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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
一章 道しるべを探す旅

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22/25

誰もいない



 塔は四つ。そこにある解除キーを作動させ最終的にクークラのお城とやらへ行くのが目的、とは言え。

 一つ目の解除をした時点で、ユッカ的には正直これあと三回もやんの……? という気持ちでいっぱいだった。

(やっぱどう考えてもこんなん旅立って最初の方に出てくるようなやつじゃないって……ゲームだったら絶対に中盤とか終盤にかけてだって。序盤なんて仲間も揃ってなければ装備もアイテムもロクにないような状況なのにこんな面倒なのやらされたら大抵のプレイヤーはやる気なくすって。

 クソゲーか? まぁ人生はクソゲーって言われてるけどだからってクソみたいな仕掛けのダンジョンもどきを序盤に配置していいってわけじゃないんだわ)


 口に出したら問題しかないから心の声だけに留めておくが、この場に自分と同じ世界の誰かがいたのなら。

 間違いなくその話題で盛り上がっていたに違いなかった。


 かったるい、という点では素人が作ったゲームのマップだけやたら広い、みたいなやつと同類である。

 冷静に考えたらこの村狭すぎない……? なんていうのが販売されたゲームにも確かに存在しているけれど、しかしあれは落ち着いてよくよく考えると理にかなっていたのだ。大したイベントがあるでもなく、重要な何かがあるでもない。旅の途中の休憩ポイント程度のもの。容量の問題もあるかもしれないけれど住人の数も少なければ建物の数も少ない。村は村でも廃村一歩手前のところか? なんて思っていた事もあったが、リアルさに寄せようとするとどうなったか。素人の作ったやつは確かに家と家の間がちゃんとあったり、人もそこかしこにいるけれど、結果どうなったか。単純に移動が面倒。広くても別にアイテムがあるわけでもなく、重要な情報が得られるわけでもない。くっそどうでもいい会話が大半で、かろうじて有用そうなのはどこそこに行くとなんとかの町が~みたいなやつだけ。


 村でこれなのだから、お城はどうなるかというと。

 無駄な移動を強いられる。玉座に辿り着くまでが長い。お城の入口から一直線に進んで階段のぼったらもう玉座、みたいなゲームもあったが、あれは余計なストレスをなくす配慮だったのだと今なら言える。

 なんでもかんでもリアルに寄せればいいってもんじゃない、というのをユッカはゲームで学んだのである。


 そしてそんな学びから、クークラの城までの道のりはどうしたって駄目出しする部分しかない。


 侵入者対策にしても、じゃあクークラがあの時点でわざわざ教えてくれる必要は何もなかったし、解除コードが起動した時点で黙っていればユッカたちは間違いなくその時点でとりあえず何かがどうにかなったのだと思い込んだ事だろう。

 解除キーの存在など気付く事なく。


 そうすれば時間を稼ぐ事も容易だっただろうし、邪魔が入る事もなくクークラは悠々と目的を達成できたかもしれない。


 考えれば考えた分だけ「たられば」の話になるが、しかしどうしたってそう思うわけで。


「ユッカ、難しい顔してるよ」

「あ、うん、ごめん。ちょっと色々と考えちゃって」


 ロゼに言われて、ユッカはひとまずそうこたえた。

 実際考えてはいたけれど、どちらかといえばクソゲーバランス仕様が過ぎんか? という内容である。流石にそんな内容をロゼどころかディオスたちに聞かれるわけにもいかない。


 ちなみに現在ユッカたちは、一つ目の塔をどうにか脱出し次の塔があるであろう場所へ移動――するより先に、まずアーロスが暮らしていた村の人たちが避難したと言われている場所を目指していた。

 クークラの言葉が事実なら、このルボワール地区にはもう人が住んでいないという事になる。

 それを確かめる必要がありそうだと思ったし、ついでにもし村の人たちがいたのなら他に何か、クークラに関する情報を得られないかとも考えた結果だった。


 しかし今、先導しているアーロスの足取りはどこか危うい。

 無理もない、とは思う。

 ユッカにとって村の人たちは顔も見た事のない知らない人だから、もしクークラに何かをされていたとしても、お気の毒に……としか思わない。けれどもアーロスにとっては今はそうでなくても、以前は共に同じ村で暮らしていた知り合いなのだ。

 村を出て、それでもどうにか避難して無事である、と思っていた人たちが実はとっくにいなくなってる……なんて言われれば動揺しても何もおかしな話じゃなかった。


「彼女の言葉は恐らく真実でしょうね」


 ユッカの後ろを歩いていたはずのディオスが隣に並んで、ぽつりと呟く。


「クークラが? 面白半分の悪戯とかで言った、とかじゃなくて?」


 同じようにユッカも声を潜めた。流石に内容が内容なのでアーロスに聞こえるように言うのが憚られたのだ。


「確かにフラワリー地区では悪戯を繰り返していたようですが、その悪戯が何らかの儀式であった可能性もあり得るわけです」

「儀式?」

「えぇ、どういうものか、までは僕にもわかりません。けれども魔女の儀式は常人に理解できないものも多く存在しているので」


 どうなのかなぁ……? なんて思ったからこそユッカの目はロゼに向く。

 ロゼも「ヘンテコ儀式が魔女にとって当たり前みたいな言い方はどうかと思うよ」と呆れたように言うが、しかし完全に否定はしなかった。


(つまりあるのかヘンテコ儀式)


 ちょっと気になったけれど、しかしそれは今する話ではない。


「クークラがやったと思われる事って、フラワリー地区にあった町での悪戯と、同じくフラワリー地区で暮らしていた魔女、ローザローゼシカの家周辺を崩落させたこと。あとはこっちの……ルボワール地区の村で暴れまわるかして村の人たちがここは危険だ、って感じで逃げ出すように仕向けた事……だと思ったけど、塔とか城とか作ってるんだっけ。で、さっきの話が本当なら、逃げたはずの村の人たちもいなくなった、って事なんだよね?

 どこか別の地区に追いやったか、殺したかのどっちか、って考えると……結構凶悪なのでは?」

「そうですね。少なくともこのまま野放しにしておいていい存在とは言えないかと」


 クークラをどうにかするにしても、それは別にユッカの役目ではない。わざわざ危険に首を突っ込むつもりは本当ならないのだが。

 けれどもクークラが狙った相手がローザローゼシカであるというのなら。

 ロゼが黙っていられるはずもないし、巻き込まれる形になったとしてもそれは仕方がないと思っている。


 ユッカはロゼの母親の事を知らないが、とりあえず凄い人であるというのはロゼの話から想像はできたし、ロゼにとってはそんな母親の後継者を勝手に名乗るクークラを放置など、という気持ちになるのもユッカとしては理解できる。


(つまりそれって、自分が尊敬している……たとえば神絵師の人とかがいたとして、その人の弟子を勝手に名乗って好き勝手やらかしてる他人ポッと出の奴を目の当たりにしたみたいな感じなのでは……?)


 同じようにその人物も神絵師であればまだしも、実力もないのに神絵師の名前を使って虎の威を借る狐みたいな事をしているようなものであれば、ロゼがブチ切れたとしても何もおかしくはない。


 一番手っ取り早いのは本人――マギサリュクレイアが登場してクークラにお前は後継者ではない、と言う事なのかもしれないが、その本人が今この場にいない以上、確認のしようがないのだ。



 ユッカの想像とロゼの件とは違うのかもしれないが、神絵師が自分の親戚だったりした場合は間違いなくユッカもブチ切れ案件だと思うのでやっぱりそういう認識でいいのではないかと思うと、ロゼが怒るのも当然だという結論に落ち着く。


 こういったものは、後回しにすると被害が増える一方だ。

 ユッカとしてもさっさと帰りたい気持ちではあるけれど。

 だが必要なアイテムが複数ある上に、それもまだ一つも手に入れていないのだ。

 後回しにして、と言うにはちょっと酷な気がする。


 これがあと一つアイテムを入手したらすぐ帰れる、なんて状況ならともかく。


(そう考えるとやっぱイベント配置ミスってるみたいな気しかしないのよな……フリーシナリオ系のゲームにしたって、あれだって最初から全部のイベント起きるってわけじゃないし、いくつかの必要なフラグは踏んでないと駄目だったはず。

 ……なんだこの、まだ主人公がラスボスと敵対する理由もないうちからラストバトルに入りましたみたいな感じ……どうかしてるぜ)


 何度考えてもやっぱり同じような結論に辿り着く。


 かといってそんなユッカの考えを口に出しても、ディオスに理解されるとは思っていないし、ロゼだって困るだろう。むしろ自分にとっての一大事をゲームイベントで例えられても……という話だ。それくらいはユッカにだってわかっている。


 だが、そんな風に考える時間もそろそろ終わりを迎えそうだった。


 前を行っていたアーロスの足が、ぴたりと止まったのだ。

 そしてその先には、ユッカたちが訪れた村と比べると規模は小さめだが、確かに人が暮らしているであろう痕跡のある――集落と呼べそうなものが広がっていた。


「あ、あぁ……」


 アーロスががくりと膝をつく。


 たまたま誰もいない、なんて気休めの言葉も出てこないくらいに、そこには誰の気配も存在していなかった。

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