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プロローグ
葬儀場から家へと続く仄暗い雪道を、俺は妹と並んで歩いていた。
田舎なので、周囲に人影は一切ない。二人分の足音だけが、規則正しく響いていた。
「そういえばさっき親父から、俺らの家を東京に借りてくれたって電話が掛かってきたんだ」
少しでも雰囲気を良くしようと、努めて明るい声色で喋る。
返事はない。
構うことなく、俺は言葉を続ける。
「今度から都会で一戸建て暮らしだ。大躍進だな?」
強張った表情筋を無理やり動かして、俯いて歩く妹に笑いかけてみる。
やはり返事はない。
――どうしようもないか。
妹を慰めるのは不可能だと悟り、俺もこれ以上は話さない。
代わりに、妹の垂れ下がった右手を取り、そっと握る。
アルビノ特有の真っ白い手は、あまりにも冷たく華奢で、少し力を込めれば砕けてしまいそうだ。
そのまま二人、手を離さずに並んで歩く。
しばらく握っていると、彼女が俺の手をぎゅっと強く握り返してきた。
悴んだ心に、子供の温かい体温が手から伝わり、少しだけ、落ち着いた。