JAD-069「何もないということが示すもの」
アンドロイドであるカタリナが眠っていた施設。
残念ながらというべきか、同型は残っていなかった。
そんな施設の地下には、研究所兼倉庫のような場所があったのだけど……。
「一晩ですっきり片付いてしまってるわね」
「どこで処分をしてるのか気になるところですね」
地下には、開発途中で放棄された形であろう存在と、テストをしていたであろうJAMもどきがあった。
結果的に攻撃を受け、沈黙させた。
一晩たってから再度の探索……というところで残骸が残っていない現場に戻ってきたのだ。
偉大なるは掃除ロボ、というところか。
メンテナンスも機能に含まれているに違いない。
その割に、壊れたものを直すことは含まれていなさそうといびつな感じ。
「何かと争っていたから、そのあたりが混乱した状態だったのかしらね?」
まだ照明も生きており、昔の文明、その技術力を垣間見た気がする。
おそらく、研究内容からして石から力を引き出す動力代わりの何かがいる。
「動力源を探ってみる? ちょっと見た目よろしくない気がするから、お勧めしないけど」
「持ち運べそうにないですから、いいですよ別に。ほかに何かないか探索しましょう」
実際、施設を維持するとなると相当なものだ。
さすがに、メテオブレイカーほどではないとは思うけどね。
もう攻撃してくる相手はいないだろうとは思いつつ、警戒は崩さない。
扉を1つ1つ開いていくが……ちょっとがっかりだ。
「ほとんど何も残ってないわね」
「片付てしまってますけど、何かと争ってた感じですよね。そのせいでしょうか」
「たぶんね……こんな場所に、銃器があるんだもの」
おおよそ、研究用とは思えない、歩兵用の銃器。
弾丸もおそらく探せばあるだろうけど、すでに所持している分で十分だ。
結局、カタリナのパワーアップにつながるようなものも見つからない。
イベントがほとんどない、みたいな感じで肩透かしだ。
「一番の問題は、人間のいた痕跡がないことよね。もう何百年も前だし、掃除されてしまったのかしら」
掃除ロボが骨まで掃除する、というのはちょっと想像したくはない。
でも、死体、骨といったものがこの場所にふさわしいものではないのも確かだ。
きっと、埋葬の余裕もなかっただろうし……風化でもしたのかな?
「行きましょうか、レーテ。貴女の目覚めた土地に」
「……そうね」
細々とした使えそうな雑貨を集め、回収していく。
それ以外は、特にめぼしいものもないようだ。
少しばかりの落胆を胸に、地上へ。
扉をくぐり、さあ登ろうというところで振り返らせる。
「レーテ?」
「ううん。さよならって言っておこうと思って」
なんだかんだ、カタリナが産まれたのはおそらくここ。
色々と思うところはあるけれど、ここがなければ出会いもなかった。
その出会いに、感謝とお別れだ。
「じゃあ私も、今から向かう場所であいさつしないとですね」
「そうね、そうしてもらおうかしら」
地上に上がる間、そんなことで笑いあう。
施設を出てみると、トラック周りに動く影。
「っ! なんだ……」
鹿のような、名前のわからない四本足の獣だった。
トラックを止めたあたりは彼らの餌場だったようだ。
「夜も、近くにいましたよ。襲ってくる奴じゃなさそうなので気にしてませんでしたけど」
「自然自体は、回復してきてるのね……行きましょ」
驚かせることに謝りつつ、機体を荷台に。
メテオブレイカーからもらった衛星画像を確認し、次の目的地へ。
そう、私の目覚めた場所があるだろう土地へだ。
残念なことに、私自身は生身の人間に近い。
何かというと、記憶と地図がはっきり照らし合わせができないのだ。
「大体この辺だと思うんだけどね……行ってみればわかるか!」
「森が少しで、ほかは荒野だったのでしょう? だったらきっと……」
ちらりと、カタリナの眠っていた施設に視線をやりながら移動を始める。
トラックが走れそうな場所を探りながらの移動は、時間がかかるのだ。
「そう願うわ……。できれば安全に探索はしたいけど」
なんとなく、そう……本当になんとなくだけど、それは無理そうだと何かが告げてくるのだった。




