序章
序章
「十人十色」、そんな言葉がある。
人を縛らない言葉、だと考えたことがある。しかし、その言葉に思うこともある。
この言葉を聞いて、前向きに考えられる人、逆に自分を問い詰めてしまう人、様々だと思うのだ。
そして、彼は後者だ。だからこそ、自分が嫌いだと考えてしまう。人に何か言われることよりも、自分が思ったこと、考えたことのほうが自分を苦しめてしまうと、分かっているはずなのに――。
彼はそれでも思う。
そう思えるからこそ、言葉にも、想いにも力があるのだと――。
そんな彼にはここのところ悩んでいることがあった。そして、それについて苦しんでいた。
何故か。
それは、「人は全く同じではない」というところであった。
彼もそんなことは痛いほど分かっていた。分かってはいるのだ。
だが、彼は願う。
分かってはいるんだ、だが、誰か教えてほしい。この状況を打破する方法を。俺と正反対な性格を持った人間――なのかは分からないが、それと四六時中過ごす苦しみを、誰かに理解してもらう方法を。
「なあなあ、さっきから頭抱えてぶつぶつ呟いているけど、大丈夫かー? 悩みがあるなら、このもう一人の俺に話してみろよー? きっと楽になるぜ!」
彼は心の中で叫んでいた。
悩みの種はお前だ!
さらに彼は願う。
ああ、頼む! 誰かこいつを、自称「もう一人の俺」をなんとか引きはがしてくれ!
彼――宗心雪時は、今日も悩む。