JAD-068「使えるものは使う」
「人造で、石の力を引き出す人形の研究。それがこの施設の目的だったようです」
「なるほどね……これは実際に力が引き出せるかどうかのテストベースだったってことか」
こちらの攻撃により、沈黙したJAMもどきたち。
パイロット相当の相手も、オイルのような何かで少々グロい姿だ。
使えるものがないか、確認していくのも少し気が引ける姿。
これらと、上階にあったものを考えると、カタリナぐらいのが完成形だったのかな?
「レーテ、使えるものは使ってください。それが彼らの……いいえ、私たちのためです」
「そう……じゃあそうするわ」
うなずきなおし、探索を再開。
ここはぎりぎりまで何かと戦っていたのか、物資にばらつきがあった。
不似合いな銃器たちは、保存の対象外だったのか錆びたり朽ち果てている。
もともとの施設にあったものは、そうでもないのだけど。
(その割には、きれいなのよね……壊れた破片も落ちてないのはなぜなのかしら?)
生じた疑問は、すぐに氷解する。
壁際にあったコンテナみたいな箱から、何かが複数出てきた。
思わず機体にライフルをかまえさせ……。
「敵!?……なんだ、掃除屋か……」
「これが施設内を掃除、維持していたんですね」
大きさは片手の長さぐらい。
平たい、円柱状の機械だ。
アームを複数備えており、それでごみを拾ったり、修理をしたりする。
今も、JAMもどきの足元で破片なんかを集め始めた。
踏みつぶさないように注意しないとだ。
「このコンテナの中身はっと……あっ!?」
「珍しいですね、操作ミスですか?」
「違うのよ、このコンテナが最初は妙に軽かったのに、重量が急に……んん?」
壁際の棚に置かれていたコンテナたち。
その1つをブリリヤントハートに持たせたところ、その重量の変化に対応できず落としたのだ。
幸い、コンテナの中身はどうにもならなそうな部品群だったのだけど……。
「この棚、重量軽減の床材があるのでは?」
「確かに、隅に石を入れる箱もあるわね」
大きさ的には15メートルほどの棚、その上に敷かれたマットのようなもの。
色々確認した結果、石を動力源として上に乗ったものを浮かせるものだとわかる。
正確には、ある程度以上の重量だと浮くことはできず、軽減だけになりそうだけど。
「そうね、トラックの荷台に敷いて、移動を楽にしましょう」
「賛成です!」
そうと決まれば話は早い。
ほかにも探したいけど、まずはということで棚からマットをはがす。
素早く地上に戻り、トラックから荷物を下ろしてマットを敷く。
そして荷台の物を戻した時には、いい時間になっていた。
獣やミュータントの襲撃に備え、コックピット内で仮眠をとることに。
「何か貴女の仲間に関するものを持っていけるといいのだけど」
「どうなんでしょう。私と同型はいないほうが安全だと思いますよ……」
言われ、記憶にあるゲーム世界でも似たような話が合ったのを思い出す。
いわゆる、ライバルというやつだ。
こんな世界で、そんな相手と出会ったら……まさに死闘だ。
幸い、今のところはそういう相手の話は聞かない。
この世界で目覚めて、もう何年もたっているけど……1人もだ。
逆に、私だけが生き残ったのかもしれない。
「それもそうかしらね……。私の生まれ故郷に、変なのがあったりして」
「行ってみないとわかりませんけど、何かありそうですよね」
2人で狭いコックピットで笑いあう。
モニターからは、星空。
地上に光が少なくなったせいか、何かの記憶より無数のといえるような星たち。
瞬きを見ていると、自然と眠くなるのを感じる。
「明日は夜明け前に動き出すわ」
「了解です。夜の見張りは任せてください」
それこそ、JAMや大型ミュータントに襲われなければなんとかなる。
そんな安心感の中、人間らしく眠るのだった。




