JAD-078「機械群の間引き」
「イエローダイヤ、アパタイトを設定」
「了解……貴石変換完了」
コックピット内部が独特の光に満ちていく。
どの石を使っても、何かしらの色で光るのだけど、いつも落ち着く。
私の居場所が、ここだと教えてくれるかのようだった。
「回収は別の人員がやる、と。合理的ではあるわね」
「ですね。集団で必ずというのも、安全性を高めます」
トラックから立ち上がり、町を覆う壁の出入り口へと向かう。
すでに待機している面々と合流。
燃料である石英、水晶の残量も問題ない。
むしろ、以前より燃費はよくなってるような気がする。
「よく見たら、機体性能に変化が出てるわね。そっちでもわかる?」
「いつの間に……先日のドラゴン戦ですか。運用効率が最適化されたと」
前も思ったけど、いかにもゲーム的だ。
やはり、そうしたほうが頑張りやすいから、だろうか?
数字で見えると、目標にしやすくはあると感じる。
そのうえ、前より複座、つまりはカタリナも一緒に乗ることが楽にできる。
気のせいか、コックピット内部が外から見たより広いような?
『では出発するぞ』
「了解。ついていくわ」
そうこうしてる間に、時間になった様子。
掛け声が響くのを聞きながら、集団で出発だ。
町を出てすぐ、川沿いの道を行く。
何度も行き来があるからか、草も少なく、移動しやすい。
「砲撃タイプが7割ほどですね」
「弾の補充とかどうしてるのかしら……ああ、規格が同じ、か」
前を進む機体たち。
その構える武器には、見覚えがある。
獲物を解体していた工場に無数に並んでいた奴らだ。
(流用前提で、最悪の場合、現地で確保、なんでしょうね)
たくましいといえばその通りだ。
人間の底力のようなものを感じる。
抜け目がない、ともいえるだろうか?
「少し、川の汚染レベルが上がってるようですね。おそらく、工場あたりの排水でしょうけど」
「まあ、でしょうね。対策は立ててると思うけど、今は生き残る方が優先ってところかしら」
今後問題になりそうだけど、私が指摘することでもないように思う。
今は、明日を確実にするのが人間の目的になっている。
そこに、このままでは50年先に問題が、なんて言ってもね。
移動自体は順調に、どんどん道を行く。
獣も近寄ってくることはなく、遠くに気配を感じるのみだ。
しばらくは平和な時間が続いた。
「現場はどのぐらいなの?」
『そこまで遠くはない。むしろ、あの丘を越えたらすぐさ』
丘……あれか。ずいぶん、近い。
まだ半日もたっていないことを考えると、近すぎる。
間引きしないといけないほどの、機械軍団がいるにしては……ふむ?
疑問を口にする前に、ちょうどその丘に差し掛かる。
ここからは少し慎重に行くようで、速度が落ちた。
『見えたら、横っ面をたたく感じで好きに動いてくれ。ただ、物は残せよ』
「? 了解。動けなくするだけってことね」
その意味では予想通りな答え。
アパタイトをサブにしたのは、この前のドラゴン相手への攻撃のことがあるからだ。
威力より、数を優先した攻撃スタイル。
『そら、始まりだ!』
「目標確認、この数……すごい……」
丘を越えた私たちの目に飛び込んできたもの。
それは、向かって右側から左へと、乱雑に進む機械群だった。
明らかに、町ではない方向に向かっている。
すぐにその一部に、着弾。
「向きが変わった! そういうことっ!」
「入力された命令は、特定地点への進軍、それと攻撃を受けた際の反撃、ですか」
機械群が、果たして人間の物なのか、そうじゃない物なのか。
それはわからないけれど、私たちが横取りしているのは間違いない。
ほかの機体のように飛び込みつつ、周囲を掃討していく。
足を撃ち、砲塔を砕き、戦闘能力を奪う。
ライフルの先から、無数の光が放たれ、面制圧とばかりだ。
「追加が来ますよ!」
「一気にしかける! 当たらないでよ!」
『やっちまえ!』
海の方向からやってくる新たな集団。
すでに砲塔はこちらを向いているのを確認し、ライフルを向ける。
少しのチャージの後、青白い弾が無数の散弾となって襲い掛かる。
あちこちに着弾し、生きているけれど崩れ落ちる機械たち。
どれだけ量産機なのか、すぐにそれらは動かなくなった。
『よーし、いいぞ! 回収が入る。その間頼むぜ! やれそうなら追加はぶっ壊していい』
「そっちのほうが気楽よ、ええ」
動力を切り替え、機体を移動させる。
同じ役目を負った形の機体たちと一緒に、機械群の増援を迎え撃つためだ。
「レーダーに反応。来ます!」
「まるで鴨撃ちね……鴨はいないだろうけど」
浮かんだ言葉をつぶやきながら、こちらにやってくる機械群を打ち砕いていく。
今度は倒すために放たれた閃光が、跡形もなく溶かしていくのが見える。
そこに着弾する攻撃たち。
回収が終わるまで、そのやり取りは続くのだった。




