表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

カエルと魔女

       ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「あ、おかえりー……って、なんで王子がまだカエルのままなんだよ? そんなに難しい呪いなのかい」


 魔法で少年の姿になって留守番をしていたネズミに、セレネーたちは「……ただいま」と答えることが精一杯だった。

 八方塞がりになってしまった旅を終え、取り敢えず森の中の家へ戻った二人は、各々にうつむいて意気消沈する。


 セレネーは壁際のソファーへ座り、盛大なため息をついた。カエルも後に続いて隣へ座る。


「どうしてフレデリカさんで呪いが解けないのよ……明らかに王子のこと、心から愛していたのに」


 南の国を去る際、フレデリカは王子の呪いを解けなかったことを謝り続け、呪いが解けなくても一緒にいたいと言ってくれたのだ。

 しかしカエルは「貴女の人生を縛りたくありませんから」と申し出を断って、今に至る。


 カエルの呪いを解くために、心から王子を愛する乙女のキスを求めていたが……それでも呪いが解けないとなれば、いよいよ解呪の魔法が間違っていたのではと思ってしまう。

 解呪の魔法は、他の魔法と間違えてかけられるものではなかったとしても。


 無言に耐えられなくなったのか、ネズミが「もしかして」と明るい声を上げた。


「片方が想っていても、もう片方がそれを受けようとしなかったら、いくら愛情を注いでも呪いが解けないんじゃないの?」


 言われてセレネーはハッとなる。

 確かに愛情が一方通行であれば、呪いを解く力が注がれず、ない事と同じになってしまう。


 こんな基本的な事をネズミから教えられるなんて……。

 自分にがっかりしながら、セレネーはカエルを見る。

 思い当たる節があったのか、カエルは感慨深げに目を閉じていた。


「実を言うと、カエルのままでいいから、セレネーさんと一緒にいられれば……と思っていました。貴女は自分の事よりも相手の事を考えられる、優しくて強い人だから、近くにいて心地良よかったんです」


 面と向かって褒められ、セレネーは急に頬を赤らめる。


 本音を言えば自分もこのまま一緒にいられれば、と思っていた。

 けれどカエルの呪いを解きたいという思いが強かった。


 今もそれは変わらないが、こう呪いが解けないとなると心が折れそうになる。

 このままでも良いんじゃないの? と。


(ふう……ダメね。疲れてると気が滅入っちゃう。少し休んでから、解呪の方法を見直していかなくちゃ)


 セレネーは背伸びをしてから、カエルを手の平に乗せた。


「ちょっと休ませてもらうわ。王子もしばらく休んだ方がいいわよ。次の旅に備えて体力を回復させなくちゃね」


「……はい」


 まだ気落ちしているカエルが痛々しく、どうにか慰められないかと思ってしまう。


 気がつくと、セレネーはカエルの頬へ軽くキスをしていた。


「元気出しなさいよ、原因が分かれば次に活かせ――ん?」


 突然、シュウゥゥゥゥゥッという音とともに、カエルの周囲に煙が立ち込める。

 そしてセレネーの体へ重みがのしかかり、思わずソファーへ体勢を崩した。


 徐々に煙が消えてくると……そこには金髪の穏やかそうな顔立ちをした青年が、セレネーを見下ろしていた。細身の体だが肩幅は広く、手足もすらりと長い。


 二人は呆然と見つめ合う。

 先に動いたのは青年の方だった。覆いかぶさるようにセレネーへ抱きつく。


「セレネーさん、やっと元に戻れました! ありがとうございます、これからは一生貴女を愛し続けます」


「ちょ、ちょっと、急に抱きつかないでよ。嬉しいのは分かるけどさ。しかもいきなり一生決められても困るから。少し落ち着いてよ」


 こちらが身じろいでも、青年はしっかと体にしがみついて離れない。

 もう気の済むようにした方がいいようだと悟り、セレネーは体の力を抜いた。


 青年から伝わってくる体温と吐息に、鼓動が早まった。


「あー、もう……しょうがないわね」


 セレネーは青年の背に腕を回し、ためらいがちに彼を抱き返した。




 二人を見ていたネズミは、くるりと背を向け「お幸せに」とつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ