第一章
「というわけでね」
【ファンタジールーン】通称FRの世界に最強のステータスをひっさげ転生したと解りテンションの上がった俺は何も考えずスキルを試した。
その結果、森の一部は焼き焦げ、地面には無数のクレーターが生じ、至る所から氷の柱が生えていた。
「ちょ、ちょっとやり過ぎたかな…生態系とか大丈夫だよなこれ」
異世界に来て魔法が使えるとわかったナナは即座にFRでいつも使ってた魔法スキルを試した。
試したスキルは火魔法と氷魔法のスキル。
それに加えパッシブの筋力スキル。
筋力スキルはそのままスキルレベルが上がれば上がれる程膂力が強くなるスキルだが、前述した属性魔法スキルはレベルが上がると威力が上がる以外にスキルに応じた魔法を覚える。
火魔法スキルの場合はLv1でファイアボール。
氷魔法スキルの場合はLv1でアイスランス。
そういった具合に俗に言う筋力スキルの様なパッシブスキルと属性魔法の様なアクティブスキルがある。
普通ファイアボールは拳大の火球をそれなりの威力と速度で放つものでアイスランスは15cm程度の氷の矢尻を同じくそれなりの強度と速度で飛ばすものだ。
だが魔法スキルというのはスキルレベルにその威力が比例するものでナナの火と氷のスキルレベルは
火魔法:Lv999
氷魔法:Lv999
と、Lvの限界値に達してるため、一番威力の低いLv1で覚える魔法を使っても地形を変えてしまうほどの魔法になってしまう。
「魔法を使う時は相当魔力を抑えて使わないとだめだなこりゃ…ファイアボールとかの初期スキルでこれなんだし戦闘系スキルは今は試さなくてもいいや、パッシブの筋力スキルもLv999だし」
森を焼き地面から生えた氷の柱はファイアボールとアイスランスのせいだが、クレーターを作った要因はナナが力を込めて地面を殴ったからである。
「殴った瞬間急にベコっと凹んだからものすごくカッコ悪いコケ方をしてしまった、人前でこれやったら恥ずかしいってだけの理由であちこち殴って凹ませてバランス取る練習したせいかこの近辺はクレーターだらけだよ全く」
ナナはどうせこの森はモンスターしかいないし構わないかと思考を切り替えた。
ここが本当にFRと同じ世界であるならばナナはこの場所をモンスターしかいないと知っている。
ここはソーンの森。ゲーム開始地点であるソーンの町から5km付近にあるゴブリンやコボルトといった下級モンスターが生息する所謂最初のダンジョン的な立ち位置の場所だ。
「最初のダンジョンでこんなアホみたいな力晒してたらそりゃ下級モンスターは寄ってこないよな」
先程から付近にゴブリン等がいることは感知スキルLv999で解るのだが明らかにこちらを警戒を通り越して恐怖してるのでこっちも無関心でいることにしてる。
「怯えた生き物を狙って殺すのは流石にちょっとね」
ゲームプレイ時は執拗に追い回し経験値と素材の為コイツら絶滅するんじゃないか?という勢いで殺してたが、今じゃ現実世界となったこの世界でそれをするのは良心がちょっと痛む。
「FR通りなら言葉を話すモンスターもいるしね、異世界に来て一番最初の会話が、命だけは助けてください!だめだ死ね、なんて絶対いやでしょ。ま、そんな事はさておき第一村人と会話するためにそろそろ森を出ようか」
ナナは今は別に森に用がないと判断し人間の住むソーンの町に行くことにした。
「ゴブリンとかいたんだしやっぱりFR通りいるんだよな、サキュバスとかエルフとかそういう男の子が大好きな種族!待ってろよー、ソーンの町!」
目標はファンタジー要素全開の他種族の女の子と仲良くする事。
その思いだけを胸になんとなしにナナは歩き出した。