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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
一章 道しるべを探す旅

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圧倒的フラグ不足



 アーロスは元々、このルボワール地区で生まれ育ったが、しかしその後別の地区に移動しそちらで暮らしていた。


 だが、そこで何かがあって戻ってきた。


 アーロスが身を寄せていた村はかつてアーロスが過ごしていた場所ではなかったため、そういう意味ではアーロスは村の人からすればよそ者で、それでもアーロスは少しずつ村の人たちと歩み寄ってお互いに信頼を積み重ねていった……ようではあるのだが。


 しかしそこでクークラが村を襲った。

 襲われた原因がアーロスにあるかのような言い方をして。


 ある程度信頼関係を築いていたといっても、しかし住処を追われるような事になればこいつのせいで……! と思う者はどうしたって出るだろう。

 だからこそ、避難場所にアーロスは行けなかった。


 クークラがまたいつ村にやってくるかはわからないので、あまり大きな荷物は持っていけなかった村の人たちの代わりに、アーロスがいくつか使えそうな家具などを運んで、避難場所近くに置いていったりしていたのだと言う。


 その時はまだ避難場所――つまり今ユッカたちがいるここだ――には村の人たちは確かにいたのだ。


 だがその後、アーロスはクークラに大量の魔力を叩き込まれ、結果として魔力汚染される形となった。

 その時に記憶も混濁し、意識が飛んで――いくつかの記憶も朧げになってしまったらしい。


 恐らくはその時に村の人たちはクークラによって消されたのだろう、とは思うが、ハッキリとはわからなかった。アーロスの記憶にも、その部分が鮮明にあるわけではなかったので。


 だが、避難場所に誰もいなくなっても、アーロスはしばらくは今までと同じように過ごしていた。

 村へ戻り、そこで使えそうな物を運び、この避難所の近くまで移動させる。


 それらを繰り返し、しかし避難所に既に誰もいないという事実には気付いていなかった。

 村の人たちの悪感情を刺激しないために不必要に近づかないようにしていた、というのもあるのかもしれないが、魔力汚染による記憶の混濁から、村の人たちはいると思い込んでいたようなのである。


 そしていつものように村でまた運べそうな物を探す途中で爆発が起きた。


 そこにユッカたちがやってきた。


「……時系列としてわからなくもないんだけどさ」


 ユッカは言う。

 途中ふわっとして曖昧な部分は、アーロスが憶えていない部分があるせいだ。

 ルボワール地区を出て他の場所で生活をしていた。これについてユッカは別に深く聞くつもりはない。ユッカの世界でも引っ越しは別に珍しい話でもないし、ディオスのように様々な地区を旅する者がいるのだから、生まれ育った地区から一生涯出ない、なんて人ばかりではない事が明らかだからだ。


 だが、どうして戻ってくる事になったのか。

 そこの不明瞭さが気にかかる。

 長い年月を別の地区で過ごして、やっぱり生まれ育った土地が一番だな、という感じで戻ってきたわけでもなさそうだったのだ。

 それが理由で戻るのならば、かつてアーロスが暮らしていた町や村へ戻るはずだ。けれどもアーロスがやって来た村は、アーロスが育ってきた場所ではない。


 戻れない事情があったのかもしれない。

 だが、ではどうして戻って来たのか。

 故郷を懐かしんで、というのならルボワール地区であればどこでも良かった、というわけでもないはずだ。


 何か、他の理由があったのではないか。


 そう思っても、アーロスにはその部分の記憶が欠落していた。


「目的があって……戻ってきたはずだったんだが……」


 と、ユッカが問いかけた時にそうこたえていたので、そこは確かだ。

 ただ、その理由だけがハッキリしないだけで。


 クークラが村を襲った原因がアーロスにあるかのような言い方をしていた、というのであれば、アーロスとクークラは元々知り合いだったはずだ。

 何も知らない相手のせいにした、というある種、性質タチの悪いやらかしがないわけではないけれど、アーロスもクークラをそのまま放ってはおけないと考えてはいたようなので、恐らくは知り合いであったんだろうなぁ、とはユッカも思っている。

 単なる正義感で、実力差を考えずに……なんて無鉄砲な可能性もよぎりはしたが、少なくともユッカが知り合ってから今までの様子を見る限りアーロスという男はそこまで考えなしでもないように思えた。


「その、村が爆発したのって、そろそろ荷物がなくなるから、だったとかじゃないよね?」


 考えた結果、浮かんだことをユッカが言えば、ディオスが「あぁ、確かにそれは……」と同意するかのような態度を見せたので、そこまでおかしなことを言ったわけではなさそうだ。


「多分だけどさ。話聞いて思っただけだから全然間違ってるかもしれないけど。

 アーロスは村の人のかわりに持っていけなかった家具とか運んでたんだよね? 魔力汚染で記憶が飛んで村の人たちがいないってわかってなくても家具だけは運んでいた」


 実際避難場所としてあったそこには、いくつかの家具が置かれていたのが見えたのでそれは間違いではないのだろう。

 流石に野外に放置したままとか、雨が降ったら傷みそうなものではあるけれど、しかし全部が全部外に置かれているわけでもなさそうだった。


 最初の頃は村の人たちが運び入れて、村の人がいなくなってからはもしかしたらアーロスが、そうと理解していないだけで建物の中に運んでいる可能性もあった。アーロスの記憶が朧気な時にそれをやっていたとしても、誰もその事実を把握できていない以上証明も否定もできそうにない。


 アーロスが運びいれたとしても、その記憶がなければ村の誰かが運び込んだんだろう、となってしまうので。


「でもさ、それだって限りがあるわけでしょ。運べる物がなくなった後、アーロスがどうなるかはわからないけど。

 でも、そこで正気に戻って村の人がいないという現実を直視するかもしれないし、今度は避難場所から家具を運び出してまた村に戻すのかもしれない。そうして何事もなくまた一から避難場所に運び始める、なんて事もあったのかも。

 あくまでも可能性ね。実際どうなったか、なんてクークラの言葉でもう誰もいないって気付いちゃったわけだから、たらればの話でしかないし」

「何も気付かぬまま新たにやり直す、ところまでは彼女もさせるつもりがなかったのかもしれませんよ。

 だからこそ現実を突きつけた。そう取る事もできます」


「どっちかっていうと、向こうの準備が整ったから、とかもありそうだよね。

 村の人たち以外の……ルボワール地区で暮らしていた人たちが犠牲になった、っていうんだったら。次はフラワリー地区なわけでしょ?

 クークラの狙いはローザローゼシカだったっていうのなら、もうフラワリー地区を狙う必要なんてなさそうだけど」


「どうでしょうね。彼女がいたという痕跡すら気に食わないのかもしれませんよ。

 それら全てを消してようやく完全に抹消した、と思うタイプであったのならば。

 フラワリー地区を守るにはやはり彼女を止める他ないようです」


 アーロスの記憶の肝心であろう部分がごっそり抜け落ちているため、ここでこうして話したところですべては想像にすぎない。


 ユッカとディオスの会話のどれほどが、果たして正解に近い物なのかさえわからないままだ。


 ただ、クークラは間違いなくアーロスが知らない、抜け落ちたであろう部分も把握している。

 そうでなければクークラは、アーロスの事も他の村人たちと同じように始末していても何もおかしくないからだ。


(アーロスだけが残された理由……そこがカギになるのかもしれない。でもどうだろう?

 単純に勇者と魔王に置き換えて考えたとして、クークラが魔王でそれを倒せる唯一が勇者であるアーロス、だとしても。だったらクークラはアーロスを生かしておく理由はないように思うんだよね。一番の邪魔者だもの。

 私が魔王の立場なら勇者が育つまで待つなんてしないでさっさと手を打つ。まぁ、ゲームだとそうやって手を出した結果、勇者が勇者である自覚を持って魔王を討ち滅ぼさんとする、みたいなメタ展開もあったような気がするけど。

 じゃあその逆に、アーロスにだけは生きていてもらわないといけない理由があった……?)


 クークラはアーロスに対して決して友好的な態度ではなかったが、それをイコール邪魔者、とするよりは絶対的な味方ではないが、しかし敵でもない、くらいの立ち位置にあると考えた方が自然な気がした。


「とりあえずここでこれ以上考えても何もわかるものはない。だったら、今日はしっかりと休んで明日、二つ目の塔を目指そう。どこにあるのかわかんないけど」


 ため息混じりに言ったロゼに、

「塔が城を守るために配置されているのであれば、塔は城を囲うようにあるはずです。であれば正確な方角はまだわからずとも、大まかに推測は可能。二つ目の場所がわかれば、残り二つの場所もそう難しくはないでしょう」

 落ち着いた声でディオスが返した。


 言われてみれば確かにそうだ。

 城の位置が最初からわかっているなら塔の場所も簡単にわかりそうだが、しかしユッカたちはクークラの城の場所はわからない。アーロスもそれはわからないと答えていた。


 事実、塔をクークラの根城だと思っていたらしいので、そこに嘘はないだろう。


 そしてあの塔の近くに似たような建物がない、というのも確かである。

 もしあるのなら、アーロスが気付けなくともロゼやディオスあたりが気付くような気がするので。


(いやでも周囲の木が高すぎて塔が見えないなんて可能性も……いやでもなぁ……そんな目で見える範囲に塔がにょきっとしてたらやっぱ気付くか)


 極小範囲を覆うだけ、であるのなら四つの塔が見える範囲にあってもおかしくはないかもしれない。

 だが、流石にそんなはずもないだろう。


「候補としてはここから北東か、北あたりでしょうか。地理的に」

「そこじゃなかったら?」

「そこから更に東に進みましょう。途中いくつか町や村があったはずなので、クークラが本当に他のルボワール地区の住人に手を出したかどうか、行けばわかるはずです」

「おぉ……確かに」


 クークラがハッタリで村の人だけをどうにかして、それをルボワール地区全てであると言った可能性もある。

 勿論、今はまだ無事でもいずれそうする、というつもりで宣言した場合というのもあるけれど、それでもまだ他の町や村の人たちが無事なら危険を知らせるくらいはできるかもしれない。

 よそ者の忠告をどこまで聞き入れてくれるかは不明だが。



 それでも、これから先どうすればいいのかハッキリしてきた気がして、少しだけ希望が見えたような気がした。

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