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JAD-070「覇者」


 この星における、覇者とはどんな存在だろうか?

 文明崩壊前の力を維持している人間?

 山に座れるような、巨大なミュータント?


「人類の生存領域は、確実に広がってるのよね」


「画像を見る限り、そうみたいですね。兵器工場が意外と残ってるようで……」


 目的地である私の生まれ故郷、目覚めた場所。

 あと半日もすればたどり着けそうなタイミングの野営。


 改めて、現場写真を確かめていて思ったことだった。

 宇宙からの飛来物、隕石を打ち砕く兵器、メテオブレイカー。

 データ取得のための衛星はまだ生きており、それらから得られた地上の写真。


 自然に飲まれた土地も多いけれど、なんだかんだ人類は生き延び、繫栄している。

 あえて回避してるけど、組織だった軍が残り、かろうじて国を保っている場所も。

 そして、おそらくミュータントであろう生き物たちの繁栄も、また。


「巨大生物対武器を持った人間、なんて物語の中だけだと思ってたわ。私自身が、JAMを操作してるから何言ってるんだかって感じだけど」


「あははは……私も、レーテに目覚めさせてもらって、旅をするまでデータでしか知りませんでしたよ」


 笑いながら、焚火に照らされる彼女は人間そのもの。

 何度も思うことだけど、彼女は人間だと思う。

 本人は否定するし、体はいわゆる人間のものではないけれど。


 私のためにも、人間であってほしいな、そう思うのだ。


「データといえば、あの空飛ぶトカゲ、ドラゴンはどうやって生きてるのかしら。データ的に、肉食よね?」


「うーん、食べることもできる、が正しいんじゃないかなと。少数だけ生み出されただけならともかく、今の時代にも生存してるんです」


 つい、とカタリナの指先に力が集まり、光が投影される。

 自分の性能を把握した彼女は、こうして石の力を引き出すぐらいはできるようになったのだ。

 私にも、やってやれないことはないことだけど。


 そこに浮かぶ上がるのは、目撃したドラゴンたちの大きさと、必要なエネルギー。

 ざっくりしたものだけど、かなりのものだと思う。

 なにせ、海にいるのではなく、地上、あるいは空を飛ぶのだ。


 必要なエネルギーは膨大なものになる……はずだ。


「そうよね。水中なら、ある程度巨体を維持できるでしょうけど……地上ではね」


「半分ぐらいは、石の力を恒常的に使ってるんだと思います。鳥のように自力では飛翔していません。いうなれば、生身のJAMです」


「なるほど……生身の、か。そう考えると確かに」


 あまりやりたくないけれど、実は獣やミュータントの部位はJAMの部品とすることができる。

 たいていは、一時的なものですぐに崩壊してしまうのだけど。


 力ある相手の、牙や骨といったものならば……どうだろうか。


「なんにせよ、集団相手には難しいですよ。相手の攻撃は、JAM相当となれば……あたれば大変です」


「よーっく覚えておくわ」


 そんな言葉で会話が終わり、夜明けとともに進む私たち。

 さくっと見つけて、さくっと潜る。


 その、はずだったのだけど……。



「望遠映像確認、ドラゴンですね」


「ええ、ここからでもわかるわ」


 推定、私の生まれ故郷。

 そんな施設があるはずの岩山に、巨大な動く影。


 翼ある巨体、ドラゴンだ。

 赤茶色の体躯は山に溶け込むかのよう。


 周囲には木々が限られており、ずいぶんと殺風景だ。

 陽光に、時折輝いているのが見え、まるで彫刻のようである。

 思い出したように、周囲を確認しているのは……なんだろうか?


「どこか行くのを待ちますか?」


「それでまた戻ってきたら問題よね」


 もうすぐ森が途切れるところに隠れたまま、様子見中。

 太陽に照らされて、巨体が輝いている。


 おおよそ、ブリリヤントハートの倍……あるかどうかか。

 噛み砕いているのは……岩!?


「やっぱり肉食だけじゃないですね。あるいは、体に石をため込んでるのかも」


「体に悪そうだけどねえ。あ、見て。怪我、してない?」


 映像を拡大させると、それがはっきりとわかる。

 爪や体のあちこちに、怪我をしている。


 近くに強い相手がいるのならば、あの場所に悠々とは休んでられない。

 四つ足といった感じで、空を飛ぶ以外に走るのも得意そうだ。


「ということは、あれは勝者か、逃げてきたということですね」


「どちらにしても、今だわ」


 覚悟を、決めた。

 万全の未知にぶつかるよりは、よさそうだ。


「獣は手負いが危険ともデータにあります。気を付けていきましょう」


「ええ、まったくだわ」


 トラックをそのまま隠し、機体へ。

 入念に準備をしたうえで、一気に飛翔させるのだった。


 狙うは、地上の覇者。


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