JAD-098「盾を貫く矛」
「施設はほかのメンバーに任せる! 私たちは砲台やJAMたちをやるわっ!」
「了解! マーキング続けます!」
なおも続く遠距離砲撃の支援を受けつつ、突撃。
支援自体は当たらなくても、相手の動きが制限されれば上等だ。
すぐに見えてきた相手の砲台に両手のライフルからどんどんと打ち込む。
成果を確認する時間も惜しんで、前に。
実際には、JAMの放つライフルの威力であれば、ほとんどの機械は無力だ。
技術としての矛が、盾に対して強すぎる。
それは、いつの時代も悩みの種だろう。
「レーテっ!」
「わかってるっ! 回避運動っ!」
相手も、自分たちが戦争を始めたことを理解している。
そのことは、反撃から感じ取れた。
実体弾、石の力を使ったエネルギー弾、どちらもが私たちに迫る。
最初は妙に遅く感じ、でもすぐに高速となって近くに着弾する。
けど、混乱しているのかまだまだ散発的なものだ。
「手前の砲台、すべて沈黙。相手戦力への攻撃が続いています」
「このままの調子で……来たっ!」
ジュエリスト同士、JAMを駆る者だからわかる感覚。
練り上げられた石の力が熱線となって迫る。
「反応はルビー!」
「当たらなければ高威力とてっ!」
主にルビーによる炎攻撃は基本的に、強い。
かするだけでも熱はJAMなどの動きを阻害するし、装甲を溶かす。
何より、中にいるパイロットが下手に当たれば蒸し焼きだ。
でもそれは、当たれば、だ。
「雷撃! 撃破より戦闘不能を狙うわっ!」
言いながら、ブースターを吹かして急上昇。
Gに体が悲鳴を上げるが、その分位置取りは完璧だ。
一気に飛び上がり、戦場を見下ろすことになる。
「当たれっ!」
口にする必要がなくても、ついつい口から飛び出る言葉。
右手のライフルから放たれた緑色の光線。
それが当たった場所に、光が走る。
ペリドットの力を使った、雷撃だ。
光線はいうなればマーキング、誘導。
光線を伝うように、雷撃が走る。
「敵JAM、2機沈黙」
「思ったより数が多い……どんだけ機体をため込んでるの……」
敵戦力がいそうな場所へと急降下しつつ、そんなことをぼやく。
固定砲台、車両、一部は歩兵もいる。
だからといって、工場地帯の防衛にしては多い。
(作戦が漏れた? だとしたら、もっといるはず……)
少なくとも、私をはじめとしたJAMの戦力は伝わっていないだろう。
もしそうなら、もっと対応はあったはずだからだ。
「なんにせよ、何かあれば食い破るのみってね」
「レーテ、意外とこういう時に行き当たりばったりですよね」
「臨機応変と言ってちょうだい。それより、相手の増援は……」
言葉が途切れる。
近くにあった砲台には打ち込みつつ、視線は別。
さっきから、背中に妙な感じがゾクゾクする。
おそらく、相手の増援が近くにいる。
私の、私たちの乗るブリリヤントハートは強い機体だ。
それでも、直撃があれば損傷が起きるぐらいには、JAMたちの矛は強力だ。
「反応確認! これは、この前のです!」
「リベンジってわけ? 武装もシンプルになっちゃってまあ……この前とは逆ね」
モニターに映るのは、赤い機体。
武装の修復は間に合わなかったのか、手持ちライフルと、光剣。
こちらのほうが重武装になっているぐらいだ。
「その狙い、乗ってあげるわっ!」
「ええっ!?」
このまま、射撃武装で制圧もできるだろうとは思った。
でも、今回は近接でしとめることを選ぶ。
なんとなく、そう……なんとなくだ。
ライフルを腰に固定し、手にはこちらもASブレード。
「まずはっ!」
ブースターを全開、一気に接近しブレードを振るう。
相手はそれを受け止め……勢いを殺せてないわねっ!
「残念、こっちは出力全部がそこらとは違うのよっ!」
地面に足をつけ、空を飛ぶかのようにブースターを吹かしさらに押し込む。
相手の姿勢が崩れたところで、切り上げ。
「武器だけが攻撃手段と思ったら……っ!」
丸見えの胴体に向け、機体をひねり、さらに足を回転させた。
人間ならありえない、軸で回転するという動きをしてブリリヤントハートの足が吸い込まれる。
つま先付近に、光。石の力を覆わせての特別な蹴りだ。
轟音、そして確かな手ごたえ。
(足なのに手ごたえとは? まあいいか)
衝撃吸収が間に合わなかったのか、相手は起き上がれない。
おそらくコックピット近辺に当たったであろう蹴りが、相手を気絶か何かさせたのだろう。
「じっくり語り合いたいところだけど、立場が違ってしまったわね」
それだけを言い、相手の手足、武装を切り裂く。
コックピットに突き刺すのも不可能ではないけれど、人も立派な資源である。
捕縛は別のメンバーに任せることにし、工場地帯への攻撃に合流することにしたのだった。




