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第三章 捜査2課

一億六千年前の犯罪者と聞いて時をかける少女のような、SFファンタジーロマンスを期待してお話を読んでくれてる読者の方、

ごめんなさい。


決してそういった展開にはなりません。



時空刑事スピルバンのような変身活劇ヒーローに壇刑事がそろそろ成長していくと期待して読んでくれている読者の方々、

ごめんなさい。


決してそういう展開にはなりません。



一億六千年前にタイムスリップして、宇宙からやってきた宇宙人のゴアが

地球征服のデモンストレーションを行う、マグマ大使のような展開を期待して、このお話を読んでくれている読者の方々、

ごめんなさい。


そっちの方向に話は向かいません。



後ろの百太郎や恐怖新聞のような展開を、なぜか期待して読んでくれている

読者の方々、


このまま我慢して読み進めている内に、ちょっとそういったシーンに

出くわせる(かも)しれません。



カモメのジョナサンのような展開を求めているような貴方、


主人公が人間の刑事なんだから、

どう転んだってそんな展開になるわきゃねぇだろうが。



次郎長三国志のような展開をストーリーに求めている貴方、


漫画のワンピースを読んで下さい。

三章 捜査2課


 その翌日、優美子は壇に今日から捜査に出ようと進言していた。時間が経つと手がかり、証拠は消えていってしまうからだ。


 そう思う反面、港町署の朝はいつもと同じようにほのぼのと始まり、ほんわかと和やかに過ぎていった。


 優美子は署内をゆっくりと見回しながら捜査に出かける準備を始めなければと思った。

 ただどうもデスクに座ってお茶とかをすすっていると、捜査は明日からでもいいかと言う気持ちになってしまう。優美子は自分は元来のんびりやさんなのだと感じていた。


 最も強盗殺人事件、広域暴力団の抗争、宗教詐欺などが多発している所轄管内にあっておだやかに一日が過ぎているとおせいじにも言えない港町警察署なのだが、

そんな中にあって一日の勤務が、ほんわかと過ぎているように感じてしまう優美子の視点のほうがおっとりしていると言えるだろう。


 優美子は楽しそうに、捜査2課の室内を見回して備品の整備と調整に余念がなかった。


 優美子にとっては、そう言った刑事課の雑用を自分が毎日せっせとこなしていることが、またほんわかとして楽しい日常を意味しているようだ。


 こう行った習性はそれ自体公務員の鏡と言えるだろう。

 桜木巡査は、事務機器の整備確認を始めていた。

 コピーもプリンターも大切に使えば何時までも快適に動作してくれると彼女は信じていた。


 そんなお掃除をしているうちに楽しくなってきた。優美子はプリンターの点検をしながらついつい歌を口ずさみ始めていた。



「どんな色が好き、全部!全部の色が好き一番最初に無くなるよー全部のトナーぁ?あれ、変ですねーやっぱり赤が減りが早いですねー」



 そこに壇刑事が出勤してきた。


 プリンター相手に浮かれている優美子の仕草を目ざとく見つけた壇は、すかさず突っ込んで来た。

 彼女の小さな一挙一動に何かを見つけると突っ込まずにはいられないのが壇刑事の性なのかも知れない。



「何やってんだ、プリンターでデザインの出力かぁー?何を朝から造っているのかなぁー?

 虫歯予防のポスターの市の公募に小学生から「これだ!」という応募が無かったので、しかたないので桜木が代わりにゴースト小学生やってたりするのか?

 すると桜木のお絵かきレベルは小学生って訳か……?よ、ゴースト小学生!」


「何を言っているんですか、止めて下さい檀さん、私の話を一人で勝手にストーリーを進めて行かないで下さい!まず第一に私、絵は得意な方ですよ、むしろ……」


「小学生のお絵かきさん!でも、体は大人。お前はコナンかぁ!!」


「口を閉じて下さい。今私がやっているのは、捜査2課のカラープリンターのトナーの交換です。なんかこの歌に、合ってるかなーと思って……口ずさんでいただけです」


「ふーん……でトナーはどうなんだ?」

「それが、いっつも赤の色から無くなっていくんです。世の中の印刷物って赤寄りなんですかね?」


「君の教科書もまっ赤っかってか。もう、覚えてる奴も少ないか」


「教科書に修正入れる話ですか?それ、第二次世界大戦直後の進駐軍の頃の義務教育での話ですか?」


「それのパロディーだ。実際には教科書は筆で黒く修正していったらしいが。それから赤で教科書を塗るというのは共産主義に染まるという風刺の意味になっていた。

 そういう風刺が笑える時代だったんだ1960年代の終わりは。それより、例の考古学教授今日も発掘現場にお出かけみたいだ。学生達よりかなり早くにな。

 行ってみれば、何か掴めるかも知れん」


「あ……、はい、すぐトナー交換終わらせます」


「トナーの交換は慌てず、急いで、正確にな。通常の3倍のスピードでやれ!桜木張り込みに出るぞ」


「はーい!」


「て、言い方なんだけどこれって、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の空間騎兵隊斉藤始の台詞と初代ガンダムのシャア登場のシーンの

ホワイトベースのオペレーターの台詞をパロったんだが」


「わかりますって」


「ちなみに、きみの教科書もまっ赤っかは夏のSF大会でのガイナックス制作『ダイコンフィルム』からねー」


「それ、全然知りません。ヤマトとかも実は、元のアニメ作品は見たことないんですけど、いつも檀さんがしゃべっている台詞なんで口癖だと思って覚えていました。

 全然、意味不明ですよね、私にとっては」

 


壇は、我が意を得たりとばかりに続ける。



「だしょうーでも、ここ最近のラノべのほとんどの作品はこういった過去の名作アニメ、漫画、ゲームの台詞を使うことがディフォルト、お約束みたいになっている。

 パロディを使っていない作品を探し出すことの方が至難の業だ。名作パロディを使ってないとラノべじゃないと言っても過言じゃないくらいなんで、

最近のラノベの作者はストーリーの劇中にパロディ的なシーンを入れ込む事に四苦八苦している。ニャルなんとかとかなー」


「そのくらいで、止めといて下さい。檀さんの言うことで、いろんな人達が迷惑します!」


「大丈夫、口から出た言葉はウンコと同じだ」


「なんですか、それ?」


「毎日出しているウンコの色とか形をしっかり記憶している人なんていないだろう。チラッと見てもすぐ、忘れてしまう」


「それはそうです」


「しゃべる言葉もそれとまったく同じだいう諺だ。……とオレの友が言っていた。


 人は毎日しゃべる沢山の言葉にそんなにいちいち責任持ってしゃべったりしていないと言うことの意だ」


「でも、しゃべることばには責任持った方が良いと思いますよ。大人なんだから」


「大人だから、どんなケースになっても自分を守る術は身につけていないといかんのだよ、古代。この諺にはそう言った意味が込められている。あー深い、深い」


「深く無いです。下世話な……」


「痴れ者が!」


「すいません……!」


「ちなみに付け加えておくと、教訓的な言葉を言ったらその語尾に「古代」と付ける。覚えておけ。そこに古代という人が居なくてもだ。

 同様に、「でも!」と会話の相手の言葉に異議を差し挟む時には、語尾に「ブライトさん!」と付ける。

これがお約束だ。「ねえ」と言ったら『ムーミン』を付けるのも同様だ。「さよなら」と言ったら「お手紙ちょうだい」と続けるのが基本だ。『銀河鉄道』ではない」


「お手紙ちょうだいって『ヤッターマン』ですか?」


「『ラムネ&40』だ。ちょっと分かりにくいな。

 メーテルと叫んだ後にパンツメーテルー!と言う言い方は連載当時は流行っていたがその後、死滅したようだ。

 それは何故かと言うと、なかなか日常生活の中で、銀河鉄道に鉄郎が乗り遅れるのに類似したシチュエーションが、発生しづらいからだな」


「昔もパンツメーテルとか言ってましたか?」


「言ってた、言ってたあっと驚くの後に、ためごろうーを付けるくらいに頻度高く言われていた。「もう疲れたよ」と言う時には、

その前に「パトラッシュ」と言う接尾語を付けるのもお約束だ。

 例えばマラソンの後とか山登りの最中とか、

肉体的疲労のピークには最適な慣用句だった

他にも、

大学の卒業を控えた4年生が就職先の研修が始まっている3月に大学の卒業発表が公示された時、

卒業必要単位を取得できずに留年が決まったとする。

 そんな時に、「ハイジはとうとうおかしくなってしまいました」と使うのだ」


「なるほど、じゃあ「おはよう」と言われたら「スパンク」と続けたりするんですね?」


「全然、ぜーんぜん違う!」


「そんな言い方しなくても……」


「だって違うんだもん。おはようでスパンクだとそのまんまだろう。

 そうじゃなくてな、日常的に使う言葉の前後に味わい深いアニメの名せりふと分かる一言が付くことで、洒落が利いてると思わせる使い方にしないといけないのだ。

 アニメのタイトルそのままだとひねりもなにもないからな」


「ふーん、言ってて下さい!私は絶対に付けませんからね」


「いいのかそんなことを言い切って。将来、桜木がお宅と結婚する運命の時が訪れた時に、今とはまた違う台詞を言う事だろう。

 その時が来ても私イエスは桜木を咎めたりしないだろう。ただ優しく桜木に微笑みかけるだけだろう」


「ご安心を。結婚式に檀さんはお呼びしませんから。私男性をお宅かどうかで男性を区別して見たりしませんから。

 もう、私をおかずに話を進めないで下さいって言いましたよね、檀さん!」


「新婚家庭で、桜木が休みの時くらい家の手伝いとかして下さいと旦那に言うと、その時プラモデル作成に忙しかった旦那は、「今忙しいねん!」とか言ったら、

そこで旦那にラブラブなお前はすかさず男に好かれよういうやましい下心から「ヤッタランがそう言うなら仕方がない」とか返すんじゃないのぉー、


さ、く、ら、ぎ、ゆ、み、こーよぉー」

 


最後の方の壇の絡みは一切無視して、優美子は張り込みの準備を整えて行った。



「用意が出来ました。出ましょう檀さん」



 壇はそのきっばりとした桜木巡査の一言に逆らえない。

 うだうだした今までの埒もない繰り言を止めて彼女に従って、駐車場に向かった。



「うむ…………」




 覆面パトカーの運転は、桜木が担当していた。

 

 壇にやらせると、交通法規を一々無視したり、ナビが付いているにも関わらず何処だか訳の分からないお宅の沢山いるイベント会場とかに連れていかれたり、

時間の無駄が甚だしいからだ。 


 優美子は少しでもまともな会話に話を持って行こうと壇に話しかけた。



「薬のルートを押さえても、捕まえられるのは末端のヤクザの売人です。いつもトカゲの尻尾切りですよ。真の悪人である組の幹部の人達は痛くも痒くも無いんですから」


「尻尾切りか…………」



 壇の何か過去の事件でも思い返しているような物言いに、優美子は興味を感じて聞き返した。 



「何ですか、檀さん何か引っかかる事でもありましたか、私の話……?」


「トカゲは尻尾を切った時、果たして痛くも痒くも無いのだろうか?」



 優美子は何かを期待して聞き返した自分がバカだったと反省した。



「さぁ、痒い程度はあるかも……とかげさんに聞いてみないと」



 壇は話を続けた。



「一旦は切れてしまった尻尾はそれが元の通常のトカゲが付けている長さに成長を遂げていくまでに、

いったいどれほどの時間がかかるののだろう?さぞやトカゲも日常生活には不便することだろう。バランスがかなり違ってくるからな」


「そんなこと考えたこと無いです。尻尾切りはそれだけでもう、言葉の慣用句になってますから」


「桜木、いいか、真の日本語の心を忘れてはいけない」

「ここで私に対して、それ言いますか?」


「トカゲが尻尾を切って逃げ出した後、残された尻尾見たことはあるか?」


「あります。ピコピコ生きてるみたいに動いてますよね。あれってちょっと気持ち悪いですよね」



 それに壇が答える。



「そうなんだ。しかし気持ち悪いのは最初だけだ。違う!!俺が言おうとしているのは、そこじゃない。けっこう切断して痛そうに見えるということだ。

 しかし真にオレが気にしているのは切断面の方だ。綺麗に刃物で切ったみたいに切れている」



 壇の尻尾に対するこだわりの会話に当惑して優美子は答えた。



「そんなに、しっかり見たこと無いですから。あまり、その現場に遭遇しないですし」


「なぜ、あんなにしっかり切れるのだろうか?」



 優美子は、どうでもいいやとばかりに相づちを打った。



「トカゲさんが、ちっちゃい刃物とか出してサッサッと尻尾切っていたりして、エヘッ」



 その優美子の投げやりな態度に敏感に反応した壇は、いきなり切れた。



「メルヘンに逃げるのはよせぇ!俺の一番嫌いな暴走族の考え方だ」


「意味不明です」


「すまん、トカゲがちっちゃな刃物持ってる絵が余りにリアルに頭の中に浮かんでしまってな。俺の内面の尻尾切りの真実が塗り変えられてしまいそうになったんだ。

 危なかったホントに」


「じゃあ、メルヘンって説得性アリアリって事じゃないですか」


「そう、そう考えた俺自身が許せんかったんじゃ……!」


「そこは良いですから、話を続けて下さい。何の話がしたかったんですか?」


「トカゲの尻尾ってやつは、ひょとしたら、前から切り取れるように断面が幾層にも用意されていて、尻尾の中でスライス状態になっているんじゃあないのか?」



 優美子は回答に窮した。



「………………」


「それをただ、前から尻尾を細分化してあるならそんなにトカゲは痛くは無いのかも知れない」


「でも、切り離された尻尾がピョコピョコ動くという事は、神経が通っていると思うんです。それならやっぱ痛いんじゃないすかね??」


「あれは神経じゃなくて、単に電気的刺激に反応しているだけの筋肉だ。尻尾の中は輪切り体質になっていて、どこを切ってもポッキンほら金太郎体質に作られていると俺は考察する」


「それならそれで私は良いです。賛成ー!尻尾は輪切りー!」



 優美子はまたしても、しまったと感じた。今の発言は猛烈壇刑事から突っ込まれると予感した。


 その予感は的中する。



「なんだ桜木、会話をなんとか早く切り上げようとしている今の見え見えの相づちの入れ方はー!!

 意中の男と結婚を企んでそのお母さんである婆さんに媚を売ろうとして『おばあちゃん、それは私がやりますから』みたいなことを口では言ったとしてもその言い方が今の、

トカゲの尻尾のような相づちの入れ方をしていたら、お前の態度にお年寄りに対して一切の関心が無いことは見え見えじゃないか。

 それがわからないのか。俺じゃなくても大抵の成人男子ならこのセクハラ並の言葉の暴力にナイーブなハートが傷つくと思うぞ!」


「そんなムキにならなくても……いや、私の気持ちは確かにそうでしたが……認めます」



 そう答えながら、優美子は改めて、自分が何故今ここで壇刑事に対して卑屈な態度を取らないといけないのかと言う事に気づいた。


 そして、ついそういう応答をしてしまった自分に対して憤りを感じていた。



 檀と桜木、二人を乗せた車は港町署を出て、港町の山間部にある大学考古学部の発掘現場に到着した。



ウチの飼っている猫は優美子という。

家猫なんだが、いつも庭先にいる犬のブリットに吼え掛けられて

かわいそうだ。


優美子も窓際に行かなければいいのにと思っている。

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