JAD-093「刃対刃」
「長距離武装を優先して狙う!」
「了解。タンク型は残5、背面武装ありの2脚は4!」
思った以上に数がいる。
先行しての偵察といった役割にしては、大所帯だ。
(これだけの戦力、いったいどうして……)
考えるのはあとにして、トラックを狙えそうな、長距離武装を優先して撃破するべく打ち込む。
半分ぐらいは狙い通り武装に直撃するが、残りは回避されてしまった。
「外した? いえ、こっちを警戒してるか……」
「動力が発掘品クラスだと、察したんでしょうね」
カタリナの言うように、ブリリヤントハートの動力源は特別なものだ。
今の時代には、生産できない……貴重品。
瞬間、視界に赤が増える。
「なるほどね……その程度で止められるとでも!」
迫る炎の弾丸たち。
相手の動力は、ルビーだと推測できる。
ほとんどが炎を使ってくるのを見ると、統一されているのがわかる。
『トラックは下がったぞ!』
「了解! 武器を先に潰すわ。捕獲するか、追い返すか、どうする!?」
『そんな余裕が!? よし、数機でいい、残してくれ』
返事を聞くや否や、姿勢を低くしてブースターを吹かす。
左右に機体を揺らし、攻撃を回避しながら接近。
「まずは一機!」
自分に来るとは思っていなかったのか、接近した相手が慌てるのが手に取るようにわかる。
そりゃあ、前に数機味方がいる状況でつっこまれるとは思わないでしょうね。
タンク型の、上半身である人型がバタつくのが見えた。
「上半身はさよならっ!」
力の感じ方からして、コックピットに動力は下側。
上は作戦ごとに交換を想定してると思う。
そこを、両断して切り離す。
「周囲から反応! そんな、味方ごと!?」
「なら、飛ぶ!」
覚悟が決まっているのか、お互いにそこまで仲良くないのか。
私が一機を戦力外にしたのを見ると、すぐに砲撃がやってきた。
飛び上がった足元で、赤く炎が燃え上がる。
人が一人、おそらく……死んだ。
「人殺しと非難するつもりはないけれど、これはどうなのかしらね」
「全体的にこっちが有利のようですよ」
上空に飛び上がった私たちに、散発的に攻撃が来る。
ジャンプはともかく、飛ぶJAMというのは、かなり珍しいから仕方ないだろう。
どうやら、先に相手の指揮官クラスをつぶせたらしく、相手の連携が甘い。
臨機応変というより、行き当たりばったりだ。
「今のうちに、タンク型を沈黙させる!」
連続で目標をロックオンし、弾丸を打ち込んでいく。
そうして動きを止めたところで、急降下。
先ほどのように、武装部分を切り裂いていく。
合間合間に、周囲への援護を行うことも忘れない。
「このままなら、もうすぐ終わりね」
「はい、私たちがいたのが相手の不運でしたね」
まったくもって其の通り、そう言おうとして反応に気が付いた。
戦場から離れた場所、そこにまだ一機反応が!
「3時方向、岩をばらまくわ。そこっ!」
「JAMの反応が一機! こちらの岩が迎撃されます!」
1つ1つは果物ほどであろう岩が、無数に弾丸として放たれる。
それらは、もう光線とでもいうべき赤い炎に飲まれ、溶けていく。
「切り札のお出まし、か。一体、どういうことかしら……」
たかが普通の物資輸送。
そんな相手に、ここまでの戦力が伏せられていた?
あるいは……。
「レーテより各機。もしかしたら、輸送先はもう奪われてるのかも」
『なんだと? いや、確かに……そのJAMは任せても良いか?』
「ええ、今のうちに全機撤退してちょうだい。行動を練り直す必要があるわ」
視線を相手JAMがいる方向から外さず、しんがりを引き受けるべく答えた。
幸いにもというべくか、相手の追撃は来ない。
「さて……お手並み拝見!」
相手側の生き残っている戦力も、なぜか後退を開始。
私は、警戒を強めながら機体を前に進めるのだった。




