世界の命運は、きっとあなたの手のひらの上
人生をたくさん繰り返してきて、何度も何度も同じ最期を繰り返すけれど。
その死ぬまでの日々は、なに一つだって同じことはなくて。
何度やり直しても、予想なんてできない日々ばかり。逆にその予想ができないということには慣れていき。
多少なりとも驚き耐性というものはついたと思ったんですけれども。
「リアスとカリナで婚姻を結べばいいじゃろう!!」
今世義父となった父の言葉に本当に驚きを隠せませんわ。
どういうことですか??
私と?? リアスが??
私と??? リアス???
「クリスティアでなく??」
「お前本当に今だけはふざけるなよ」
「あなたとクリスティアの話ですよ」
普段の行いから私とクリスという予想になりやすいのはわかっていますけれども。
隣で本当に嫌そうにため息をつく男をそっとにらむ。私だって嫌ですよ。
しかも私最悪なんですよ??
リアスと婚姻というのも嫌だし。
そもそも。
愛する親友の恋人と婚姻させられそうとか、なんていう友情崩壊のシナリオですか。その憂鬱さに、義父にはわからないように、けれど隣の男にはしっかりわかるようにため息をついた。
ことの発端すらわからない。
ただもしも、発端というのを挙げるのであれば、この家にお世話になると決まったことでしょうか。
毎世恒例、レグナとは親戚という形で今回は王家の家にお世話になり。リアスはその傘下にある良いお家柄に。クリスティアは一人ずっと決まらずにいましたが、リアスが傍にいさせたいということでどうにか屋敷付きのメイドに。兄妹になりかけましたが、そこはもう恋人なので全力で阻止し、クリスとリアス、メイドと貴族禁断の恋ですねとはしゃいでいたのが数年前。
十五、六になるとどの時代でも結婚の話が出まして。どのみち十八でいなくなるのでするりとかわしつつ過ごしていた日々。
それを、想い人がいると捉えたのか質問責めの日々に変わり、何度も「いない」と笑ってかわしてきましたが。
向こうもね、ほら。
王族ですから。お世継ぎがいないと困るんですよね。
どうにかと縁談の話が出てきて、これは早めにこの国のために離れますかと四人で相談しまして。
とりあえず今回、位が高い我々双子からですよねと、それぞれが家の主に国を離れることを伝えようとして応接間に来た時でした。
たまたまリアスが用があって来ていたんですよ。
応接間ですもんね。よく義父が私室に近い感じで使っていますが、お客さんと接する間ですもんね。そりゃお客様がいる時もあるでしょうと納得し。けれど見知った仲。いつも通りに「あらリアス」と言えば、向こうも「あぁ」と気軽に返してしまう。
ひとまず隣に控えていたクリスティアには視線で今日もかわいいですねと送って、「お邪魔しましたわ」と部屋を去ろうと思ったんですよ。
そうしたら。
そうしたらですよ?
義父が言ったんですよ。
「これだ!」
と。
何がですかと三人、首を傾げれば義父は言う。
「リアスと婚姻を結べばいいじゃろう!」
と。
王ということで全員「何を言っているんだ」と言わなかっただけ素晴らしいと思います。
けれどね??
「……」
私すっごくいたたまれない。
クリスの顔見れない。どんな状況ですかこれ。
恋人がいる貴族と婚姻を結ばれそうになり、その恋人がこの場におり。しかも私は親友。
最悪すぎません??
何度だって言いますよ。
最悪でしょうよ。
「……あー、あの、お義父様」
「不服か?」
えぇとても。
けれど今言うと両家の交流にもひびが入りそう。とりあえずそちらは飲み込んで。
「こ、こちらの方には恋人がおりますから……」
「出来ぬと言うのか?」
あっ、どうしてそこだけ圧かけるの。だめでしょうよそんな圧力。恋愛とは自由なものですよ。
というのは圧がすごくて言えないのですけども。
黙ってしまった私に、義父は白いひげをいじりながらリアスを見る。
「……リアスよ」
「はい」
「恋人がいると?」
「そうですね」
この男すごい、圧力に屈してない。
「どこの娘だ」
「……」
隣に座る男がどういう反応を示したのかはわからない。けれどきっと、視線でクリスティアを見たんでしょう。だってお義父様が反応したんですもん。
いやですわ、どうして私こうもリアスのことわかるのかしら。ただこれはお義父様の反応も見てですわと納得という名の現実逃避をしていれば。
「その娘か?」
義父の重い声が響く。
一瞬びくついた体はなかったことにして。
「メイドと恋仲ということか」
義父は頭を抱え込むようにうつむく。
これはこう、「メイドなんかと」とか言われるんでしょうか。そうしたら本当にこの家とはおさらばだわ。
なんて、さっきまでの圧なんてなかったかのように、いつでも動ける準備をしていたら。
「辛いな」
何ておっしゃるじゃないですか。
なんて??
「あの……お義父様……?」
「それは辛いな!! このままでは恋を引き裂いてしまう」
あ、お義父様が本当に頭を抱えてしまいましたわ。
三人、きょとんとしていると。
「リアスとカリナではよくないか……」
何をどうしてそう理解してくれたのかはわかりませんが。そうですわねと心でうなずき。ふむ、と悩む義父を見る。
そうして義父は少しの沈黙の後、口を開いた。
「わかった」
何がですか。
「カリナとそのメイドを姉妹にしよう」
おっと?
「そしてメイドとリアスで婚姻させれば」
「何も問題ありませんわお義父様!!」
「待て待て待て!!」
ちょっとなんですか。
「問題ないでしょうよ」
「俺とクリスティアが死ぬだろ!!」
そりゃ運命の日を迎えたら死にますけれどもきっとこの男が言いたいのはそうではないのでしょう。ただ私にはその意味がわからない。
「何故?」
「お前な……自分の兄を思い出せ」
「私の……」
「あ」
まずい、と思ったときには、その”何か”を発見したクリスティアが声を上げていました。
「なんか聞こえたけど」
どうしているのと言うのは野暮ですよね。そちらでお話終わったからですよね。ぎぎぎ、と音が鳴りそうな首を動かして、苦笑いで見れば。
「お兄様……」
そこには、笑っているけれど笑っていない私のお兄様。彼はその冷たい目で笑って。
「俺の妹は世界で一人だけですけど」
なんて言って、魔力を練り始めるから。
三人で必死にその場から連れ出し。
結果、反逆になりそうだということでその日のうちに四人、国から出ていきました。
『世界の命運は、きっとあなたの手のひらの上』/カリナ




