10.声
空が橙に染まる頃
文官の代表者たちのお祭りに向けての会議に出席していた空は、予定より早く会議が終わり、ひとり森の中を歩いていた
木々の葉の隙間から所々夕日が射し込むものの、空が歩く道は既にかなり薄暗くなっていた
暫く歩くと、突然、目の前に大きな崖が現れた
崖沿いを暫く進むと、大きな岩が1つ突き出しており、その岩の上面の窪みに水が溜まり、崖の中まで続いている
空は片手をその水に潜らせると、もう片方の手を胸に当て、祈りを唱え始めた
祈りを終えて顔を上げると、崖の向こうから何かが近づいてくる音と共に声がした
「おやおや、久しぶりだねぇ。君は…どっちじゃったか?」
「空であります」
「そうかそうか、よく来たよく来た。1人で来るとたまにしか見ないから分からないね。」
崖の向こうから聞こえる声は、笑いながらそう言った
双子なだけあり、顔立ちや体型は似てはいるが、他の部分では対照的な所が多く、区別が付かないほどではない
しかし、この声の主は、天と空が一緒に居ないと区別ができない事が多い
「無駄話は置いておいて、わざわざ此処まで来たんだから、何か重要な用事でもあるのではないか。」
崖の向こうの声はそう問いた
「お詫び申し上げなくてはならない事がございます。また、このような身でありながら恐縮ですが、助言頂きたく参りました。」
「そうか。話してみよ。」
そう言われると空は、今日起きた一連の出来事を話し始めた
お祭りの準備の為、王の代わりに神殿に入り掃除をしたこと、その時聖剣から蛇が無くなっている事に気づいたこと、そこから今に至るまでの行動を事細かに説明し、本来取り外せるはずの無いものが無くなってしまったことを謝罪した
それを聞いた崖の向こうの声の主、聖剣や天と空がしている指輪に宿り、この国を守る象徴とされている神は答えた
「謝る事ではない。本来聖剣を管理すべきは君の父である王じゃ。君はこの事を彼には話していないのだろう?君が言う通り普通には聖剣から蛇だけを外す事はできぬ。それに恐らく気づいてないじゃろう。それに、聖剣から蛇が消えた事は知っておった。」
「それで、行方を探そうとしてくれておるのか?」
それを聞いた空は、はいと答えると、神はそうかそうかと笑った
「今日はもう暗い。時期に深い夜が来る。今日の所はもう帰りなさい。そして、明日の明るい内に出直しなさい。そしたら既に得ている情報を共有しよう。えーっと、君はどっちじゃったか?」
「空です」
「そうじゃった、そうじゃった。それと明日は天も連れて来なさい。良いかね?」
空はこれに応じ、感謝を伝えるも、何か知っているなら今教えてもらえないかと頼んだが、
「良い子は早く帰って寝なさい。暗くなってからの森は危険だから、夕方以降は入るではない」
と断られてしまったのだった
そして、家に帰った空は、天にもこの一連の出来事を伝えたかったが、まだ天は帰ってきていなかった




