JAD-075「振るう力」
「弾幕! 距離を取って、サブをさっきのに切り替える!」
「了解っ!」
ドラゴンからすると、こちらは羽虫……は言いすぎか。
せいぜい、子猫のようなものだろう。
でも、意外と小動物相手に戦うのは、困難なのだ。
「目をもらう! 拡散……ショット!」
構えさせたライフルから、まばゆい弾丸がまき散らされる。
撃墜できるほどの威力はないだろうけど、命中率は抜群だ。
新手のドラゴンが叫ぶのを聞きながら、空中で距離を取る。
一瞬の浮遊感ののち、石を施設で手に入れたアパタイトに切り替え。
「貴石変換完了!」
「施設丸ごと維持してた動力源、その体で味わいなさいっ!」
叫びながら、力をつなげていく。
純粋な輝きのダイヤの力に、ネオン感のある青い光が混ざり合う。
それはブリリヤントハートの装甲から漏れ、周囲を怪しく照らしていると思う。
「幻惑の揺らぎ……ファントムレイっ!」
頭に浮かぶ言葉とともに、力が放たれる。
一見すると、速度の全然ない青白い光の弾丸。
しかし、すぐにすべてがドラゴンに襲い掛かる。
まっすぐ、カーブして、下から、上から。
私が制御せずとも、相手の回避行動をつぶすように弾丸が襲い掛かったのだ。
「レーテっ! あんまり効いてない感じですけど!?」
「ふふん。これからよこれからっ!」
心配そうなカタリナの雰囲気が変わっていくのがわかる。
こちらは空を飛んだまま、回避行動をとっていない。
その必要が、ないからだ。
ライフルの先から、延々と青白い弾丸が放たれている。
そう、いつしか私たちとドラゴンの間には、青白い弾丸が無数に飛び交っている。
「一発一発は大したことなくてもねっ! どこまで耐えられるかしら!」
この場所にいても、音が聞こえてきそうなほどの光景。
新手のドラゴンの全身に、弾丸はぶつかり、その役目を果たす。
徐々に姿勢を崩し、ついに地上に降り立つ……いや、落ちたドラゴン。
さらに躊躇せず、弾丸をライフルから放ち続ける。
「そろそろ相手に反撃させるから、そうしたら……ね」
「こんなやり方、どこで覚えたんですか?」
どこで、か。
それは私にもよくわからない。
ゲームだったのかもしれないし、実際に昔に、実践したのかもしれない。
「さあってね? ほらっ、とっさに反撃してきた!」
弾幕を緩めると、怒りが全身で感じられるドラゴンが吠える。
そのまま放たれたブレスが、上空に空振り。
後先考えない大技が、当たるはずもないのだ。
「落ちなさいっ!」
急降下から、さらに前方に突進。
こちらに気が付いても、もう遅い。
抜き放ったブレードには、青白い刃。
それはそのままドラゴンの首に襲い掛かり、はねる。
「ふう……さすがに疲れるわね」
「お疲れ様です。あちらのドラゴンはどうしますか?」
「どうするもねえ……私の用事は終わったし、さよならでいいでしょ」
もともといた手負いのドラゴンは、こちらをうかがうだけでそれ以上は動かない。
これ以上、どうこうする気持ちもしぼんでしまった以上、ここで終わりだ。
倒したドラゴンから、力を感じる部位、爪や牙などだけは切り取る。
それ以外はそこに置き去りという形で、機体を下がらせる。
「ばたばたしましたけど、ひとまずの用件はすみましたかね?」
「そうね……ひとまずは、ね」
結局、大きな進展はないともいえる。
自分たちのルーツはわかったけれど、今の生き方に直接は影響はない。
少しばかり、すっきりした気持ちで挑める、ぐらいかな?
「とりあえず、次のダイヤを探して……旅は続けましょうか」
「わかりました! 進路はどうします?」
追いかけてくる様子の無いドラゴンを少し思いつつ、地図を見る。
一度戻ってもいいけれど、どうせならば……。
「残ってる軍、その統治してる地方に行ってみましょうか」
新たな何かが待っていることを期待して、進む。




