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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
一章 道しるべを探す旅

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15/25

ご都合主義であれ



 仮加入だと思っていた旅の仲間がほぼ正式加入したかもしれない件。


 そんなラノベタイトルみたいな事を頭の中で浮かべながら、ユッカは困ったようにロゼを見た。

 自分の肩に乗っているので視界にすぐに入るのはロゼの顔などではなく黒くてふさふさな毛の胴と前足である。


 宿で話し合った時、ついうっかり何度か撫でてしまったが特にお叱りは受けていない……とはいえ、やはり冷静に考えると元は人なのだ。許可もなく勝手に撫でまわすとかこれ、セクハラでは? そう思ったのもあってユッカは極力触りまくらないように気を付けている。いや、触るのはもうどうしようもないかもしれないが、絶対にやってはいけないのは、そう――猫吸いだ。

 これはやったら絶対にアウト。


 つい助けを求めるようにロゼを見てしまうが、見たら見たで触りたくなる衝動に駆られるのでユッカはそっと視線を移動させて、目の前にいるディオスを見た。

 こっちはこっちで胡散臭ぇ~、という気持ちになるのだが。


 目が隠れているとはいえ、それでも全体から漂うイケメンな雰囲気も胡散臭さに一役買ってると思っている。


 ともあれ、そんなやや不審人物に思われそうな相手が当分の間同行すると決めてしまったようなのだ。


 むむむ、と小さく唸りながらユッカも考える。

 正直、うっかりいらん事を口走るかもしれない可能性があるので、事情を知らないディオスが同行するとなると、なんというかユッカ的には冷や冷やものなのだ。

 なのでできる事なら同行は遠慮したい。


 けれども、彼が同行するというのはデメリットだけではない……と思う。

 ディオスは旅をしているという事だし、もしかしたら他の地区についてそれなりに詳しいのではないか。

 ロゼもそれなりに知ってはいるかもしれないが、ディオスはロゼとは別の情報ルートを持っている可能性がある。

 つまりそれは、ユッカにとって必要な五つのアイテムの入手に繋がるのではないか。


 まだディオスに事情を説明していないので何とも言えないが、正直自分たちだけで他の地区で情報を集めるとなると……


(難しいのでは……?)


 そんな風に思える。


 そもそもユッカは別段取り立てて社交的というわけでもない。

 見知らぬ人に声をかけるのは、少しばかりの勇気がいる。


 ここでそんな風にもじもじと声をかけるのを躊躇ってばかりだと帰るという目的に到達するのが遠ざかるとわかっているから、やるしかない、と頭では理解しているのだ。


 できないよ、と泣き言を言うキャラに「できないじゃない、やれ」と凄む強キャラは生憎この場に今いないが、変なところで人見知りを発動させた場合、ユッカはいずれ自分自身にそんな風に発破をかけなければならなくなるかもしれない。そうなった時点というのは恐らく相当追い詰められた状態になっていそうなので、できる事ならそうなる前に他人相手に平然と声をかけられるくらいの度胸は欲しいところだ。


 でも、と思う。


 でも、もし道中ディオスもついてくるのなら。

 情報収集を手伝ってもらえるのなら、自分の負担が少しは軽くなるのでは……?


 ゲームの中ならNPC全員に話しかけるのもそう苦労はしないけれど、じゃあ自分がその立場になれと言われたら無理だ。世界にどんだけの人がいると思ってるんだ。

 勿論自分に関する事だからそりゃあユッカだって頑張る気持ちはあるけれど、ぬるま湯のようなふわふわした平和な世界でのほほんと生きてきただけのユッカに、ゲームの主人公みたいに色んな人に話しかけて情報を集めろ、は敷居が高すぎる。


(それに……情報収集の基本は酒場と相場が決まってるわけで。そんなところに私とロゼが行ってもなんかごっついおっさんにガキはママのおっぱいでも飲んでろよとか言われる典型的な流れになりそうだし……でもそういうところにディオスが行ったら? 流石にこの人にミルクでも飲んでな、とかは言われなさそう……)


 町の中を見る限り、外見年齢と中身が一致してるかもわからない人ばかりなのだが、まぁそれでもやっぱり見た目的にも成人男性がいた方がいいような気がしないでもない。


 異世界云々の部分は省いて、なんかこう……いい感じに説得できないだろうか……?


 なんて。

 都合の良い事を考えていると、


「本気で言ってる? 生憎とボクたちは金になるような事をするつもりはないよ」


 ロゼがにべもなく切り捨てた。


「巡礼の旅というわけでもないでしょう。であれば道中、路銀を稼ぐためにそれなりに仕事をする事もあるのでは?」

「どうだろうね? 仮にそうだとしても一枚噛めるような状況になる可能性は低いと思うけど?」


 ユッカとしてはロゼの態度も理解できる。

 自分がうっかり異世界から来た人間である、と知られる可能性を考えれば、余計な存在は遠ざけておくに限るのだろう。

 わかっている。わかってはいる、のだが……


「ねぇロゼ、この際だからディオスに手伝ってもらうのって駄目なのかな?」

「それは」


 言い淀んだロゼに、なんだか悪い事をしてしまったような気持ちになる。


「私たちの目的に関して、確かにあまり大々的にできない事情があるけれど。

 でも、情報収集だとか、そういうのこれから先全部私とロゼだけでやるにしても、それって相当無茶じゃないかな? って思うわけ」


 ユッカだって自分の事なのだから、全部をロゼに丸投げにするつもりはない。

 そんなつもりがなかったとはいえ、ロゼはユッカを異世界から誘拐したようなものではあるけれど、異世界召喚物の作品の一部にある、召喚した相手を奴隷のように扱ってやろう、なんて考えでやったわけじゃないのはユッカだってわかっているのだ。

 だからこそ、いつまでも自分が被害者であるかのように振舞うつもりはない。

 けれどユッカがそうするつもりがなくたって、ロゼの方で責任を感じている事に関して、ユッカにはどうしようもない。


 責任を果たそうとして抱え込まなくてもいいような部分まで重荷を背負うような事をすれば、いずれどこかで潰れてしまうかもしれない。


 周囲の手助けも必要ないくらい簡単な事であるのならまだしも、ロゼから聞いた話ではユッカにとって必要な五つの材料はそう簡単に手に入るような感じでもなかった。


「……踏み込んでよいものであるのなら、事情をお聞きしても?」


 ユッカの言い分と、ディオスの態度と。


 それら全てをバッサリと切り捨てる事ができなかったロゼは、観念したように言った。


「全部の事情は明かせない。それでもいいというのなら――」




「――スヴェトゥリイならルボワール地区で見かけた覚えがありますね」


 知られたら困る部分を上手く隠して説明したロゼの話を聞いたディオスは、あっさりとユッカたちにとって必要な情報を落とした。


「本当に?」

「えぇ。群れではなかったので今もいるかはわかりませんが、必要なのは羽なのでしょう? であれば巣があった場所などにまだ残されている可能性はあります」


「ルボワール地区か……ここからそう遠くなかったはずだね」

「えぇ、あまりにも遠く離れた地区だと次の目的地とするにも微妙なところですが、ルボワール地区なら問題はないかと。そこで見つけられずとも、何らかの情報を得る事はできるでしょうし」


「じゃあ次の目的地はそこにしようか」

 ロゼの言葉にユッカとしては頷く以外の選択肢など存在していない。

 いつまでもフラワリー地区に残ったところで、ロゼの家はないし宿に泊まり続けるだけでは宿泊料ばかりが消費され続け、それでいて有用な情報を得られるかもわからない。

「うん。そうだね」

 であるのなら、次なる目的地へ移動するべきなのだろう。


 ただ、とユッカは思う。

 きっとこの世界の人にとっては常識レベルの話なのかもしれないが、一つ疑問があったのだ。


 他の地区に行く、っていうのは全然構わないけれど、どうやって行くの? と――


 だがしかしその疑問は案外あっさりと解決する事になる。


 なんにもわかっていないけれど、全然そんな事はありませんよとばかりに表情にも出さずにロゼの示す方角へと移動すれば、町の中にあった神殿へとたどり着いた。


 当たり前のように中へ進むディオスの後ろから、ちょっとまごつきながらもついていけば、到着したのはそれなりの広さの部屋だった。


 壁も床も天井もどこを見ても真っ白な部屋は、一瞬病室を彷彿とさせたが病室よりもっと無機質である。

 そんな部屋の中央には台座のようなものがどんと置かれていた。

 というか、むしろそれしかこの部屋には存在していない。


 台座、とそもそも言っていいのかもわからないやや高めの台は細長く、ユッカの胸元あたりまでの高さがある。

 なんかここにいい感じの球体とか設置したらファンタジー系作品にありがちなオブジェとかになりそうだな……とは口に出さずに、ユッカはこれからどうするのかわからないので、ひとまずディオスがどうするのかを眺める。


 ディオスが台座に手を置くと、室内が少しだけ暗くなり、やや上の方に板状の光がついた。

 映画館のスクリーンみたい、と思いながらそれを見上げれば、ユッカにとっては未知の文字としか思えないものが意思を持っているかのように浮かび、動き始める。


(あ、一応読めるな。言葉が通じて文字は読めないとかいう話もあったから、実は少しばかりそういうの想像してたけど……)


 そんな風に思いながらも、空中に浮かぶ文字はいくつかの地区を示しているようだった。


「あぁ、問題なく行けそうですね」

 ディオスがそう言って、ルボワール地区と記された光に手を伸ばす。

 そうして文字に触れた直後、室内に淡い光が広がった。


(あっ、これ転送装置とかそういう系のやつか~)

 他の地区にも行けるっぽいけど、もしかしてこれフラワリー地区に隣接してるとか、そういうところまでしか無理とかいうやつなのかもしれないな……なんて考えたところで、答えを知るのは少し先になりそうだ。

 恐らくは常識のはずのこれを、ユッカは知らない。

 ソルシエルロスとして旅に出ている、というのを装っているのにそれを知らないとなれば、ディオスに妙な不信感を植え付ける事になりかねないので、ユッカが実際どうなのかを知るのは少なくとも次の宿などでロゼと二人きりになった時である。


(言葉が通じて文字も読めるなら、こっちの世界の一般常識もある程度わかるようになってればよかったのにな~)


 なんて思ったところで、どうしようもない。

 最初からユッカを召喚するつもりであったのならもしかしたら……という希望も抱けたかもしれないが、人違いで呼び出された召喚事故でそこまでを望むのは流石に無理が過ぎるとしか思えないので。

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