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 夕刻。学校の授業はこれまで通り問題無く終わった。今のご時世部活動なんて立派なモノはないので、そのまま解散である。他の生徒たちは、別れを惜しむかのように、教室に残っていたが、一部僕のような目的があったり友達がいなかったりする人は、さっさと下校していた。


 


 崩れたアスファルトの上を歩く。道路の舗装がされなくなってまだ数年しか経っていないにも関わらず、車が走るものなら、大きな揺れを引き起こすことは間違いない程に凸凹になっていた。黒を割って生えた雑草がその生命を必死に伸ばしている。


 


 十数年前には、人が離れてばかりだった東北地方だが、今ではそれなりの数が東京から戻ってきているらしい。そんな様子を微塵も感じさせない土地の空き具合や、管理のされてないであろう家が目立つ。


 


 ふと、目に付いた塀の向こうでは、枯れて眼球の迫り出した老人が倒れながらも木の根をかじっていた。周囲を見渡して、こちらを観察するものが何もない事を確認した後に、魔術を行使する。


 


「迫る運命を切り払え『セフィロト・エンブリオ』」


 


 微かな魔法力を飛ばして、老人へとぶつける。死に体の老人は驚いたように目を見開くと、ふるふると震えながらも上体を起こす。その姿を見届けたら、静かに小走りでその場を離れた。


 


 この程度の死は日常茶飯事だ。家や土地にしがみついた人が、誰の手助けも借りられず、どうにか飢えを凌ごうとしたりして、死んでいく。この近辺に他の人は住んでおらず、数キロ離れたところにしか食料を買える場所はない。配給物質を受け取るならば、より一層遠くなる。


 車に乗れなくなった田舎の中の田舎なら、それだけでほとんどの居住者は詰むことになる。それくらい人がいないなら畑や田んぼがあるだろうけど。


 いったいどれだけの人が、この手付かずの廃墟の中に眠っていることだろうか。


 それだけの土地があれば、日本の食料問題であろうが、工業力問題であろうが解決できそうなものだが。いや、足りないのは土地よりも物資だったか。


 残念ながら、政府も多くの人間も、リスク分散などとは考えず、結局より南の大阪や京都へと、首都や住む場所を変えただけに終わっている。東北に来る人もいるものの、時間が経てば交通手段の問題もあって、いずれ止まるだろう。


 死者が少ないのも、弱者が消えただけである。時代が怪人の発生を抑えているものの、人類の復活の兆しはいまだ見えない。


 


 こういう時こそ、魔法少女の力が必要だと思われるだろう。しかし、魔法少女は人類と協力をしないことを決めている。


 まあ、様々な悲劇があったのだ。魔法少女が無償で人類を助けた結果、人類は東京やアメリカ大陸の全て。ユーラシア大陸のほとんどを失うことになったのだ。


 引き金を引いたのは、人類側。先に裏切ったのも人類側。だからこそ、魔法少女は、人類の守護を放棄している。今やっているのは、魔法少女協会の誓いに反しない形での行動だ。別に人類を助けてはいけないという内容はないのだから。


 自分たちの生活を守るために、怪人を倒しているだけ。今のも自分が嫌な気持ちにならないために、僅かに生命力を与えただけである。


 あのまま行動を起こさなければ、老人は近いうちに死ぬだろう。しかし、僕らはそれをわざわざ助けてあげる訳にはいかない。


 あの程度の人や悲劇はどこにでもいるし、それら全てを助けるのは現状不可能で、間違っているからだ。


 


 嫌な気分になりながら、目的の場所近辺まで辿り着く。民家もなくなり、道路すらも太陽から覆い隠すように伸び放題な枝が自然のトンネルを作った空間。


 時が止まったかのように、ここの建造物は形を保ったままだった。錆びたガードレールの向こうには用水路が流れている。魚が泳いでいた。


 柔らかな木漏れ日が道を照らす。人工物と自然の合わさった神秘的な道。その途中に、山へと続く鳥居がポツンと建っている。


 その先は日光すらも届かない深い森になっている石の階段が続いている。風が木の葉をざわつかせて不気味さを引き立てていた。まるで鳥居が人の世と別の世界とを区切っているかのようだ。


 


 少しだけ、暗闇という未知への恐怖に震える。小さく息を吐き、階段へと足を伸ばした。


 


 日が届かない山の中は、冬のような冷たい空気に満ちていた。


 再び魔法少女へと変身する。黒ばかりの姿になり、闇に溶けるように気配が薄くなった気がした。


 


 僕としては、暗闇はあまり好きじゃない。しかし、私としては好きだった。


 変身すると、万能感に包まれる。かつての願いを再現しているのもあるのだろう。気恥ずかしさもあるのだが、やっぱり闇とか大好きなのだ。


 本当に小さい頃にあった感覚を思い出す。無限大の万能感。時間という存在が味方に付いている。それを無意識ながらに知覚していた。幼い頃に。


 あの時は、時間さえかければ何でもできると思っていた。だからこそ、何かを夢中になってできていた気がする。私という魔法少女に宿る感情は、この感覚が元となっている気がした。


 


 変身すれば長い階段もあっという間で、最後の一段を登りきってから、目的地に辿り着いていた事に気付く。


 


「……相変わらず、すごいなぁ」


 


 まるで作り上げられた芸術品のようだ。真っ赤な鳥居の先は、これまでの暗闇とは別の空間が広がっている。ここだけ光が射し込むように木や枝がなくなっており、西日が神社を照らしている。黄金に染まった境内は葉の一つもなく掃き清められており、年季を感じさせる建造物によって、不可侵の領域を思わせる芸術のような場を生み出している。


 まるで本当に神様が住んでいるかのよう。石畳の外を見れば、どこにも足跡はなく、長いこと人が出入りしたような形跡は見当たらない。


 


 それもそうである。まず一般人はこんなところに来ない。いつ怪人に襲われるかも分からないし、人の手入れが入らない自然に、どのような獣がいるかも分からない。


 神社へと入るために、鳥居の前で一礼する。そして、ふわりと浮かび上がって、鳥居の上を通った。


 瞬間。景色が切り替わる。ぐにゃりと視界が歪み、気付くと、大きな道場の入口に立っていた。


 


「おや、珍しいお客が来たものじゃのう」


 


 鈴の音が響く。ふわりと目の前に魔法少女が着地した。


 


 巫女服のような緋色の袴を履いている。上は大きくはだけて平らな胸元が胸骨を晒す。白銀の髪が腰まで纏められずに伸びており、腰から下には雲を思わせるような毛量の尻尾が生えていた。頭上には尖った狐耳が生えている。


 


「レン」


「久しぶりじゃのう、ライゼンターよ」


 


 彼女は魔法少女レン。日本の神社に魔法を張り巡らせて、亜空間に道場を建てて生活している魔法少女である。


 とりあえず気になる部分を指摘する。


 


「また随分と肌を晒してる。服は変わったのに」


「なで肩なのじゃよ。これはイメチェンというものじゃ」


 


 おどけるように返すレン。


 袴も履いているなら、なで肩だろうが着物は着崩れないと思う。これだけ着崩しているのにも関わらず、下品にならないように纏まっているのは、彼女の姿が、妖狐を思わせる神秘的な存在感の美少女だからというのもあるだろう。


 


「最近はどう?」


「ほとんど質問の体を成していない関わりの薄い父親みたいな質問に答えると、最近は調子がいいぞ。新時代組の魔法少女も、ここ最近は強さも数も揃ってきた。妾の手を借りることもなくなったし、面倒な怪人討伐もライゼンターに回されるしのう」


「外には出てる?」


「妾をヒキニートみたいに扱うのはやめるのじゃ!」


 


 レンがため息をついた。彼女は人と接点を持つのがあまり好きじゃないので、こうして魔法少女が接触するか、買い物以外では一切外に出ることがないのだ。そもそも私たちの世代が人とあまり関わりを持ちたがらないのは共通点なのだが。


 


「それで、妾以上に人と関わることのない魔法少女ライゼンター様はどうしてここに来たのじゃ?」


「用もなく来ちゃだめ?」


「面倒くさい彼女みたいな言葉を喋るでない! だいいち、そんなに寂しがりやならライゼンターはもっと頻繁に通うべきじゃ!」


「毎日通うにはちょっと遠い」


「その答えがもう寂しがり屋じゃないのじゃよ。距離や手間、時間と感情を天秤にかけて面倒が勝つのは面倒くさがりじゃ」


 


 レンが顔の前で手を横に振る。その表情はおどけていながらも僅かに楽しさを滲ませていて、久しぶりの仲間との会話を喜んでくれているみたいだ。


 


 ここ数週間で一番会話が弾んでいて、学校生活で受けた心の傷が癒えていく。


 


「本題に戻る。私が正体を隠して通っている学校に魔法少女がいる。コンビで活動していて、期待の新人だと思う。ただ、私が彼女たちの怪人討伐で、近くにいた別の怪人を倒したせいで、実力不足を感じている。だから、何日かしたらレンのところに来ると思う。……どうしたの?」


「いや、お主学生なのか?」


「今年から高校生になった」


「はぁ!? 若っ! 妾と二桁歳離れてるのじゃが!?」


「むしろそんな痴女みたいな格好しているレンが二十歳以上だと思わなかった」


「えぇ〜……? バリバリの現役魔法少女じゃのう。なんなら新時代組よりも若いのか」


「最強の名はいまだ崩れず」


 


 ぶいっ。と二本指を立ててドヤ顔をする。戦争期組の魔法少女は僕が最年少なのは知っている。レンの日頃の会話で学生だというのは分かっていたし、他のメンバーもそれと同じか上だと言うのは聞いていた。


 そういう、魔法少女としての活動が厳しくなってきた人たちは皆引退してしまうのだ。非営利団体だから日々の生活費とか結婚とかを見据えているのだと言っていた。事実かどうかは不明だ。元魔法少女は魔法少女協会にて保護されているので。


 


 僕の肉体はこれ以上成長するかも怪しいので、一生現役のままだろう。


 


「えーと、それで? 同じ高校の新人魔法少女がこっちに来るのか。弟子だというのならそっちで育てれば良いのではないか?」


「私の正体は知られていない」


「秘密主義じゃのう……」


「誓いを守っているだけ」


「そんな誓いは作られてないのじゃ。隠し事ばかりしていると友達を持ちにくいぞ?」


 


 痛いところを突かれてウッとうめき声を出す。その様子を見て、レンが面白いものを見つけたと言わんばかりに、意地悪く笑う。


 


「なんじゃ? あの伝説にして本物の魔法少女と言われた存在が、友達一人すら作れないのか?」


「つ、作れるし! 友達なんかよゆーだし? 今も、隣の席の子に挨拶とかしてるし!」


「……なんか、そこまで行くと哀れじゃのう。そもそも、年齢的には中学校生活をフイにして魔法少女やっていたしの。妾が相談相手になろうぞ」


「…………じゃあ、今度メッセージ送る」


「うむ。そうするといい。ところで」


 


 白銀の魔法少女がいったん言葉を切り、小首をかしげる。


 


「期待の新人という割には、裏で手を回していたみたいじゃがなにかあったのか?」


「ああ、おそらく人を喰った下級怪人がいた。先にただの下級怪人をぶつけて、疲弊したところを襲うつもりだったみたい。普通に会話ができた」


「ふーむ。新人相手なら、仕方がないのかの。妾は過保護だと思うが。ああ、その怪人じゃが、もしかしたら今後はそのような怪人が増えるかもしれん」


 


 レンの言葉に、今度は僕が首をかしげた。


 


「下級怪人でも会話が可能なほどの知性が発達している?」


「国内限定での情報じゃが、生活水準が回復するに連れて、理性的な怪人の報告数が増えてきているみたいじゃの。同時に、群れで行動したり、破壊活動で魔法少女をおびき寄せたりと、知性を感じさせる行動が全体的に増えてきているのじゃ」


「……そういえば、私もこの間怪人に勧誘された。出会った怪人は全て倒しているのに、私の事を知っていたし」


 


 あの怪人は、アメリカ大陸から来た古い怪人なので別枠だろうけど。だけど、あのような成長した怪人がリーダーとなって怪人を率いるならば、あり得るだろう。


 


 しかし、レンの方は別の予想があるようだ。


 


「怪人側での技術革新か、人間側の意識が変わったか……。ライゼンターよ。おぬしは『マズローの欲求五段階説』というのは知っておるか?」


「たしか、自己実現までに五段階の欲求があるってことだっけ?」


「怪人も魔法少女も、本質は同じ魔法により生み出された存在じゃ。魔法とは願いであり、怪人と魔法少女の違いは、その願いの向きが違うだけ……。ここまでは分かっているじゃろう?」


 


 黙って頷きを返す。ここまでは、一般的な知識だ。民間ではただの噂レベルの話だが、魔法少女として魔法に携わる者ならば誰でも知っていることだろう。


 


「では、その願いの向きとはなんなのか。そこに当てはまるのが『マズローの欲求五段階説』になるのじゃ。第一段階は生理的欲求。生きていくために必要な、本能的欲求がここにあたるのじゃ。今までは、ここが満たされていないからこそ、本能的な欲求に基づいた怪人が生まれてきたのだと思われるのじゃ。第二段階は、安全欲求じゃ。身の危険を排除したり、保険をかけたりする部分じゃ。今の世の中には、この安全欲求が不足しておる。だからこそ、怪人はより安全のために、群れを組んだりするのではないか。そう考えておる」


「それなら、怪人になるよりも魔法少女になったほうが安全じゃない?」


「何を言っておる? 妾たちこそが最も危険じゃろうが。最前線に立って戦う立場になるのじゃぞ? 安全欲求とは真逆じゃ。お主のような実力者でもなければ日々命の危険と隣り合わせになるのじゃよ」


 


 レンは、やれやれというように首を横に振った。


 


「第三段階は、社会的欲求。組織から受け入れられたい。自分の居場所がほしいといった欲求がここにあたるのじゃ。この辺りから、魔法少女が現れるようになるのう。現に、本物の魔法少女ライゼンターもまた、友達を作ろうとしておるしの。逆に、強い怪人もこの辺りで発生しがちなのじゃよ。この段階になってくると、個人の願いよりも、複数が同時に叶えたいという願いの形になってくるからのう。現体制の崩壊や転覆を願うような、中級から上級の怪人がこの辺りじゃ。現に、いくつかの国や都市はこのクラスの怪人によって滅ぼされることもある」


 


 確かに、これまでの支配者層を倒すような願いはここから来ている事が多い。東京の滅亡はこの辺りの怪人が現れた事で、崩壊の道を辿っている。


 


「第四段階は承認欲求じゃ。誰かから認められたい。尊敬されたいといった欲求はここから来るのじゃ。魔法少女に最も多い願望がここにあたる。逆に、内的な欲求なので怪人はここに現れないのじゃ。新時代組に最も多いんじゃないかの?」


 


 僕はここに当てはまらないのでなんとも言えないが、確かにこの段階では怪人は発生しないだろう。同時に、魔法少女に変身しても承認欲求は満たせないような気もするが。


 


「最後は、存在欲求じゃの。大まかに言えばあるべき姿になりたい。と考えるのがここにあたるのじゃ。妾も剣の道を歩みたい想いで魔法少女になっておるから、たぶんここにあたるのじゃ!」


 


 レンは自慢げに言った。


 


 まあ、自分自身を他の状況に関わらず変えていこうとする欲求という意味なら、僕もここに入るだろう。戦争期の魔法少女は、特にこの辺りが多いと思われる。


 


「だけど、この欲求段階なら、どうして魔法少女と怪人に分かれるの? 本能的欲求にせよ、何にせよ、自分自身が満たされないと何も変わらないと思うんだけど」


「理由はいろいろあると思うのじゃが、手段を考えた結果、そうなったと思うのじゃ。つまりは、本能的欲求すら満たせない社会状況にある。食料は自分の手にはない。しかし、隣の家にはある。だからといって、自分の手を汚したいとは思わないじゃろう? 困窮してやむなく。など、一般的な倫理観が働くのじゃよ。そうすると、人はこう願うのじゃ『ああ、誰かが隣の家から食べ物を盗んでくれないかな』と。自分が悪者になりたくないから、それを汲み取った魔法が、怪人という形で願いを叶えようとするのじゃよ。ま、肝心の自分自身の救済を願っていないので、怪人は自分で取ったご飯を自分で食べてしまうのじゃがな。面白いことなのじゃ。苦しい時、人は助けられる事を願わず、怒りのような感情を持つとはの」


 


 レンが嘲笑う。彼女は求道者的な立ち位置なので、そういった感情には批判的なのだ。


 


「安定してきた事で、欲求の段階が上がり、怪人が強くなったと」


「皮肉にも、そういうことじゃろうな。こんな状況で安定してきたということは、人類がそれだけ数を減らしたということでもあるし、それでも絶妙なバランスで成り立っている。だからこそ、願わずにはいられないのじゃろう」


 


 レンは、遠くを見上げた。異空間の空は雲一つない蒼天で、吸い込まれるような黒が幾重にも重なった青のベールの向こう側に隠されている。


 


 彼女は夢を見ているかのように、目を輝かせている。


 


「人は、かつて自分たちでその数のバランスを取れなかった。だからこそ、妾は魔法というストレスにすら反応する安易な願望器が現れたと思っておる。不快と不足の欲求に応じて、選別する審判者。求道者には力を。罪人には罰を。……いかんの。誓いを忘れてしまいそうじゃ。こうも安全で暇だと余計な事を考えてしまう。今日はもう終いじゃ。雑念を振り切るために修行をせねばならんからの。話は聞いたから、それなりに目をかけておいてやろう」


 


 シッシと追い払うように手を振るレン。僕は、彼女の考えを否定することもせずに、静かにその場を後にする。


 


「魔法は、たとえ使用者が死んでも残り続けるもの。人類の審判じゃなくて、ただどこかからやってきた無慈悲な力だよ」


 


 小さく呟く。魔法はそんなに都合のいいものじゃない。


 


「アメリカ大陸の人類は滅んでも、いまだに怪人が数多くいる。東京も同じだ。封印されたユーラシア大陸の向こう側ではいまだに終わりのない戦争が続いている。魔法は願いを叶える。人間の果て無き欲望を。人類の意思が統一されなければ、きっと永遠にこの輪廻は途切れる事はない」


 


 平和を望む人がいれば、争いを願う人もいる。その果てに待つのは片方の淘汰ではなく、契約者の根絶だろう。


 魔法少女は、その果て無き戦争を食い止めるために存在しているのだ。


 


 シュバルツドルヒを振るう。空間を切り裂いて現実世界に戻れば、日はすでに沈み、夜空に月が登っていた。


 山の中だというのに、虫の音一つ聞こえてこない。変身を解除せずに、石階段を一歩ずつ降りていく。


 


「ずっと夜が続けばいいのに」


 


 その願いは、虚空へ消えて、どこへも届かなかった。


 


 結局、自分の願いは自分自身の手で掴み取るしかないのだ。

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