クロエ's DAILY
最後まで読んでいただけると嬉しいです
明日何話か投稿したいです
初っ端から最近のクロエの生活の様子を紹介し、混乱すると思います。すみません、、、
ですが、そののち、異世界に来た経緯や、本編を更新します
ささやかな陽の光でできた木漏れ日を浴びて、ウッドデッキの上に小さく座り、わたしは芝の上の木枯らしを見つめる。
穏やか。秋冷え。暇。
午前の授業の疲れは、お昼を食べた後、小説を読んでいたら、いつのまにか無くなっていた。
午後にやることを指折り数えていると、手元に大きく影が落ちた。あら、と顔を上げる。
目の前に、茶髪で少し日に焼けていて、制服を着崩した男子生徒がいた。みたい。
そして、彼は何かを話し、首を傾げて、こちらに笑いかけた。
わたしは少し悲しげな顔をして、手で話す仕草と、バツをつくった。
彼は少し驚いたのち、理解したようで慌てて悪い、というポーズをとると、手を振って駆けていった。
こういうとき、何もできないのはなんだか申し訳なくなる。
とはいってもたとえ、また耳が聞こえるようになったとしても、彼とわたしでは同じ制服を着ているが「できること」の差は天と地ほどあるから、手助けなんてできないのだけど。
なぜならわたしは、この学園に通う2年目16歳の小柄で平凡な女生徒、のはずなのに、この学園のカフェエリアも、礼儀も知らず、友人はおろか知人もいないからだ。
というか、家族の名前や人数もよく覚えていない。
その代わり、土下座や、和服茶道、スーツの内閣総理大臣、(この身体の前の持ち主が特に驚いた言葉)など独特の文化は覚えている。
つまり、わたし自身は、つい数週間前にこの世界に来て、その過程でパニックになり聴覚が失われている「転生者」だ、ということがこの身体の前と現在の持ち主で了解された。
懐中時計を手に取ると、まだランチタイムの半分を過ぎたところだった。再び暇になるのかしら、と思っていると再び影が落ちた。
そして、隣につやつやとした水色の髪の男子生徒が座ったのがわかった。
「やあ、今日はゆるく巻いているのかな?よく似合っている」
というメモを示すと、同じように自身の髪を少し持ち上げて見せ、笑いかけてきた。
隣に座ると、如実に背の差がわかる。わたしがメモを見やすいように背を曲げ胸の下に下げてくれているし、座るために足は開き曲げているが膝が胸の位置にある。
ここは彼にとっていいランチスペースではないだろう。
わたしはポケットからメモ帳を出すと、横にして指で、つー、となぞる。
そこに浮き出た文字を確認して、彼に見せた。
「ありがとう。ふふ、今流行りの巻き方らしいのよ。」
それから新しいページにしてもうふた文加える。
「わたしも、アンナも気に入っているの。それに、あなたにいい印象を持ってもらえたようで嬉しいわ。」
「あなたも似合うと思うわよ。わたしと同じような明るさに髪質だもの。」
「はは、どうだろうね。僕は君の髪型ならどれでも好きだけどね。でも確かに今日の髪型は特にいいなと思うよ」
そう言うと、彼はポケットから鍵を取り出し、目の前に下げて見せる。
その時、ふわりと風が吹いて彼の最終学年を表すえんじ色のネクタイとわたしの青色のネクタイに当たった。
―――彼はわたしのなかなかに仲が良かった幼なじみらしい
今彼は、わたしにとっては、よく話しかけてくれる一つ上の要は、魔術師一歩手前の大人というイメージだ。
また風が吹いてわたしの前髪とか色素の薄いカールした髪がふわりと上がった。
彼を見上げると、彼の瞳に秋晴れの空が映った。
「これは、僕の家の合鍵。これを君に使って欲しいんだ。」
「君が、来たいと思ったときに来て欲しいと思っていてね。来てくれれば、いつでも、どんな内容でも話し相手になろう。」
「君なりに活用、できるんじゃないかなと思う」
そう言って、彼はわたしにしっかりとその鍵を握らせた。
「ありがとう。大切にするわ」
鍵を受け取りつつ、前の私との仲の良さを実感する。
そろそろランチタイムは終わるかな、と思って時計を確認した後、鞄を持ち、懐中時計を首に下げ、ローファーで芝生を踏み締め、さっと立つと彼の方を見て、またメモを出した。
「またね」
それに、彼はにこやかに頷くことで返事をすると、よっこらしょ、というような口を動きをして立った。
ちょっと思うところがあって、鞄から大きめのハンカチを取り出し、彼の手を取ると、握らせた。
「え。、、、どうしたの、これ?」
「剣を使うでしょう、毎日。足りなくなることはないんでしょうけど、消耗品並みに消費しているようだから、あげる。」
優しい人と接すると、わたしの何かにも貢献されているような気分になる。
そして気分が落ち着くのだ。だから、その人の喜んでいる所を見たいと思った。
先程から慣れないことをしている。その緊張からか逆に心拍数が上がり、ハンカチを握らせる手に力がこもったが、手と手の触れたところから安定した拍動が伝わる。
もう一度彼の目を見ると、色素の薄い瞳が優しそうに細まった。
それにつられて、徐々に心拍数が落ち着いてきた。
わたしは彼に触れていると落ち着くようだ。
「っありがとう。そうだね、週に一度は追加している、し、、
ああ、とにかくありがたい。大切に、使おう」
うん、と頷くと彼が言っていた髪を少しいじったあと、3時限目の魔術演算を学ぶ教室へと向かうため回れ右をして、別れた。
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この世界は今のわたしにとって異世界だからだろうか、生きづらい。
現に、こうしてわたしが教室に向かうため歩いているだけで、
幅の広い廊下の雰囲気が、がらっと変わる。
木の窓枠に、午後の日差しが差し込み、そこを重厚な生地をベースに軽やかなレースが縁取られている制服を着た生徒が授業に向かうため、思い思いに交差していく。
わたしはその中にそっと溶け込みたいが、わたしが、かつ、とローファーの踵を鳴らしただけで、パラパラとこちらに、カラフルな髪の生徒たちは振り向き、冷淡な表情をする。
温度が下がったように感じる。
この季節、案外中より外の方が暖かかったりするものね。
ひとつ、相談したいことが出来てしまったわね、と吐きそうになるため息を、腹式呼吸に変えて、お腹を凹ませるように、口から空気を吐ききってしまう。
そして、ゆっくり鼻から息を吸うと、巻かれた髪がふわ、ふわと揺れた。
わたしからある程度距離をとっている人たちが主に、こちらを見て、何か話しているようだけど、生憎なにも聞こえない。
耳が聞こえなくても、毎日のんびりと過ごしたいので、見なくてもいいような現実から目を逸らすと、窓枠いっぱいに広がる中庭に目を見張る。
一階では半分くらいしか見れない大きな銀杏の木や、赤っぽい木が大小何本か生えていて、どんぐりが何個か、それらの木からタイルで舗装された道に落ちていく。
わたしは、前も、今も、こうした景色が「おきにいり」だったんだろう。
秋、ねぇと感心しながら、経路、いくつかの窓を覗きながら、教室に向かう。
やっぱり、寒い中にいるときこそ、外は暖かそうに見えて、想像が捗るのよね
この時間が実は貴重で、楽しい時間なのかも知れないわね、と思いながら、冬服の制服が楽しみね、とローファーで音を立てながら、歩いていった。
ヒロイン→クロエ•アマリア•オールビー
ヒーロー?→イギー•カーター
です。ちなみに、何かをクロエに尋ねてきた生徒は、
エイダン•キャベンディッシュで、いいところの坊ちゃんです