JAD-062「星の開拓者」
考えてみれば、何もかもがおかしいのだ。
なぜ、地上の人間や生き物は途中から星の力を使えるようになったのか。
動力源となる宝石は、それまでにもあったし、動物だって一緒。
なのに、隕石の後から急になのだ。
(答えは1つ……その隕石のせい!)
「予想よりっ速いっ!」
「威力計算……あれは当たるとマズイですよっ!」
「いわれずともっ!」
同じようなものは、ゲームでも散々食らってきた。
耳障りな警告音からすぐに、熱線。
回避した私の代わりに、背後の木々が燃えていく。
「ひっかきまわす!」
まずは相手の状況を詳細に確認、だ。
周囲を回転しつつ、時折浮いて角度を取る。
結果、見事なまでに追尾してくる状態だ。
上に飛べば上に、右から回り込めばそちらに、と。
「砲塔が全周にあるタイプじゃない……4……いや、5かな? よし!」
射撃のインターバルの間に、相手の行動パターン、砲塔を確認した。
こちらから打ち込む? できるけど……ああいうの、意外と対策されてるのよね。
「これ、そのまま打ち込むとどかんってやつですか?」
「わかってきたじゃない! そういうことよ。誰だかわからない、遠い遠い、宇宙人は性格悪いわね!」
私の勝手な想像だけど、隕石は宇宙人の資源探査機、あるいは威力偵察機なんじゃないだろうか?
本格的に向かう予定はないけれど、いい場所があれば、程度のもの。
長い長いスパンで見ると、現地には途中から手のついていない資源な星がある、となるわけだ。
まあ、相手の星が力を解析したり、反撃したりすることは想定していないわけもない。
それだけできるなら、攻め込んでお互いに痛い目を見る必要はない、みたいな?
もしかしたら、送ってきた当人たちはもういない可能性もあるのだけど……。
(こっちとしちゃ、いい迷惑よね!)
隕石破片の大きさは大体、車両1台分といったところ。
これがたくさん集まっているのが、本来の隕石だ。
「少しずつ、削り取る!」
まず回避、そして踏み込む。若干横に動いて次を誘う。
そしてまた戻り、前に。
ジグザグに進み、間合いを詰めていく。
「もう少し……ていっ!」
もうすぐ間合い、というところで相手に変化。
切り札のように砲塔が生え……打ち出された熱線をこちらも光の刃で断ち切る。
こうなるだろうと、思っていた。
「反撃してるだけじゃ、ねっ!」
「敵エネルギー反応、減少!」
予想した通り、この相手はたくさんあるユニットみたいなものの1つでしかない。
本来は、集団でまとめて運用されるものだ。
だから、1つ1つで考えると構造が、もろい。
ちょっとした攻撃で、核を包むものに影響が出るぐらいには。
「よし、次!」
同じ手順で、じわじわと相手を削り続ける。
結果、相手の射撃は弱く、間隔も長くなる。
沈黙するのは、すぐだった。
「ほかに反応はなし。終わりましたかね」
「みたいね。これは解体してしまうしかないわねえ……」
湖の底で拾ったものと比べると、強すぎる。
高度な自己判断をするタイプではないと思うけど、何があるかわからない。
町に預けるのは、色々フラグがたちそうであった。
「隕石が落ちていた、ってことで嘘でもなく真実でもない感じで行きましょうか」
「わかりました。必要な分を回収して、ラックに仕舞っておきますね」
動力源となる宝石、隕石に見えた岩石の裏側にある金属部分を一部回収。
機体のあちこちにある保管スペースにつっこむことに。
宝石は……緑に輝いていた。
(トルマリン? ダイオプサイトかしら……)
落ち着いたら鑑定することにしつつ、その場を去る。
今からなら、日暮れごろには戻れるかもしれない。
回収を終え、また滑るようにして移動を始める。
幸い、途中で出会う獣たちは興奮はしているが、暴れまわる感じではない。
こちらに向かってきた獣は撃退しつつ、お土産として持ち帰る。
「レーテ、かつてはああいうのがたくさんいたんですかね? データにはそこまでは」
「んー、だと思う、かなあ? 自分たちが開発したってしたいのよ、人間はね」
宇宙由来の超技術です、とは言いにくかったんだろうな。
実際、まだよくわかってないことのほうが多いわけで……。
そんなことを考えたり、雑談しながらの帰路は順調。
「町は……無事みたいですね」
「よかった……」
町並みが無事であることに、安堵する私だった。




