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近況報告

作者: 鏡原レイ

 私は心の中で様々な悪態や欲望をあらわにした言葉を呟くことが頻繁にあった。

小学生の頃は喧嘩をすると、「あいつ、いつかグチャグチャにしてやる!」と思っていた。中学生になると「あの娘とセックスしたい」と思うことが増えてきた。高校生になると、「あの娘とこの娘と、あっちの娘とそっちの娘と・・・・・・」となってきた。金持ちのことが好きで生意気な女を見ると「犯して、森に捨てたろか」と。力のある人にこびへつらっている者を「死ね!」と。大学生になると無茶苦茶な運転で車を乗り回し、気持ちの良くなるものを求め続け、いつでも「飲みたい、食べたい、吸いたい」と。仕事に就くと、気に入らない上司・先輩・同僚・部下・取引先の担当者などを「消えちまえ!」と罵っていた。役員にも「早く隠居しろ」と思うことたびたび。満員電車に乗っていて「この電車、爆破したい」と思ったこともよくある。

だから自分が心の中で考えていることが分かる技術が実用化され、しかも、それが人に知られることになったら大変だと思っていた。まさか、それが実現するなんてね。

 夢を記録する技術もできた。夢で何を考え、感じたか、自分は覚えていなくても、記録できるシステムができたのだ。記録された私の夢は、私の周りの人々を傷つけ、彼らとの関係を破壊した。そして今、私は隔離されている。まるでひと昔前のSFアニメか映画だよ。

 私は新しい技術に飛びついてきた。そして、新しい技術を使った電話、テレビ、車、コンタクトレンズ、メガネ、衣服、時計、パソコン、冷蔵庫、机、椅子、トイレ、窓、監視カメラなどを通じて収集されたデータが私を今の境遇に追いやった。ロボット昆虫も私、いや私たちの近くにいてデータを収集している。そして、ある日突然、見も知らぬ男たちが私を迎えに来た。

 人は多かれ少なかれ、みな私のように心の中で悪態をついたりしているものだ。隔離されるのは、一定のレベルを超えていると判断される者だが、その基準は公表されない。あ、そうそう、私の体のどこかにチップが埋められている。もしかしたら脳かもしれない。今まで以上に私の詳細なデータがどこかに蓄積されているようだ。

 それでは、また気が向いたら手紙を書くよ。私のデータとして蓄積されるだけの手紙を。


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