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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
一章 道しるべを探す旅

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徐々にレベルを上げていく



 遠くの方に見えるあれって、もしかして二つ目の塔じゃない?


 そんな感じで出発した結果、確かにそこに塔は存在した。


 外観は一つ目の塔と全く同じ。だからこそ、二つ目の塔だ、と言い切る事ができたのだが。

 これで見た目が全然違う塔だったなら、二つ目の塔などではなく単純に塔違いの可能性も考えなければならなかっただろう。


「って事は、この中に入ってまた上行って地下室に下りて解除って流れ……?」


 うっわめんどくさ。


 そんな本心はどうにか飲み込んだけれど。


 実のところ、町から逃げ出しそれからここに辿り着くまでに、三日ほどかかった。

 遠くに見えるなー、とは思っていたけれどいざそこへ行こうとすると結構な距離があったのである。


 現実のマップとリンクしてるタイプのゲームにハマってあちこち歩くような事があったからそれなりに歩く事は苦痛ではないけれど、しかしその手のゲームにハマらなければ今頃ユッカの体力はもっと低かったに違いない。

 ロゼがユッカにかけた魔法の効果なのか、どれだけ疲れ果てていても寝て起きたら元気いっぱいになっていたから三日でたどり着いたと言えなくもないけれど。あとは一日の大半を移動に費やしているからというのもある。


 もし疲労が蓄積されたままで中々回復しない状態であったなら、今頃足はガクガクになっていたし、筋肉痛も襲っていたはずだし、なんだったら三日どころか五日とか、それくらいかかっていたかもしれない。


 むしろ数日かけて歩かないと到着しないとか、結構な距離だと言うのに肉眼で確認できるってのもどうなんだ、とすら思えてくる。


 高層マンションの上から景色を見渡して、遠くの方に見える山に徒歩で行くような感覚だろうか。

 だがそれでも数日かかるか……? という気がするので、もしかしたらユッカの視力がこっちの世界に来て少し良くなったのかもしれない……なんて思ってしまう。

(でも別に視力が上がったって感じはしないからなぁ……どうなんだろ……なんか知らん法則発動してる?)


 実際この世界の中心部である光の柱も遠くに見えてはいるが、しかし見えてるからといってそこに行くとなると相当な距離があるのは確かな事で。

 そもそもユッカが住んでいた世界では、遠くを見ても世界の中心が見えるなんて事はなかった。


(わからない……異世界の事だからなんにもわからない……)


 自転公転とかそもそもあるかも疑わしい。だってこの世界は球体ではなく大樹のような形をしているというのだから。太陽があって月もあるが、しかし星空を見る限り自分の知ってる星座はなさそう。


 今まで自分が当たり前だと思っていた部分もあれば、そうじゃない部分も当然のように存在している、というのを頭で理解していても、完全に受け入れ切れているわけではない、というそのせいで、妙なところで混乱するのだ。


「二手に分かれるにしても……最上階がまた崩壊したら下にいる人が危険ですから面倒でも全員で行動するべきなんでしょうね」

「瓦礫が崩れて落下した途中で結構な勢いで粉々になったとはいえ、大量の砂をかぶるようなものだもんね……流石にそれはちょっと」


 むしろそれだけ粉々になってくれていたから、地下に下りた時に広範囲に散ったから地下が埋もれる結果にならなかったというのもあるかもしれない。


「一応魔法で吹っ飛ばしたりもしたから地下が完全に埋まる事にはならなかったけど、上から降ってくるのを待ち構えて対処するとなると大変かな」


 ロゼの言葉に、あぁそれもあったからあれで済んだのか、と納得する。


「どっちにしても行かなきゃなんだよね」


 とても気が乗らないけれど。

 だがしかし、この地区をそのままに他の所へ行くのも難しいような気がするし、であれば行くしかないのだ。


(他の地区に事情を話して助けを求める、っていう方法がないわけじゃないとは思うんだけど……)


 そこまで考えて、しかしユッカはそっと首を横に振った。


 自分が住んでる地区の話ならともかく、別の地区だ。

 そこがなんだか大変な事になっているらしい、と聞いても、果たしてどれだけの人がその問題を解決しようと思ってくれるものなのか。


 最悪自分の暮らす場所じゃないのだから、放置でも構わないだろう、なんて流される可能性だってありえるのだ。


 いくら近隣の地区とはいえ、干渉されなければそこがどれだけ悲惨な状態になっていても他人事を貫く者も当然いるだろうから。


 フラワリー地区に関しては、多少手を貸してくれるかもしれないが……


 だが既にルボワール地区の者たちの末路を聞けば、むしろフラワリー地区から脱出して他の地区で暮らす方を選ぶような気がしている。



 道中、あの球体人形たちの中身がアーロスの知る村の人たちである事に間違いはない、といらぬ確証が得られてしまったのである。

 というのも、数体が追い付いて襲い掛かってきたのだ。


 どうにも彼らの意思ではないらしく、人形は勝手に動くのだとか。


 だからこそ、襲い掛かってきていながら、聞こえてくる声はいずれも助けを求めていた。


 人形を破壊して、それで終わりだと思ったのだが。

 昨日、またもや人形たちが襲ってきた。そしてその中身は、前に倒した村の人たちである。


 意識を人形に封じられているどころか、魂を縛られているらしく人形が壊れ一時的に解放されても別の人形に入れられてまたユッカたちの前に現れるらしい。彼らの悲痛な声でその情報を得た時、ユッカの目は死んだ。


 村人たちの意思で襲っているわけでもなく、意識を閉じ込めた器が勝手に自分の意思を無視して動くとか最悪なオートプレイでしかない。


 アーロスの知り合いでもない別の町に住んでいたであろう住人たちもまた、助けを求めていた。

 だがしかし、人形を壊したからといって、その中身が見えるわけでもない以上、こちらが相手の魂を回収なんて芸当もできるはずもなく。

 しかも人形が壊れた時のダメージは相手も感じているという最悪の情報も得てしまったせいで、魔法を放つ時ロゼもディオスもやりにくそうにしていた。

 人形に痛覚なんてないはずなのに痛みを感じるとか、クークラの悪意が思い切り滲み出て――いや、滲むどころかモロ出しでユッカは流石にドン引きした。こんな露骨に悪意を塊でお出ししてくる事、ある……?


 悪意を悪意と認識していなければそういう事もあるのかもしれないが、クークラの悪意は明確である。

 であるのなら、せめてもう少し隠すとかしろよと思ってしまうのは、ユッカが小心者であるが故だろうか?


 ともあれ、たどり着いた塔に足を踏み入れる。

 一つ目の塔の時と同じように、カギはかかっていなかった。


 一つ目の塔の時は案外不用心だな、なんて思ったがしかし今となってはこのルボワール地区に他に誰がいるでもない状況なのだ。カギなどかけなくても何も問題がないというだけだったと知れば、自然と表情はしかめられた。


(こう、何も知らない他の地区からの人とかが来てたりしたらとんでもない目に遭うやつでは?)


 何も知らないままに巻き込まれ、そして事件解決を流れでする羽目になる。

 そんなゲームの導入部分のような展開を想像する。


(いや、それもう私たちじゃんほぼ)


 何も知らない、というわけでもないが、しかし肝心な部分はほぼわかっていないのでそういう意味では間違っていない。

 考えて、いやそういうこっちゃないんだわ、と自動でオチがつく。

 そんな風に考えるのは、長い長い階段を行かなければならないという現実逃避の面もあった。


 いっそ羽があるなら飛べるって事でしょ。先にひとっ飛びして解除コード入力とかしてきてくんない? なんてアーロスに言おうとも思ったのだが、しかしその発言は結局ユッカの口から出る事はなかった。

 何故なら途中で人形たちが邪魔をしてきたからである。

 羽の生えた人形たちはユッカたちの周囲を飛び回り、あわよくば階段から突き落とそうとしてくる。

 それらを対処しながら進んでいたので、そんな中でアーロスに一人で先行しろとは流石に言えなかった。


 かつて、アーロスの知り合いで村に住んでいたであろう住人達は、余程球体人形の居心地が悪すぎるからか救いを求める声しか出してこない。アーロスが語りかけても、一切会話が通じていなかった。

 助けてと言いながら襲い掛かり、そうしてロゼやディオスの魔法で撃ち落とされた時に盛大に断末魔の叫びをあげる。

 そのくせ、少ししたら別の人形に宿らされたのか復活するのである。


 頭痛がするようで、アーロスの表情は険しく、また足取りもあまり軽やかとは言えなかった。


 この状況で足取りが軽くなるわけがないのは百も承知だが。


 ただ、一人で先に行かせるにしてもアーロス一人で対処はできそうにないし、それどころかますます顔色が悪くなっているのだ。いっそ声を聞かないよう耳を塞いでただ前に進む事だけ考えろとしかユッカも言えなかった。


(こういう精神的にえぐってくる攻撃仕掛けてくるタイプとかもさぁ、普通ゲームだったら中盤から終盤にかけてだと思うんだよね。序盤で出てくる事まずなくない?

 ……あー、いやあったな序盤でヒロインの両親と戦闘してBGMが娘の名前と助けを呼ぶ声っていう中々なやつ。ヒロインが暮らしてる町の名前も中々に不吉さがあったようななかったような……)


 ユッカは別にアーロスではないので、村の人たちの事は知らない。

 個人名も相手の性格だとかも知らないし、個体識別など以ての外。

 勿論何も思わないわけではないけれど、けれども他人である。

 ロゼが護りの魔法をかけてくれているのもあって、今のところそこまでの危機感もない。

 なのでリュックから傘を取り出して、周囲を飛び回り時々ユッカの方へ近づいてくる人形を淡々と叩き落としていた。

 中身が人と言えども、見た目は空飛ぶ球体人形。顔もついていないし他人に危害を加えていると言う実感は薄かった。そうじゃなければ流石にユッカもこんな手段をとるのは難しい。


 それに、道中でロゼにそっと確認してみたのだ。


 彼らが助かる方法はあるのか、と。


 結論として、既に手遅れ。これがロゼの答えだ。


 肉体があるのなら、クークラの事だ。そのまま本体を直接操るなりしてアーロスにけしかけた方が手も足も出せなくなるのは明白である。だがそれをしていないという事は、既に村人たちの身体は存在していない可能性が高い。そうでなくとも、一度壊れた球体人形から解放されても新たな人形に宿るようにされている、という事からもし身体が無事であったとしても、そちらに戻れないようにされているわけだ。


 もし身体が残されていたとしても、損壊していれば戻したところで散々球体人形の中で傷ついてきた精神は肉体に戻った時点で死を迎える可能性がとても高い。

 どちらかが無事ならまだしも、精神を移されている時点で肉体が無事である可能性はほぼ無いというのがロゼの見解だった。


 仮に身体が残っていたとしても、長い間精神が抜けているのだ。仮死状態で保存されているならまだしも、点滴などで身体に栄養を送り込まれているでもないのなら。

 身体の方は衰弱していたとしても、何もおかしな事ではない。

 ギリギリで肉体が生きていたとしても、こうして散々摩耗した精神が戻ったところで助かる見込みはほぼ無いと言える。


(まぁ、私も有り得ないとは思うわ。だってローザローゼシカを邪魔者として排除するためだけに地区の一部を崩落させるような相手だし。そんな相手が肉体を安全な場所で保管して精神だけ使い倒すみたいな事をするっていうのも、ねぇ……?)

 むしろ肉体も別の何かに利用されているんじゃないかとすら思えてくる。


 妨害は、正直なところそこまでのものではなかった。

 ある程度進んだ時点でぴたりと止まったからだ。


 完全に邪魔をして足止めをしようと言うよりは、時間を少しでも稼ごう、という方が近いのかもしれない。


 そうして今回も疲れ果てながら、どうにか解除キーを作動させる。

「これであと二つの塔で解除できれば城に行けるんだっけ?」

「クークラの言葉に嘘がなければね」

「あ、そういうのもあるのか」


 全部嘘で、これら全てが徒労に終わる、という可能性もゼロではなかったと悟って、ユッカの表情がすんっとなる。いやでも流石にそこまではないよな……? と思いたい。


 どうにか地下から地上へ移動し、塔から出た直後に――


 ドカンと轟音がして塔が爆発した。


「えっ、ちょっ、皆大丈夫!?」


 咄嗟にロゼが障壁を張った事で誰も怪我はしなかったようだが、それでもビックリはする。


「えぇ、まぁ、問題はないです」

「驚いたがこっちも無事だ」


 ディオスは平然と、アーロスはやや驚きつつこたえる。


「いやそりゃ確かに?

 塔で解除しちゃったら後はもう用無しって考えなのかもしんないけどさぁ。

 でもだからってこんな破壊する意味、ある?

 ……いやあるな。あわよくば解除した直後、ちょっと油断してる相手を塔もろとも葬ろうとかそういうのならあったかもしんないな……

 え、まって? 二つ目の塔でこれなら三つ目と四つ目の塔どうなるの? もっと嫌がらせレベル上がるかもしれないわけだよね?」

「どっちにしても油断はできないね」


 ユッカの独り言のような呟きに、ロゼはため息混じりに返していた。

 

「ともあれ、どっかで少しはゆっくり休めればいいんだけど……」


 球体人形がこなければいいが、来た時点でそんなユッカの願いは打ち砕かれる。

 ユッカとしても一応言ってみただけで、そこまで期待はしていない、というのが声に出ていた。

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