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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第4章 可笑しな姉弟と美しい男
11/46

4-1

 頭が痛い……


 頭痛に苦しみながらもどうにか頭を活動させ、昨日訪問した会社に再度訪問するためにプレゼン資料を作る。

 昨日はとりあえず興味を持ってもらったから、今度はガチっと喰い付いてもらおう。

 会社の実績を華々しく説明、うちの商品を買うことでどれだけ利益が得られるか、などを情報として叩き込んでいく。


 見た目も大事だからなあ。


 選んだテンプレートの色合いなどを調整していると、携帯電話が鳴った。サイレントにしているから、それは振動のみで、周りに気にしながらディスプレイを見る。


 誰だ?

 09XX……


 実家!?


 一応一声詫びて、慌てて部屋を出て、休憩所に向かう。


「もしもし?」


 そして胸が押し潰れそうな思いを感じながら、電話に出た。


「兄ちゃん。久しぶり」


 その声に俺は不覚にも涙が出そうになる。


まなぶ……」


 それは十年前に会ったきりの弟、学だった。



「そうか、結婚したのか。おめでとう」 


 屋上で空を仰ぎあがら、そう口にする。

 

 休憩室では周りが気になり、俺は屋上に上がった。この方がゆっくり話せると思ったからだ。

 十年間、まったく連絡をとっていなかった弟が電話してきたのだ。何かあったとしか考えられなかった。


「ありがとう。子供もできたたんだ。来年生まれる」


 電話口から弟の照れたような声が聞こえる。


 あのシャイな弟が結婚、しかも子供か。


「え? もしかしてデキ婚か?」

「ち、違うよ! 結婚は二年前にしてたから」


 二年前、そうか。

 学がデキ婚なんてするわけないか。


 優しくて真面目な弟の顔を思い出し、自然と口元が緩むのがわかる。


 弟は親思いのいい奴だった。

 俺と違って……


「……兄ちゃん、一度家に戻ってこないか? 父さんとも話した方がいいと思うし」

 

 ふいに放たれたその言葉に、俺の顔が引きつる。


「嫌だ。父さんも俺なんかと話したくないだろう」


 父さんは俺が嫌いだった。

 俺のことを昔から否定していた。

 だから中学生になった頃から、事あるごとに父さんと衝突していた。

 そして高校生になり、話すこともなくなった。


「……そんなことない。兄ちゃん、来月、来月までには一度帰ってこいよな。俺、待ってるから」

「おい! そんなこと」


 俺が帰るわけないだろうと返そうとすると、電話口から「学」と声が聞こえた。

 それが父さんの声だとわかり、息苦しくなる。


「父さん! じゃ、兄ちゃん、絶対帰ってこいよな。また!」


 学は慌ただしくそう言うと電話を切った。


 ツー、ツーという電話が切れた音が繰り返される。

 電話を持ったまま、目を閉じるとじわりと嫌な感情が染み出してきた。


 帰るか。

 帰れるわけないだろう。


 小さく息を吐き、携帯電話をポケットに入る。

 そして、仕事に戻るため屋上出口へ向かった。


 

 仕事にならん。

 七時くらいまで粘ったが集中することができず、結局帰ることに決めた。


 会社を出て、携帯を握りしめる。

 

 眞有まゆ……

 こういう時あいつと会えたら、ほっとしそうだ。


 でも昨日の様子は明らかにおかしかったし。


 しかし、会いたい気持ちは募る。

 そうだ、木村さんの新しい店で飲むか。

 眞有の会社の近くだし、もしかしたら会えるかもしれない。

 俺はそう決めると、気持ちを切り替え見山に向かった。



「いら……しゃい!池垣さん!」


 黒基調の店のドアをくぐると木村さんの驚いた声が聞こえた。

 俺は反射的に店内を見渡し、霧元きりもとさんがいないことに安堵する。

 

 あの人いたら落ち着いて飲めないからな。


「よく来てくれましたね」

「うん。木村さん、いい店ですね。雰囲気がちょっとゴージャスな感じで」

「そう? ありがとう」


 木村さんはちょっと照れたように笑う。


 そういえば木村さんってうちの弟に似てたんだ。

 ずっと誰かに似てると思ったら、弟か。


 電話があるまで、ずっと忘れていた。

 弟の顔なんて……

  

 でも弟はまともな道を歩んでよかったな。

 霧元さんみたいな弟とかできたら怖いし、ゲイの兄っていうものなあ。

 

 そんな馬鹿なことを考え、苦笑する。


「池垣さんはいつもの通りウォッカ?」

「あ、はい!」


 すると木村さんに話しかけられ、俺は後ろめたさを感じながら返事をする

 

 木村さんはいい人だけど、やっぱりゲイはなあ。

 霧元さんも怖いし。


「?」


 ふいにポケットの中の携帯電話がうなり声を上げる。


 げ、サイレントのまま。


 振動に気持ち悪さを感じ、携帯電話を取り出す。ディスプレイをみるが、見覚えのない番号だった。


「もしもし?」


 とりあえず会社の関係者かもと思い、電話に出てみる。


「池垣さん?」


 誰だ? 聞き覚えがあるような女の声だけど。


「私は加川かがわ永香えいか。覚えてるかしら? ちょっとお願いごとがあるの? 今よろしい?」

「……ああ、いいけど」

 

 永香?

 何のお願いだ?

 確か彼女は俺のこと大嫌いって言ってたな。

 それが何だ?

 

 俺は面喰いながら返事をする。


「ちょっと電話では言いづらいことなの。どこかで会えるかしら?あなたが今いるところに行くわ」


 おいおい、なにか誘いみたいだな。

 でも一体なんでだ?

 まあ、いい。

 何かの気晴らしになるかもしれない。 


「今、見山のバーにいる。来れるか?」

「見山? ちょうどその辺にいるわ。詳しい場所を教えて、十分以内で行けると思うから」


 そうして、俺は昔の女、永香と飲むことになった。


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