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JAD-096「正義という名の報酬」



「崩壊前の空母、その発掘ですって?」


「ああ。この辺りでは有名な噂でな。戦中に、この地方に派遣されたという巨大空母だ」


 今後の打ち合わせにと、リンダとの会合。

 町は、いつ襲われてもいいようにと警戒態勢に入っているのがわかる。


「そこまで言うということは、相当なものですよね。まさか、アルカディアクラス……?」


─ アルカディアクラス空母、通称動く武装都市


 私も何かの話でしか知らないトンデモ空母……いや、私は見たことがある?

 いつ、どこでというのははっきりしないけど、確かにおぼえがある。


 JAMで競争すらできそうな巨大な甲板、全周を覆う防御フィールド。

 大規模な浄水装置に、野菜プラントも装備。

 工場すら内包した、海上都市がそのまま武装したような代物だったはずだ。


「滞在してる限りは、すべてがそこでそろい、人生の終わりまでを約束する……楽園島」


「さすがに知っているか。そう、それが眠っているという噂が根強い」


「ということは、相手側がそれを手に入れたか、確証を持って進軍を?」


 これまで、なんだかんだと均衡を保っていたのを崩す。

 そのためには、何かきっかけが必要だ。

 十分な力か、その手掛かりを手にするとか、だ。


「実際のところはわからんが、何もないと思わない方がいいだろうな。ようやくというべきか……相手から、攻撃の宣言が来たよ。通信遅延だとさ、笑えるな」


「いつの時代も……まったく。で、どこで稼げる?」


「2つ。1つは都市の奪還。もう1つは、陽動を兼ねた相手工場地帯への奇襲だ」


 テーブルに広げられる簡単な地図。

 そこに示されたターゲットは言葉通り、2つ。


 都市には、今は占領の際の戦力が残されているだろう。

 工場地帯には、当然相応の防衛戦力が。

 狙うのは、工場そのものではなく、その防衛部分だが。


「つまりは、どっちも危険……レーテ。って、もう決めた顔ですね」


「まあね。カタリナにもわかるでしょ。工場地帯に行くわ。報酬は現物でいいの?」


「その方がこちらも楽だ。正義なんて名乗るつもりもないが、あちらの行動は目に余る。何度も、共同で生存域を増やそうと持ち掛けたが、断られる始末だ」


 この地域が、まだ安定して暮らせるからだろうなと思う。

 この前までいたような、開拓地ではそんなことは言ってられない。

 明日、目覚めるかわからない、そんな場所ではなんだって利用しなければ。


「私は構わないわ。カラーダイヤが手に入れば、それでいいの」


「そう都合よく行きますかね?」


「主要工場なら、動力に使ってる可能性は十分にあるな」


 リンダの言葉に、同意のうなずきを返す。

 もちろん、カタリナの心配もその通りなのだけど。


「相手のため込みに、期待しておくわ。それでいつ出るの? 待ってて襲撃されるのもつまらないと思うけど」


「ああ、その通りだ。三日後には仕掛ける。どうだ」


 本音を言うと、新武装を待ってからにしたい。

 でも、それで危ないのも間違いなさそうだ。


「やれるだけはやるわ。それにしても1人のジュエリストに大げさね?」


「君の戦績を見て、侮る奴はもうこの町にいないさ。よろしく頼む」


「ずいぶん、買われましたね、レーテ」


 肩をすくめ、返事。

 一緒に工場地帯に向かう予定の部隊に合流すべく、案内を頼んだ。


 騒がしい街を走り、向かった先で出会ったのは……。


「あら、貴方たち」


「おう、また頼むぜ」


 旧打ち上げ施設の探索を一緒に行った部隊だった。

 多くが顔なじみで、こちらに手を振ってくる。


 今回はJAMを使うようで、結構な数の機体が待機状態だ。


「強く当たって、さっさと離れる。そんな予定だがどうだ?」


「まあ、基本はそうでしょうね。噛みつきに飛んでくる奴は、叩き落とさないとだけど」


 人同士の戦いまで、あと数日。




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