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JAD-066「人によりそう」


 広い空間に、何か事件が起きたのだと感じさせる崩壊した機械類。

 ずっと時間が止まったような光景が不気味ですらある。

 施設が維持されているのに、これらは修復や維持をされなかったんだろうか?


 まだ生きている端末から情報を探り、出てきたのは……。


「人造的な制御者の生産、あるいは制御者のサポート……」


「私の役目は、やってたことと同じだったんですね」


 どこか納得した表情のカタリナ。

 もやもやしていたものが、すっきりしたようだ。


「別に役目だからやってくれてたとは思わないわ。いうなれば同じ時間の迷子なのだし」


「レーテならそう言ってくれるかなって、少し思ってました」


 そっと手を握れば、握り返してくる。

 ほんのり暖かいその手。


(この反応が作られたもの? そうは思えないわ)


 本物かどうかわからない記憶でも、人間っぽいものと、人間と同様とでは違うものだ。

 今のカタリナは、体が違うだけで人間と同じ、そう私は感じるのだ。


「本当は、私にも戦う力があればいいんですけど」


「オペレータでも十分役立ってるけどね? でも何かあるかしら……」


 端末をなおも操作し、情報を探る。

 男女別の素体で精神面の安定を図る? これは関係ないわね。


 彼女たち本来の設計を考えると……あ、あったわ。


「これなんかどうかしら。石の力を引き出す制御者に、同調する力だって」


「同調……気になりますね」


 言葉通りなら、私とそうして石の力をより引き出すといったところか。

 同調の条件は……んんん?


「対象の遺伝子を接種、解析せよとあるわね」


「遺伝子、ですか。あれですかね、血でもなめれば?」


「かしらね? あとで試してみましょ」


 そのほかにも何か、と探ってみるが今のところは見つからない。

 カタリナとJAM、両方の記憶領域にデータをコピーできそうなので実施する。

 その間、私は室内を探索することにした。


「カタリナがデータをコピーしてる間、何もないとも限らないし、少し見てくるわ」


「わかりました。そんなにかからないとは思いますよ」


 うなずき、小銃を構えなおす。

 トーチ代わりに光剣を使う必要は今のところ、なさそうだ。


「こっちはコンテナ……電子式ロッカー……テーブル類……うーん、展示会場?」


 ざっくり見て回ったところ、ここは研究施設というよりは、見せる場所。

 脇の扉の向こうに施設があるかもしれないけど、この空間は違う。


 無事だったころは、完成したものを展示、引き渡しするための場所、ではないだろうか?


「ということは、こっちに……」


 壁際にある扉、最初に来たときは気が付かなかった場所。

 ホコリ1つないその場所は、手をかざすようなパネルだけがある。


「ダメもとで……よし」


 かすかな音を立て、扉が動く音がする。

 入口と同じく、私の体そのものがカギのようだ。


 念のために脇にどき、銃を構えつつ様子をうかがう。


(突然出てくる何かはなし……)


 次に、拾っておいた残骸を放り込む。

 硬い音を立てて、転がるだけの音。


「センサー的なものでの射撃もなし、か」


 ゆっくりと距離を取りつつ、扉の中をうかがう位置に移動。

 ライトで照らすと……そこには様々な機械があった。


 持ち出すにも、微妙な機械群。

 おそらく、ここ専用だからだろう。


「展示会場の、モニタールーム……?」


 ここから、広い空間の制御なんかをしてるんだろうか?

 応急処置なども想定されているのか、壁際にはいくつかのコンテナと、資材。


「なんで水晶球があるのかしら?」


 理由はわからないけど、ありがたい。

 形を保っている袋へと適当に拾い集め、カタリナのもとへ。


 ちょうどコピーが終わったところのようで、彼女も周囲を警戒していた。


「おかえりなさい」


「まあまあ、ね。探ってみましょうか」


「あ、じゃあ早速試してみたいです」


 何を、とは言わなくてもわかる。

 そっと私の手を握ったカタリナが集中するそぶりを見せると、変化が生じた。


 私から何かが移動する感覚。

 正確には、私の流れを読み取ろうとする感覚だ。


「レーテの力、感じます……こうっ!」


「おおー……!」


 私がたまにそうするように、カタリナの手が天井に伸び、光の玉が出る。

 それは照明となり、もともと明るい室内に光を放った。


「やりました!」


「ええ、これなら色々手が打てるわね」


 これでもっと役に立てます、なんていうカタリナを促しつつ、探索を再開する。




 

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