちょっと聞きたいことがあるんだ」

「あ、そうなの。それならいいわ」

 

 ほほほと永香は笑う。


 ほほほじゃねーよ、まったく。

 忘れていたけど、彼女はこういう摩訶不思議な生き物だったよな。


「えっと、読みあげるから記録してね」


 俺を待とうともせず、永香は携帯電話を取り出すとそう口にする。


「ちょっと待って」


 俺は慌てて携帯電話のメニューを触る。


「080-xxxx-xxxxx」

「OK。弟の名前なんて言うんだっけ?」

「友亜貴よ。友達の友に、亜熱帯の亜、そして貴族の貴よ」

「OK。ありがとうな」


 よっし、これでスパイを一人ゲット。

 撫山っていうハーフのことを明日にでも聞いてみよ。


「それじゃあ、教えてくれるかしら」


 携帯電話を鞄に仕舞い込んだ永香がカウンターに肘をつき、重ねた両手に顔を乗せ、俺を見上げる。長い睫が影を作り、物憂げに見える。唇はピンク色で艶やかに輝く。


 色っぽい、極上な女だ。

 なのに、なんでなんだろうな……


 ま、いいか。

 今日は俺も楽しもう。嫌なことを忘れて。


 そう思って、ホテルに場所を移そうと誘いをかけようとした時、店の入り口に眞有まゆの姿が見えた。

 

 幻?

 いや違う。

 本物だ。

 

「あれ? 眞有まゆ?」

「安田さん?」


 俺の声に反応し、永香も同様に入り口を振り返る。


「ちょっと話があるんですけど」


 眞有は怒りのオーラを放ち、俺たちに向かってそう言った。

 



「じゃ、眞有はいつもの甘いのな。スプモーニとかでいい?」

「うん」


 俺の問いに眞有はむっつりした顔でうなずく。


 これは妬かれているのか?

 ちょっと嬉しく思いながら彼女を見る。


 眞有は俺と永香の間に座っていた。俺の隣に座らせようとしたのだが、永香がさっと腰を上げ、彼女は俺達に挟まれる形で座ることになった。

 思えば永香って、眞有のこと気にいってる感じだよな。

 まあ、普通の女じゃ永香と話すと頭にきそうだし。

 眞有なら、普通に話せそうだからな。


 そんなこと思ってると、眞有がかなり鋭い視線を永香に向けた。


「加川さん。今日芋野さんとデートしてたんじゃなかったんですか?」

 

 芋野?

 誰だ、それは?


 俺が疑問を抱えていると、永香がその可愛いらしい瞳を大きく開き、頬を真っ赤に染める。


「知ってるのね。そうよね。同じ会社だものね」

「はあ」


 ああ、そっか。

 眞有の会社の奴か、芋野って男は。


 なんだ、眞有はその男のことを思って怒ってるのか。

 俺のために妬いてるとかそういうのじゃなかったんだ。


 多少がっかりしたが、それを見せないように二人の様子をうかがう。


 眞有は相当怒っていて、目が爛爛と輝いていた。

 しかし、対する永香はまったく気にしていないのか、顔を恥ずかしそうに真っ赤にさせてる。


 なんだかおかしい状況だ。 

 俺はコントを見ているような気分になり、笑いがこみあげてきた。


「加川さん、芋野さんは優しい誠実な人なんです。彼を弄ぶのはやめてください!」


 しかし眞有はそんな永香に怯むことなく、再び厳しい視線を投げかける。


「弄ぶなんて、そんな。ひどい」


 永香はその視線を受け、心底傷ついた顔をする。


 俺達の周りの人々の興味がこちらに向くのがわかった。

 いやあ。

 こういうときってやっぱり可愛いって得だな。

 眞有が完全に悪者だから。


 しかし、彼女は周りの視線に臆することなく言葉を続ける。


「加川さん、そんな演技をしても騙されませんよ。撫山なでやまさんだって、あなたによって傷つけられたんです。その上芋野さんまで傷つけたら許しません!」


 まあ、もっともな言葉だ。

 正論だよな。

 しかし、眞有、ビジュアル的に不利だぞ。


「撫山さんって、あれは本当に好みじゃなかったもの。外人顔はだめなのよ。本当。でも芋野さんは私がずっと探し求めていた人なの。眼鏡を取ったのは残念だったけど、あの優しげなまなざし、奥手のところなんて、本当……」


 永香は怒りをぶつける眞有に構わず、うっとりする表情を見せる。

 眞有はどう対応していいかわからず、瞬きを繰り返し呆然としていた。


 よっし、ここで俺の出番だな。


眞有まゆ。永香は今回は本気らしいぞ。苦手な俺を呼び出してセックスの指南を求めるくらいだから」


 そうフォローしたつもりが余計なことだったらしい。

 眞有はますます、驚いた顔をした。

 

 そこにちょうどいいのか、悪いのか木村さんがスプモーニをかたんと眞有の前に置く。彼女はじっとピンク色の液体を見て動きを止めた。


「眞有? 大丈夫か?」


 俺は心配になって、彼女にそう呼びかける。

 

 そこに宇宙人のような思考の女、永香はさらに彼女を混乱させるような言葉を吐いた。


「安田さん。そうだ。いいこと思いついたわ。池垣さんに教わるのはなんだし、安田さんが教えてくれない?芋野さんとはいい関係を築きたいのよ」


 っていうか、その展開はないだろう。

 永香はやっぱり摩訶不思議な生き物だな。


 眞有はどう答えていいかわからず、言葉を失っている。


 なんか、妙に可愛いな。

 

 彼女のこういう顔、なかなか見ないよな。

 普段ハキハキしてる眞有の、こういう顔もなかなか可愛い。


 困っている彼女には悪いが、そう思ってしまいニヤニヤしてしまう。

 

 そうして俺達三人はそんな状況のまま、飲み続けた。



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