JAD-081「戦力として」
人は、たくましい。
これまでいろんな場所を訪れたけど、いつも感じることだ。
技術の差なんかはあれど、なんだかんだと生活しているのだから。
土地を切り開き、食べ物を作り、守る。
そして、増える。
「いつか、また世界に人間があふれるのかしらね」
「どうなんでしょうね。まずは交易の確立からでしょうけど」
色々と歩いて回ると、店もあるのがわかる。
銃砲店、雑貨、食料、衣服、そのほかだ。
こういう光景を見ていると、どこか楽しい気分になる。
ゲームの中でも、同じような光景は何度も味わったのだ。
「服もあるし……機械の生産もどこかでしていそうだわ。そういう依頼、あるといいわね」
「レーテってお裁縫できましたっけ? 私も一応できますけど」
「できるんじゃない? 不得意なものがないように、たぶん設計されてると思うし」
そんな自虐的なセリフを口にすると、少しカタリナが不機嫌になるのがわかる。
確実に人間じゃない、作られた自分と違って私は人間なのだから、というところだ。
それは、口にしないけれどとてもうれしい感情である。
同時に、カタリナも人間臭いことこの上ない、そう再認識する。
「もう、レーテったら」
「ごめんごめん。あら? あの人……」
宿に戻る途中、案内をしてくれた女性軍人、リンダを発見。
どこかと無線らしきもので会話中だ。
「ん、お前たちか。散歩か? 町を好きになってくれると嬉しいところだな」
「まだこれから、ね。でも、好きになれそうだわ」
「お金も儲かると、もっといいんですけどね」
軽口を言い合えば、笑いも生まれる。
話を聞くと、遭遇したサソリもどきに関して話し合いをしていたらしい。
この町にとっては初遭遇ではないようだけど、私たちにとっては未知だ。
「下手な攻撃は、効かなそうね?」
「ああ、そうだ。正面から打ち込んでも、小銃程度ならはじいてしまう。側面や後ろ、あるいはひっくり返すか」
「かなり金属質な表皮に見えましたね」
試したわけじゃないけれど、石の力ならなんとかなりそうではある。
逆に、普通の人、武器では苦戦するわけだ。
「中身はそうでもないんでな。爆発、衝撃に弱い。それこそ、大岩をぶつけるとかで十分だ。問題は、数だな。いつの間にか増えたりしてる」
「集団で動くタイプ……厄介ね」
まだ地上を歩いてるだけだからいいけど、羽虫やハチの類のように、飛ばれると厄介だ。
前に、ボルト1本ぐらい大きなハチの集団に遭遇した時はつらかった。
JAMの装甲は貫けないとわかっていても、怖かった記憶がある。
「流用できる部位は多い。金属が抽出できるからな。ああ、そうだ。報酬は明日の朝にはそろっていると思うぞ」
「ええ、わかったわ。いい仕事があればまた紹介してちょうだい」
「レーテ、そうそううまい話はないと思いますよ」
カタリナのつっこみに、わかってるとばかりに肩をすくめる。
こういうのは、お約束というやつだ。
と、思ったのだが。
「お前たちは生身でもやれそうだな? それなら、1つないわけじゃないが」
「話だけは聞かせてもらおうかしら」
「そうか? なら……夕食には遅いな。行きつけの店がある、そこで軽く飲もう」
お互いに子供ではない、となれば誘われれば断る理由もない。
彼女についていくと、思ったよりしっかりしたビルが見えてくる。
その1階に、店はあるようだ。
「マスター、来たぞ」
「よう、今日は早いじゃないか」
行きつけというのは本当なんだろう。
やり取りを聞きながら店に入り、周囲を見渡す。
「レーテ」
「ええ、わかってる」
店に入る前から感じていたもの。
店内にいる人間、そのほとんどがジュエリストだと、私に訴えていた。




