表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/278

JAD-063「別れは再会の約束」



「星の破片かぁ……ご苦労さん。俺たちじゃ、往復に結構かかる距離だったみたいだな」


「まあね。旅をするのに、便利な能力よ。燃費も悪くないし」


 戻ってきた私たちは、隕石の正体は隠したまま、回収した岩石のうち有用そうなのを引き渡した。

 もちろん、有料ということで色々と引き換えだ。


 JAMの燃料にもなる石英や水晶の結晶に、保存食諸々。


「それにしても、あんなにこっちに有利な交換でよかったんですか?」


「お嬢ちゃんも正直だね。なあに、こっちもいい取引ができた。あれなら、JAMを1機か2機増やせそうだ」


 内部の金属部分を除いても、隕石破片は宇宙からのものに変わりない。

 それは、JAMに使われるジェネレータ、その殻に使えるようなのだ。


「弾薬や銃も数がようやくそろってきたからなあ。開拓先を広げる日が来たのさ」


「応援だけはしてるわ。私は反対方向に行く予定だから参加できないけど」


 こういった出会いは、焚火を一晩共にするようなもの。

 こだわりすぎず、あっさりしすぎず。


(まるで、ゲームで共闘してるような……気分)


 手作り感あふれるお酒を祝い代わりに差し出され、それを飲む。

 クセが強いなとは思いつつ、悪い気分ではない。


「東や南か……一応、こっから先には開拓が入った記録はない。何があるかわからんからな、気をつけろよ」


「忠告感謝するわ。さて、機体の調子でも見てこようかしら」


「お供しますよ。ごちそうさまでした」


 町についたままで放っておいたので、荷物を下ろした以外はそのままだ。

 男に手を振り、体のほてりを感じつつ機体とトラックのもとへ。


「こうしてみると、結構汚れたわね……」


「森を抜けて、戦闘もしましたからねえ」


 傷はほぼないけど、見た目が少しよろしくない。

 かといって、ここで宝石と星の力で洗車ならぬJAM洗いは少し、ね。

 目立っちゃうし、水浸しにするのは迷惑かもしれない。


「トラックはどこかで預けて、機体だけで移動がいいのかしらね。そのためには、バックパックとか必須だけど」


「戦闘時にどうするか、ですよね。データにだけはある四次元ストレージがあればいいんですが」


「あったわねえ、そんなの。せいぜいコンテナ1つぐらいだって聞いてるわよ? それでもまあ、十分か」


 ゲームといえば、お約束の1つ。

 持ち物とかの重量と容積の問題を解決する設定。

 メテオブレイカーの記録からも実在はしたようだけど……。


「現存してるかどうか、よねえ」


「まったくですね。案外、どこかの洞窟に施設ごとあるかもしれませんよ」


 笑いながら言うカタリナに、私も笑いを返す。

 こういう冗談が言えるのは、彼女ならではだろう。


 ひとまず、搭乗口周辺の掃除だけはしておく。

 そうこうしてるうちにいい時間になったので、宿代わりの家で就寝だ。


「お姉ちゃん、じゅえりすとってやつなんでしょ? お話聞かせて!」


「こら、お疲れなのよ」


「少しなら大丈夫。ありがとう。そうね……いろんな場所に旅をしたわ……」


 厄介になる家で、子供に捕まったのは予想外だったけど。

 余分なことを考えることなく、時間は過ぎ、結局その子と一緒に寝ることになる。


 ぐっすりと眠り、朝はその子の寝返りで起こされるまでがセットだった。




「またね!」


「ええ、また」


 元気な子供は、それだけで貴重だと思う。

 未来が決まっていない、可能性の塊。


 まあ、私だって未来はまだまだわからないのだけど。


「さて、挨拶はして出発を……あれ?」


「人が何人もいますね」


 機体のもとに向かうと、人だかりではないけど、人がいる。

 梯子とかを使って……洗ってくれているようだ。


「よう、もう起きたのか」


「ぐっすり眠れたわ。これは?」


 見ての通りさ、と言われてしまう。

 なんでも、世話になったから、だそうだ。


「こちらは仕事みたいなものなのに、ありがとうございます」


「なあに、このぐらいはさせてもらいたいね。いろいろ助かったよ」


「開拓の無事を、祈ってるわ」


 しっかりと握手して、別れの合図だ。

 機体をトラックに乗せ、運転席に乗り込む。


 気が付けば、ほかにも見送りの人が増えていた。


「じゃあな、お前さんたちの旅路に、希望があることを」


「ありがとう。頑張ってね」


 走り出したトラック。

 ミラーで見た人々は、仲間にそうするように、手を振ってくれていた。


「いい気分ですね、レーテ」


「ええ、悪くない……悪くないわ」


 自然と笑みが浮かぶのを感じながら、道なき道を進み始める。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ