FILE5:オーナーと私(2)
登場人物達に名前を考えてないので元オーナーと現オーナーで書きました。
わかりづらくて申し訳ありませんm(__)m
「ここはオーナーが開いた店じゃないんですか?」
「私もフラフラしてた時に見つけたんです。その当時のオーナーは、今の私より少し年老いた男性でした。」
十年前――
「いらっしゃいませ。」
「…。」
現オーナーは店を見回しながら、カウンターに座った。
「何になさいますか?」
「別に何でも…」
「でしたら、私のおすすめを飲んでみてください。」
元オーナーは微笑んだ。
「お待たせいたしました。ハーブティーです。」
カップを近付ければ花の良い香りが鼻孔をくすぐる。
「いただきます。」
それを一口だけ飲んだ。
「いかがです?」
「…美味しい。」
元オーナーの問いに小さく呟いた現オーナー。
「このハーブティーには色々なハーブが入っていて、その中の花言葉に『再生』『やり直し』という意味のものがあるんです。」
そう元オーナが言った瞬間現オーナーの頬に何かが流れた。
それが涙と気付いたのは少し後になってから。
「大丈夫ですか?」
元オーナーがハンカチを差し出す。
「大丈夫です。私は…何故泣いているんでしょうね。こんな歳にもなって…」
恥ずかしそうにハンカチで顔を拭う。
「泣くことに理由も年齢も関係ありません。大丈夫、ここは貴方のような人のためにある店ですから。」
「…ありがとうございます。」
それ以来、現オーナーは毎週flatへ足を運ぶようになった。
そんなある日――
いつものように店まで来た現オーナーの目にドアに貼られた一枚の紙が目に入った。
『flatは今月で閉店いたします。
長い間、ご愛顧ありがとうございました。』
「オーナー!!」
勢いよくドアを開ける現オーナー。
「おや、いらっしゃいませ。」
「これ…どういうことですか?」
「…私はたくさんのお客様の幸せそうな顔を見てきました。もう老い先短い身、そろそろ自分自身の幸せを探しに行こうと思います。」
微笑む元オーナーの表情は本当に幸せそうだった。
「…どこへ、行くんです?」
「決めてません。とりあえずは放浪の旅をしてみようと思います。」
「店は…」
「貸し手を探して、見つからなければ手放そうかと…」
「なら私が買います。」
コツコツ貯金していたため、それなりの金は用意出来る。
「…本気ですか?」
元オーナーも驚いて目を丸くする。
「次は私が、お客様を癒します。やり直したい、悔いなく残りの人生を過ごしたいんです。」
「…わかりました。では特訓しましょうか。」
拭いていたカップを机に置いた。
「?」
「コーヒーや紅茶のいれ方を。」
「…その後は大変でした。公務員を辞めてすぐ一ヶ月間の特訓ですから。」
昔話を語るオーナーの顔はどこか誇らしそうに見えた。
「失敗や悩みで、いつも不安になりますよ。この店を買って本当に良かったのか。」
「そんな時は、どうするんですか?」
私は尋ねる。コーヒーはもう冷めていた。
「何も。」
「…何も?」
「だって自分が好きで選んだんですから。」
その言葉で私の視界がすっきりとした気がする。
「…そうですよね。」
冷めたコーヒーを一気に飲み干し、カウンター席から立ち上がった。
「次に来られるのは今度の木曜日ですか?」
代金を払った私の後ろ姿にオーナーが尋ねた。
「いいえ。私の本が出たらです。」
そう言い切った私の表情は笑顔に満ちていたと思う。
「…またのご来店、お待ちしております。」
ほぼ最終話に近いですね。読んでくださりありがとうございます♪