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JAD-095「武装セット一丁」



「まずは、礼を言わせて頂戴」


「仕事だもの、もらえるものはもらっておくわ」


 追撃を警戒しつつ、全速で後退。

 戻ってきた私たちを、リンダたちが仰々しく迎えてくれた。


 どうやら、通信で先に報告はしていたらしい。

 すぐに、上に話が通るようで町は一気に警戒態勢に。


 私は、休息がてら例の酒場にやってきているというわけだ。


「交戦記録はこちらに。一機を除いては、そう大した相手ではないようですけど」


「十分だ。報告にあった通り、ルビーの運用か……」


 実のところ、ルビーをはじめとして火、炎を扱う石はメジャーだ。

 戦力としても、そのほかとしても汎用性の高い力である。


「目だけはとにかく欠かさない方がいいわね。言うまでもないと思うけど、ルビーの遠距離攻撃は……」


「ああ。厄介な話だ。ただ壊れるのと違い、燃えるというのは被害が大きい」


 話によると、今回向かうはずだった町は、隣国との領土にほど近いらしい。

 前々から、きな臭くはあったらしいのだ。


 防衛のための物資が、輸送されるはずだった……と。


「それで? 稼げそうなの?」


「そうだな。そうしてくれると助かる」


 多くは言わず、奪還作戦、その先の行動をこの町、地域の軍は行うのか?

 そして、それに傭兵は募るのかを聞く。


 しっかりとしたうなずきと返答が、その答えだ。


「なら、JAMの改良をしたいの。工房を紹介してくれる?」


「予定作業はこんな感じです」


「どれ……うむ、腕はいいが、少しばかりロマンを求める知り合いがいる。ちょうどいい」


 少しばかり不安が残るけど、下手なところは紹介してこないだろう。

 場所を聞き、さっそく向かうことにする。

 できればゆっくり休みたいところだけど、依頼だけはしておいて損はなさそうだ。


 トラックにブリリヤントハートをのせ、向かった先は……。


(ああ、確かにロマンを求めてるかも……)


「煙突……じゃないんですか、あれ!?」


「違うみたいね。これは楽しみになってきたわ」


 敷地に乗りつけ、降りた私たちの前に、建物。

 そして、その正面にあるのは天に向かって伸びる大きな筒状の機械。

 先端はちゃんと風雨対策に覆われているけど……。


「JAM1機分はあろうかという長物なんて、久しぶりに見たわ!」


「強い石の反応があるから出てみれば……誰じゃい、お前さんたち」


 見上げる私たちに、声がかかる。

 その主は、ゴーグルをつけた髭の生えたおじいちゃん。

 結構な歳っぽいけど、足腰はしっかりしている。


「軍のリンダから紹介でね。JAMをいじってほしいのだけど」


「いじるだぁ? どうせ使いこなしていないだ……け。なんと……」


「おじいさん、そのゴーグル……色々見えてますね」


 突然、ブリリヤントハートに駆け寄るおじいちゃん。

 その視線の動きに、カタリナがつっこみ、おじいちゃんも笑みで応える。


「おうさ。歳をとると、こうでもせんと石の力が見にくくてなあ。ここまでまぶしいのは久しぶりじゃ。発掘品、それも最上じゃな」


「わかるなら話は早いわね。ひとまずは手数の増加、できればライフルや背面武装なんかを追加したいの」


 ピタリとおじいちゃんは動きを止め、振り返った。

 その顔には、これ以上ないほどの、笑顔。


「こちらからお願いしたいぐらいじゃ。やらせてもらおう。仕様なんかはすぐに打ち合わせよう。おーい、弟子ども! 大仕事じゃ。集まれいぃ!」


「なんですか、親方。また気に入らない相手を追い返したんじゃ……違いそうですね。すぐ用意します!」


 呼びかけに答えるように、数名の作業員が集まり、話はとんとん拍子に進んだ。

 必要な機能を告げ、前金を処理したころには、夕食の時間だった。


 そばにあるというなじみの店に連れていかれ、そこでは大騒ぎ。

 どうやら、おじいちゃんは仕事をあまり受けないことで有名らしい。

 その分、技術は確かなようで発掘品の動力コアも何度も扱ったことがあるとか。


「お前さんなら、動力コアを引っこ抜いてくることもできそうじゃな。もし持ってきたら、高く買うぞい」


「できたら、ね。それより改良は頼むわよ。それが鍵なんだから」


「任せておけい。こんな時が来ることを願って、いくつも武装は作ってあるんじゃ。それで全体のバランスを確認するとしよう」


 腕がいいのは間違いないことを、私はすぐに知ることになる。

 注文した翌日には、既存装備の取り付けが完了する。

 これの運用テストを経て、専用武装として重武装化を果たすのが狙いだ。


 追加としては長物のライフルが2、取り回しやすい短銃が3、投擲用がたくさん。

 背面武装として、拡散前提の砲と、折り畳み式の長距離砲が1、だ。

 すべて既存装備を調整して取り付けただけだけど、まずは十分。


 これの運用データからできる専用武装が楽しみだ。


「これはやりすぎでは?……レーテ?」


「取り回しの角度もよく考えられてる……おじいちゃん、私、これで狩ってくるわね」


「おうよ、狩ってこい!」


 微妙な言葉の違いも、今回は一致。

 あきれたようなカタリナには悪いけど、素晴らしい。


 燃費を気にする必要はあるけれど、これで私たちは、もっと戦える。

 ブリリヤントハートを見上げ、何度もうなずく私だった。



 

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