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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
一章 道しるべを探す旅

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なんか違う、ってのは個人の感想



 急がなければならない――という状況になんか気付いたらなっていたわけだが、正直ユッカとしては状況をほとんど把握できていなかった。

 一応わかっている部分もあるけれど、ぶっちゃけるとゲームのパッケージの裏面とかでストーリーの一部をふわっと触ったくらいのものでしかない。

 気にするべき点がいくつかあったとは思うが、それを今ここでお互いにすり合わせるわけにもいかなかった。


「セキュリティ解除って言ってたけど、何をどうすれば解除できるの?」


 台座の上の球体は相変わらず淡く光っている。先程までと違うのは、クークラの顔がもう浮かんでいないというだけだ。


 これをぶち壊すとか光を消すとか、そういうアレかな……? なんて思うが、本当にそうか? という疑問も浮かぶ。


 一見すると確かになんだか重要そうな感じはしているけれど、どうにも見掛け倒しな気がするのだ。


 ここがクークラのお城ではない、というのには確かに納得はできた。途中にあった小部屋も特に重要そうな何かがあったわけでもないし、お城に行くためのギミックでしかないと考えればむしろしっくりくる。


(ゲームだったらあの淡いの止めたらギミック解除とかになるんだろうけど……)


 でも本当にそうか? と思うのだ。


 大体クークラのお城に行くためのギミックであるというのなら、それがこうまで無防備であるはずもない。

 確かに長々と階段をのぼってきたからとても疲れたし、そういう意味ではここに来るまでそれなりに苦労した……と言えなくもないのだが。

 けれど階段をのぼってきて疲れた事がギミック解除のための労力としてカウントできるか、と考えれば流石にそうは思えなかった。

 もっとこう、罠とか他のギミックを解除してその果てにここに辿り着いたとかであればまだしも。


 ゲームの中の話として考えるのであれば。

 移動中の疲労は大半のゲームでは含まれない。

 だからこそゲームのキャラは階段だろうと坂道だろうと気にせずダッシュしっぱなし、なんてものもある。

 最近はそのダッシュもスタミナがある分だけ、みたいなやつもあるからダッシュ移動しっぱなしというわけにもいかないが。

 だがスタミナを消費したからといって、スタミナが回復するまで一時的に走れなくなる、くらいのものであって、現実と異なりスタミナが回復すればまた全力ダッシュは可能になるわけで。

 現実だとある程度回復したからといっても、また全力で走れるか、となればまぁ疲れが完全に吹っ飛んだわけでもないので、どうしたって速度は落ちるしまたすぐ疲れるのだ。


 短距離走なら全力で走るのもありだが、長距離の場合はスタミナ配分をしてどれだけ速く走るかではなく、どれだけ速度を一定に保ったまま走り続けるかが重要になってくるわけで。


(現実問題、確かに疲れたしギミック解除のためにそこそこ苦労したと言えなくもないけれど、ゲームにたとえて考えたらただ移動しただけ、なんだよね、これ。

 それで簡単に解除とか、できるものなの?)


 それはあまりにも……なんというか……こちらにとって都合がよすぎやしないだろうか。


(私がクークラならそんな簡単に解除されないようにするしな)


 お城に招待したいからすぐに来てほしくて! なんて勢いがあるのならこれといったギミックだの謎解きだのがなくたって全然問題ないのかもしれないけれど、その場合はそもそもこんなわけわからん段階踏ませるなという話なので。


 わざわざ塔を四つも用意して、お城はその塔のセキュリティを解除しないと行けない仕様になってるなんて、どう考えたって自分以外は立ち入り禁止状態ではないか。

 ユッカがクークラだとしたら、そもそも城に来る方法をわざわざ明かしたりはしないし、なんだったら塔が城だと思ってる相手の事を安全圏からほくそ笑んで観察する。


 なのでどうしても、あの台座の上の球体をどうにかする事でギミックが解除されるとか、そういう感じじゃないよなぁ……と思うわけで。


 ロゼは未だに球体を睨みつけているけれど、でももうそこにクークラは映し出されてもいないし、ディオスは周囲を観察しているようだった。目隠しをしているけれど。


 アーロスはというと、先程の誰もいない発言に動揺しているらしく周囲の様子がどうだとか、それどころでもなさそうだ。自問自答というか……内にこもっているような気がする。こちらから声をかければ、別に驚かせたわけでもないのにきっと驚いて「な、なんだ……!?」とか言い出しそう。


 なのでこの場で先程までの展開を無視して自由に行動できるのはユッカしかいないのではないか。

 ユッカはそういう風に思っていた。


 一応ロゼの護りの魔法がかけられているから、とりあえずあの球体に近づいても即死はしないはず……と思いながら近づいていく。


 近づこうとして、二歩目でしかしその足は止まった。


「あ、そうだ」


 球体に突如としてまたもやクークラの顔が映し出されたのである。


「セキュリティの解除の仕方を教えてあげるね。アタシってば親切~。

 とりあえず最初にセキュリティの解除コードを起動しないといけないんだけど、それはまぁ、今アタシが映し出されてる球体の下の台座にボタンがあるからそれを押すだけよ。

 そしたら次にもう一つの解除キーを作動させれば終了。簡単でしょ?

 解除キーは解除コードが入力されてからじゃないと作動しないって事は念頭に置いておいてね」


 きゃはっ、と軽やかな笑い声がして、クークラは別に難しい操作じゃないでしょ? なんて言っている。


「あ、でも。解除キーの場所はそこじゃないのよ。折角だからサービスして最初は解除キーがある場所まで案内してあげる。さ、とりあえず解除コードを作動させて」


「裏しかなさそう」


 内心に留めるつもりがぽろっと口から出ていた。

 実際、怪しいか怪しくないかで言えば怪しい。

 怪しさ全開すぎて、親切にありがとう! とか言える奴は多分いないと思えてくる。


(ってか解除コードってそんなボタン押して簡単に作動するものだっけ? パスワード入力みたいなものなんじゃないの? いや、パスワード保存してある状態だからボタン一つで、って事……?

 セキュリティの意味あるそれ?

 いやでも、コード入力してから解除キーボタン……だと思うけど、それを操作するまでに制限時間付き、とかだったら、もし時間内に解除できなきゃまたここに来てボタン押して、って事になるわけで。


 …………いや普通にダルいんだが!?)


 脳内でちょっと想像しただけでとんでもなくダルかった。

 体育の授業で今日は走ってもらいます、とか言われてグラウンドを延々周回させられた時と果たしてどっちがマシだろうか?

 あれもあれで相当ダルかったけど、でも疲れたら途中で走らずダラダラ歩いていてもまぁ、問題はなかった。教師からは一応ちゃんと走れ~とは言われていても、一応移動していたから口調も軽かったし。


 でも今回はきっとそんな緩くやっても許された授業と比べるのは問題があるような状況なわけで。


 解除キーの場所がわからない以上、仮に時間制限があったなら毎回ここまでのぼってこないといけなくなる。

 足がパンパンになって疲れ果てるのが目に見えるな、とユッカは翌日どころか当日中に筋肉痛になりそう……と想像だけでげんなりした。


 ぶっちゃけるとこんなところまで毎回のぼってきたくはない。


 であれば、裏しかなさそうではあっても初回は解除キーの場所まで案内してくれるというのなら。

(案内ってのもどうやってなのかは気になるけど……)


 球体に顔だけが映っているクークラがどうやって別の場所まで案内できるのか。

 それを考えるとやっぱり裏しかないのではと思うのだが、ここで案内を拒んでも時間だけが無駄に消費されるだけ。


(虎穴に入らずんば虎子を得ずって言うしね!)


 そんな風に考えて、ユッカは絶対なんかあるだろと思いながらも言われるままに――


 台座にあるボタンを押した。


「あっ」

 それとロゼの声が上がるのは同時で。


 咄嗟に何やら魔法を発動させたようだが、それよりもユッカが上げた「あっ」という声は。


 ごがぁん! という爆発音に掻き消されたのである。



 ロゼの護りの魔法がなければ死んでいた。魔法があったから生きている。

 でも、では、ディオスやアーロスは!?

 そう思ってユッカは視線を巡らせて二人の姿を探す。

 気付けば塔の最上階は爆発によって崩壊し、瓦礫は下へと落ちていく。瓦礫と一緒にユッカも落下している真っ最中だった。


「ご無事ですか?」

「ディオス!」


 落下中、まるで爆発なんてなかったみたいな態度でディオスがユッカに近づいてくる。

 空中を軽やかにステップでも踏むように優雅に。


 そうして差し出された手を、思わずユッカは掴んでいた。

 ロゼが多分何かの魔法を使ったから落下しているといってもゆっくりで、先に落ちた瓦礫の下敷きになるという事もなくなったし、ディオスも無事である事は確認できた。


「アーロスは?」

「彼ならあちらに」


 ディオスがもう片方の手で指し示した方を見れば、アーロスも無事であるらしかった。

 ユッカたちよりも先に下の方に落ちていて、けれど羽によって速度を緩めているからかこちらも瓦礫に潰されるような事にはなっていなかった。


「無事みたいだね、良かった」


 流石に何かあると思ってはいたけれど、爆発するとまでは想像してなかった。

 一歩違えばユッカのせいで二人が死んでいたかもしれない、と考えるだけでゾッとする。

 恐らくは爆発から身を守る魔法をロゼが使ってくれたから、ユッカのそんな恐ろしい未来は想像だけで済んだのだ。


 ロゼ、ありがと……と小声で言えば、ロゼも大丈夫と返してくれた。


 ユッカが警戒して何もしなかったのなら、その場合ロゼがボタンを押していたに違いないのだ。

 だからこそロゼも事前に魔法をかけていた。何かあったらすぐ発動できるように。


 本来なら落ちたら死んでる高さだが、落下速度がゆっくりだったのもあって着地はなんなくできた。

 その事実に内心で「おぉ……」と驚きなのか感嘆なのかわからない感情が浮かぶも、魔法ってすげーと何度目かの感動を抱く暇もない。


 一階と思しきところから更に下。地下にまでユッカたちは降りていたのだ。


「残りの塔も同じ感じよ。解除キーはこの先。精々がんばりなさい」


 頭上からクークラの声が響く。

 恐らくはあの最上階にあった台座からなのだろう。声はやけに遠かった。

 最上階の床も崩れた時点であの台座も一緒に落ちてきてもおかしくはないはずなのだが、もしかしたら魔法とかで固定されているのかもしれない。

 そう思って見上げてみるも、なんか上の方に小さな黒い点がぽつんとあるようなないような……という感じなのでよくわからなかった。


 地上からこの塔を見た時もそれなりに高さがあると思っていたが、まさか地下まであるとは……と思いながらもユッカたちは解除キーを探す。

 幸いにして……と言っていいかは謎だが、爆発し落下して、最下層で衝突した瓦礫はある程度粉々になっていたからこそ、道が塞がっているという事もなかった。なので移動に関してはそこまでの苦労はなかった。

 地下は地下で迷宮みたいに広がっていたらどうしようかと思ったが、そこまで意地悪ではなかったようで、部屋は一つだけだった。

 頑丈そうな鉄製の扉。

 鍵はかかっていないようで――というか解除コードが作動した事で鍵が開いたのかもしれない――押し開ければギィ、と錆びた音を立てて扉はゆっくりと開いた。


 室内は狭く、そこには最上階にあったのと同じような台座が置かれている。

 違いはその上に浮いている球体が特に輝いたりしていないという点くらいか。


 けれども、その球体の下には最上階にあった台座と同じようにボタンがついている。


「念のため障壁はそのままだよ」

 ロゼの言葉に頷いて、ユッカは再びボタンを押した。

 もしここでも爆発したら、生き埋めになるんじゃないだろうか。

 そう思ったものの、爆発はしなかった。


 ただ、ポン、とどこか無機質な音がして、球体が光る。その光も二秒ほどで消えて――


「これで終わり? てかこんなんがあと三回あるって事? は? わけわかんないんだけど」


 無駄に階段をのぼらされて、最下層まで一気に落下させられて。


 もしかしたらクークラは落下の途中で対処できずに死ぬかもしれない、と思っていたかもしれないが、生きていたからそう告げたのだとは思う。実際声はどこか退屈そうというか、不満そうな感じはあったので。


 それにしたって。


「同じ感じって事はつまり他の塔でも最上階まで行って、そこから落下するって事? 爆発込みで? は?」


 あいつなんなの。

 それが、ユッカの嘘偽りのないクークラに向けての感想だった。

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