JAD-071「生きているということ」
「先手必勝ってやつよねっ!!」
トラックを離れた場所に隠し、動力はダイヤ、そして先日手に入れたイエローダイヤ。
出力重視、火力全振り、からめ手なし、だ。
一気に飛翔し、小山の上に座り込むドラゴンに向け、ライフルを構える。
「ダイヤの閃光……ジェーマレイ!」
当たった山自体を溶かしきるぐらいの覚悟で、一撃を放った。
対するドラゴンは反応……した!?
ビルが転がるかのような、異様な光景が目に入る。
周囲の山肌を砕くかのように、ドラゴンが転がったのだ。
「うっそでしょ!?」
「どうやら、あっちも私たちを感知してたみたいですね」
私自身は、石の力、鉱脈、そういったものをなんとなく感じることができる。
普段は燃料でもある石英や水晶の採掘に役立つし、レーダー代わりにもなる。
なるほど、この力は私だけのものではなかったわけだ。
案外、私もああいう生き物を参考に、デザインされたのかもしれない。
「まさか、あんな巨体が転がるように回避するなんて……」
「本能的というより、なんだか知性を感じますね」
「それこそ、まさかよ」
あるいは、何度もこうしてJAMと戦ったことがあるのかも、しれない。
真横からドラゴンだけを狙う攻撃が外れ、下手に斜めに打ち込めない私。
対するドラゴンは、翼を大きく開きながらこちらを威嚇している。
「飛ばない……飛べない? どっちかしら」
「わかりませんね。どうします?」
どうするも何も、ここで撤退はない。
そのためにここまで来たのだし、どうにか……。
とはいえ、ドラゴンを倒すのが目的ではないのがポイントだ。
なんなら逃げてくれるのが一番なんだけど。
「ちょっといやがらせしましょ」
私は、射撃を選んだ。
相手も不可能ではないけど、効率は良くなさそう。
威力を抑えた閃光が伸び、相手は回避か火球で応戦となった。
石の力がこもっているのか、閃光と火球はぶつかると衝撃を産み、相殺されている。
「こっちは避けてこっちは相殺する……んん? 何かあるのかしら」
「後ろに行かせたくないって感じですよね」
何度も試すうち、ドラゴンがあえてその場にとどまる箇所を発見する。
カタリナの言うように、何か後ろに……もしかして。
ドラゴンも、文明崩壊後に生き残っている生き物だ。
生き物は、どうつながっていくか?
子孫を残し、命をつないでいく。
「再サーチ。あの成体の後ろに、幼体がいない?」
「ええ? あっ、確かに重なっててわかりにくいですけど、弱いのが反応あります!」
私のほうでも、モニターに投影された反応を確認。
相手も石の力を感じることができる状態だ。
私が銃口を動かすたびに、それを感じるのだろう。
「どうしようかしらねえ……」
「レーテ、その……」
カタリナの顔が少し曇るのが見える。
今まで、獣やミュータントを狩ってきたのは間違いない。
ただ、必要もないのに狩りつくすのはどうか、つまりはそういうことだ。
試しに全然違う方を撃つと、じっと身じろぎせずこちらを見ている。
我慢するだけの頭はある、ということか。
「作戦変更。追いやるだけにするわ」
成功するかは別にして、試してみるだけ試すことにする。
徐々に近づきながら、攻撃を外し続ける。
そうして、地形を探査。
幸いというべきか、目的地であろう洞窟はドラゴンの守りたい相手とは別の場所。
距離を取りつつ、洞窟へと近づく。
ちらりと、ドラゴンの後ろにある岩陰に、小さな影が見えた。
あれがドラゴンの幼体、子供か。
「来ないならこれ以上はやらないわ。伝わるかはわからないけど」
最悪、洞窟内部にブレスめいたものを放たれてもなんとか防げると思う。
さすがに、山を崩してくるようなことはないと思うし、ね。
「入り口の開放を確認。勝手に開きましたよ?」
「私のことがわかってて、まだ生きてるってこと? まったく、昔の文明ってやつは!」
文句を言いつつ、機体を洞窟に滑り込ませた。
出てきたときと同じく、大きな洞窟。
ついさっきまではフタがされていた場所が、ぽっかりと開いている。
そして、私たちが入ると同時に、フタが閉まってしまう。
「招かれているのか、そういう仕組みなのか……さて」
気持ちを切り替えて、中を進む。




