ヴェルサイユ宮殿で景気対策
ヴェルサイユは丘になっていて、狩猟には向いているけど、いくら掘っても水が出ないんだ。そこで、巨大なポンプで水を吸い上げ、水路を作って水を引いた。困難な工事で、ヴェルサイユの丘に死体を積んだ馬車が通らない日はなかったとか。
フランスの歴史作品って、事あるごとに「死体を積んだ荷馬車」を出したがる傾向があるように思うな。死体の数とか、それを埋めるための穴とか、葬送の炎とか。悲劇好きなのかな?
ヴェルサイユの建設場所も、愛しのマリーが望んだから、とかいう手前勝手な話だったらしい。どこまで本気だったのか・・・。だけど、大手ゼネコンの介入による景気対策っていう手法は結構一般的なんだね。
ゼネコンが出張ってきて、景気対策。賛否、成否はともかく、ローマのコンクリート、ルーズベルトのニューディールエジプトのピラミッド、日本改造計画。いくつも世界的に例があるんだね。それらがどうであったかは、歴史家と経済学者に任せよう。
藤本先生著の「ブルボンの封印」では、貴族階級の消費の拡大、だけではフランスは立ち直れない、と断言するキャラクターが出てきます。民衆が貧困に苦しみ、飢えている間は国家としての繁栄はありえない、っていうんだね。
エコカー減税とか、エコポイントとか。貧乏な人にとってもありがたかった政策。実際には持ち家があったり、新しいビルや会社を作る人には更にありがたかった。実質は富豪層に偏った消費の拡大と推察できる。……これって当時のフランスと共通点は多いのか、少ないのか。
誰の言葉だったかな?「国の価値はその国で最も貧しいものによって決まる」。その意味で言うと、日本という国は価値が高いのかな。価値が高いってことは、奪ったり、たかったりする価値も高いわけで……。
当時のフランスで流行ったもの。貧富の差の拡大、そこから来る産業の空洞化、中央集権によって、地方が空洞化を始める。国家への不信感の増大。政治中枢にいる権力者の派閥争い。政局闘争。……人事とは思えないね、コレ。
そもそも、巨大な建築物で国が立ち直ったケースはすくないんだ。ウマくいったのは、エジプトのピラミッド、奈良の大仏、太公望の時代の霊廟。くらいかな? 個人的な意見だけど今の日本のこのタイミングで、箱物を建てようと推進する人を私は支持できないな。「あ、そうだ」
ともかく、「経済対策としてのヴェルサイユ宮殿」という見かたをしたとき、これは決して個性的な政策じゃないんだ。金ぴか主義と呼ばれたアメリカ、日本の鹿鳴館時代。その他にも色々あると思うよ。
国の繁栄の象徴を作って、ヴェルサイユは君達はこの偉大な国を支えている、鹿鳴館と金ぴか時代は君達も働けばこんな風になれる、っていう民衆に対する意欲喚起の意味もあったらしい。
とはいうものの、ルイ14世が楽していたわけじゃない。自分の朝食を公開して、卵の食べ方が上品と評判が出ると、朝に10個も卵を食べたとか、王妃のお産も公開したとか、着替えも公開したとか。プライバシーなんでまるでゼロだね。
王妃のお産を公開したのは、自分が双子説で苦しんだからじゃないかな。ルイ14世の双子伝説の記録と、お産後のやり取りの怪しさは「ブルボンの封印」にて、書かれているよ。面白いよー。
ともかく、身を削ってフランスに尽くしたのは確かだ。「英国王のスピーチ」って映画で「王とは国民の奴隷だ」。「私は王になんてなりたくなかった!」と嘆く王の姿があります。ルイ14世も同じような苦しみを味わったんじゃないかな。
「アンジェリク」におけるルイ14世は夜を好んだ。それも、にぎやかな宮殿の中ではなくて、夜一人でプライベートな空間でいる時だ。彼の愛人にルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがいる。ゼロの使い魔じゃないぞ、いっておくけど。
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは、純粋で信仰があつく、浪費家ではなく、金や称号にも興味がなかった。両足の長さが違っていて、短いほうの足に作られたカカトの靴をはいていた。こんな女性を愛したルイ14世はどんな人だったのだろうか。
ルイ14世は純粋な人であったのか。あるいは不器量な愛人をそばに置くことで、宮廷婦人達が「まずは、カイより始めよ」といわんばかりに意気込んで、浪費を拡大させることを策謀するほどの策士であったのか。謎は深まるばかりです。




