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flat.  作者: 詩音
6/7

FILE5:オーナーと私(2)

登場人物達に名前を考えてないので元オーナーと現オーナーで書きました。

わかりづらくて申し訳ありませんm(__)m


「ここはオーナーが開いた店じゃないんですか?」


「私もフラフラしてた時に見つけたんです。その当時のオーナーは、今の私より少し年老いた男性でした。」



十年前――



「いらっしゃいませ。」

「…。」

現オーナーは店を見回しながら、カウンターに座った。


「何になさいますか?」

「別に何でも…」

「でしたら、私のおすすめを飲んでみてください。」

元オーナーは微笑んだ。



「お待たせいたしました。ハーブティーです。」


カップを近付ければ花の良い香りが鼻孔をくすぐる。


「いただきます。」

それを一口だけ飲んだ。


「いかがです?」

「…美味しい。」

元オーナーの問いに小さく呟いた現オーナー。


「このハーブティーには色々なハーブが入っていて、その中の花言葉に『再生』『やり直し』という意味のものがあるんです。」


そう元オーナが言った瞬間現オーナーの頬に何かが流れた。

それが涙と気付いたのは少し後になってから。


「大丈夫ですか?」

元オーナーがハンカチを差し出す。

「大丈夫です。私は…何故泣いているんでしょうね。こんな歳にもなって…」

恥ずかしそうにハンカチで顔を拭う。



「泣くことに理由も年齢も関係ありません。大丈夫、ここは貴方のような人のためにある店ですから。」

「…ありがとうございます。」

それ以来、現オーナーは毎週flatへ足を運ぶようになった。


そんなある日――

いつものように店まで来た現オーナーの目にドアに貼られた一枚の紙が目に入った。


『flatは今月で閉店いたします。

長い間、ご愛顧ありがとうございました。』


「オーナー!!」

勢いよくドアを開ける現オーナー。

「おや、いらっしゃいませ。」

「これ…どういうことですか?」


「…私はたくさんのお客様の幸せそうな顔を見てきました。もう老い先短い身、そろそろ自分自身の幸せを探しに行こうと思います。」

微笑む元オーナーの表情は本当に幸せそうだった。


「…どこへ、行くんです?」

「決めてません。とりあえずは放浪の旅をしてみようと思います。」

「店は…」

「貸し手を探して、見つからなければ手放そうかと…」

「なら私が買います。」

コツコツ貯金していたため、それなりの金は用意出来る。


「…本気ですか?」

元オーナーも驚いて目を丸くする。

「次は私が、お客様を癒します。やり直したい、悔いなく残りの人生を過ごしたいんです。」

「…わかりました。では特訓しましょうか。」

拭いていたカップを机に置いた。

「?」

「コーヒーや紅茶のいれ方を。」




「…その後は大変でした。公務員を辞めてすぐ一ヶ月間の特訓ですから。」

昔話を語るオーナーの顔はどこか誇らしそうに見えた。

「失敗や悩みで、いつも不安になりますよ。この店を買って本当に良かったのか。」

「そんな時は、どうするんですか?」

私は尋ねる。コーヒーはもう冷めていた。


「何も。」

「…何も?」

「だって自分が好きで選んだんですから。」


その言葉で私の視界がすっきりとした気がする。


「…そうですよね。」


冷めたコーヒーを一気に飲み干し、カウンター席から立ち上がった。



「次に来られるのは今度の木曜日ですか?」

代金を払った私の後ろ姿にオーナーが尋ねた。


「いいえ。私の本が出たらです。」


そう言い切った私の表情は笑顔に満ちていたと思う。


「…またのご来店、お待ちしております。」





ほぼ最終話に近いですね。読んでくださりありがとうございます♪

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