JAD-083「痕跡を求めて」
「ゲストよりウルフへ。異常なし」
『ウルフ了解。ゲストはそのまま警戒を続けてくれ』
町を出てから数日。平和なものだった。
私たちのを含めてトラック4台とJAMという編成だ。
出発の際にれっきとした軍としての活動だと告げられ、服装が統一したものに戻っていたのには驚いた。
どうやらあの店ではほぼプライベートだったらしい。
戦闘人員以外の、おそらく支援人員も一緒だ。
今も、私が警戒している後ろで何やら探っている。
「あれは、何かの塔でしょうか?」
「かもしれないわね。山を削って建築したのか、山に埋もれたのかはわからないけれど」
車で行ける限界まで進み、それからはJAMと歩兵だ。
先行しての偵察を買って出て、今に至る。
『よし、また進んでくれ』
「了解。今のところは異常は……待って、少し先、反応あり」
わずかに石の反応がある。
私だけにしか感じられない奴だろうけど、少しずつ進み……何かの残骸だ。
「詳細不明だけど、石の力を使う何かの残骸があるわ」
『何? よし、回収に向かわせる』
ほかの方面には特に何もないようで、すぐに人員がやってきた。
慎重に進む彼らが残骸を調べるのを見つつ、要塞跡がある方向へのカメラを向ける。
「少し前まで寝てたのが起きたか、あるいは……」
「映像を確認する限り、相当腐食してますよ。最近のじゃなさそうです」
モニターの隅に拡大される画像は、確かにひどいものだ。
一体いつぐらいの、と考えたところでまた反応。
「まだいくつかありそうよ。どうするの?」
『できるだけ回収はしたいが、要塞跡のほうが先だな。確認だけはして、問題なさそうなら進もう』
返事を返し、進む。
そうして見えてきたのは、確かに要塞跡といえるものだ。
「形はありますね……」
「そうね。だいぶ埋まってるけど」
施設全体が、半分ほど地面に埋まっている。
そのうえ、土砂が多くを覆った状態だ。
そんな中で、山肌の何かだけが目立っている。
なるほど、これなら望遠鏡なんかでどこからか見えなくもない。
妙に高い何かなんかは、見やすいだろう。
『見えていたのはあの塔らしきもので間違いないか……周辺警戒。生きているか確かめる』
事前の打ち合わせ通り、JAMが2機、前に出る。
私は協力者だけど部外者ってことで、その役目からは免除された。
代わりと言っちゃなんだけど、警戒はしっかりしよう。
(この感じだといきなり砲塔が出てきてバキュン、はないと思うけど)
幸いというべきか、特に変化はなく、2機は要塞跡にとりついた。
「問題なさそうね。探索を?」
『もう少し周囲の確認もしたら、だな』
聞こえる意見に、賛同を返しつつ自分も前に。
「メテオブレイカーとは違いそうですね」
「そうね……でもこう、何か近いような、うーん?」
ぱっとわからないぐらいには、朽ちてきている姿。
建物、施設としての形があるだけすごいのだが……。
「まあ、気にしても仕方ないか。さすがに動きが良いわね」
視線の先では、開けた場所に拠点となるテントを複数設置し始めていた。
あっという間に固定小銃等が用意され、確かな拠点と化す。
『本格的な調査は明日からだが、軽く潜ってみたい。どうだ?』
「了解。すぐ準備するわ」
警戒していないわけではないけど、こういう場所に潜るのは好きだ。
未知とも違う、新たな出会い。
どこか懐かしさすら感じることもあるのが、旧文明の施設への探索だ。
「今回は晶石銃も持っていくわ。下手に威力のある実体弾を使うとまずそうだし……」
「私も爆薬はやめておきますね」
コックピット内に持ち込んだ武装から、いつかの採取施設にあった銃を手に。
腰にはスターエンゲージソードとハンドガン。
まあ、ちょっとばかり普通じゃないけど今さらだ。
念のためにブリリヤントハートはロックをかけて、抜け出す。
信用してないわけじゃないけど、ちゃんとね。
「お待たせ」
「なあに、今来たところだ。では、エスコートさせてもらおうか」
いかつい顔のわりにというと失礼だけど、ジョークもうまいらしい。
くすっと笑いつつ、屈強な軍人たちと一緒に、要塞跡へと向かう。




