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JAD-082「軍人=私兵」



「紹介しよう。私の仲間であり、同僚だ」


「同僚? ええっと、個性的ね?」


「うははは! 聞いたか? 新鮮な反応だな!」


 言葉を選んだつもりだけど、それが逆にウケたみたい。

 というのも、紹介された相手は軍人というよりは、荒くれ者といえる風貌なのだ。


 着古したジャケットや、派手な髪色。

 ギンギラと自己主張するアクセサリー等だ。


「ふむ。少しはらしくしろ、と言ってはいるのだがな。改めて、この地域の軍人であり、主要企業エストックの私兵でもある仲間たちだ」


「企業……私兵?」


「文明崩壊以前から、企業の力は強かったのよ。警備の戦力が、小国の軍事力を超えるぐらいにはね」


 国は、税収がないと立ち行かない。

 主な税収元となる企業が、力をつけていくのは自然なこと。

 そしていつしか、その立場は独特のものになっていく。


 企業の戦力が守るから軍人はいらない、という派閥。

 兼任しようか、と提案する派閥。


 そんな不思議な出来事が、各地で発生したという。


「よく知ってるじゃないか。私たちは軍人でありつつも、営利を追求する企業の手でもあるわけだ」


「こんな世の中だものね。その方が合理的だわ。ライフレーテ・ロマブナン、レーテって呼んで」


 高さのある椅子に座り、向き合う。

 しっかり座れる椅子より、こっちを選んだけど正解だったみたい。


 いざというときに動きやすいほうに座ることで、警戒は緩めていないぞと伝わったようだ。


「いいぜ、リンダ姐さん。一緒にやれそうだ」


「隊長か部長と呼べ。さて、仕事のほうだが……旧時代の要塞跡が見つかってな。探索と物資回収に行く話がある」


「要塞跡? 見込みはありそうなの?」


「そっちは問題ねえ。なにせ、記録が残ってる」


 男の1人がタブレットをたたき、笑う。

 つまりは、この星の人間側の要塞跡、ということだろうか。


 要塞といわれると、浮かぶのはメテオブレイカー。

 確かそこそこの数は生産されたはずなのだ。


「私たちはJAMに乗ってますけど、生身での突入が必要なんですね?」


「外周はそれでいいだろうが、中の探索はどうしてもな。その点、旅してきたお前たちなら経験ありと踏んだが、どうだ?」


「ええ、やるわ」


 うなずけば、ならば今日から仲間だといわんばかりに手招きされる。

 テーブルに広げられる地図には無数の書き込み。


「目的地は……ここだ。少し前に地震があってな。それで反応が見つかったってわけだ」


「それまで休眠していたか、土に埋まっていてわからなかったんですね? なるほど……」


「レーテ、だったな。お前ならどう動く?」


 背後からかけられる声。

 壁にもたれかかりながら、グラスを傾けていた1人だ。


 そちらは向かず、少し思案する。


「一番の問題は、生きた施設かどうかよね。耐久があるか、動きの良いJAMで反応を探って、周りの安全を確保、必要なら砲塔の排除とかかしらね。それから、司令部を制圧、警備が残っていればそれを無力化しながら……かしら?」


「ああ、俺はそれで問題ない」


「お宝を探るのはまず家主を縛り上げてから、か」


 物騒な物言いだけど、確かではある。

 昔の技術を少しでも回収し、復元できればそれだけ人類は復活する。


 ミュータントを駆逐する……のは難しくても、積極的な共存といった感じのことは目指せるに違いない。


「決まりだな。明後日の朝より、出発しよう。出張手当がはした金になるぐらい、稼ごうじゃないか」


 リンダの声が決まりとなり、男たちがあわただしく動き出す。

 話を聞くと、勤め人でもあるから引継ぎはしないとな、とのこと。


「見た目のわりにというと失礼だけど、ちゃんとしてるのね」


「なあに、いつものことだ。JAMの補給はすんでるのか?」


「はい。一通りは。あまり消耗していませんし」


 リンダ自身は特に準備はいらないようで、そのまま話を続けるのだった。



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