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JAD-060「宴の夜」


 目の前で、焚火が燃え上がっている。

 炎を囲む男たちは、みな一様に笑顔だ。


 どこかで調理をしているのだろう女たちも、活気に満ちているように見える。


「よう。食ってるか」


「ええ、旅路だとこうはいかないから」


 水源の調査を終え、水位の変動、その原因をはっきりさせてきた私。

 記録映像を見てもらい、町からは後日人手を出して獣たちに対処すると決まった。


 娯楽の少ない開拓最前線だ。

 こういう区切り区切りに、宴会をするらしい。


(不満とかはあるだろうから、発散させるためもあるんでしょうね)


 どうしても不便で、命のかかった生活だ。

 その分、土地が持てるわけで……うん。


「俺たちは北の方から降りてきたんだ。だから逆に、ここから北へと伸ばしていく」


「そうね。拠点同士が結ばれれば、より活発に動けるものね」


「ミュータントへの対処は、JAMで行うんですか?」


 この町にも、JAMは複数機あるはずだ。

 私が、石の力を感じる限り、ではだけど。

 どのぐらいの性能で、パイロットもどんな腕かは不明。


 それでも、歩兵がたくさんいるより、JAMがいた方が有利だ。

 この前のオオカミ相手には出てきてなかったようだけど……。


「ああ。JAMじゃないといけないような相手はなかなか出てこないけどな」


 言われて、私は火力が強すぎると怒られたのを思い出す。

 なるほど、相手にするには……と。


 この辺りに、JAMの動力源となる石が取れる場所があったりするといいのだけど。

 例えばそう、そこらの樽やコンテナにジェネレータをくっつければ、色々楽なのだ。


「暮らしやすい場所は、鉱物資源が少ないことが多い。JAMの燃料も、節約したいところだ」


「そのあたりはなんとも難しい話よねえ……」


 いつの間にか、暮らしの不満を言い合う愚痴空間のようになってきた。

 私も、なかなかシャワーであったり、それこそ入浴なんて、といったことを口にする。


「それは俺たちもそうさ。薪だって節約したい」


「さすがに、JAMでお湯を沸かすのは効率が良くないですもんね」


「ま、まあね……」


 微妙に、カタリナに文句を言われたような気がした。

 実際、過去にやったことがあるのだ。

 どうしてもと、岩を削り、その中に……。


 できなくはなかったけど、正直、面倒だった。

 カタリナとしては、いつ何が襲ってくるかわからないのに無防備な!というところ。


「なんにせよ、この辺りはまだ開拓中だ。探索してない場所も多い。一言言ってからなら、好きに動いていいぜ」


「なるほど……何か見つかったら、売りに来るわ」


 見つけたものはお前のもの、だけど戦力を出せ、ということだ。

 定住するつもりのない私にとっては、都合のいい話である。


 目的にはここからさらに東南方向といったところ。

 何が見つかるかわからない以上は、ある程度寄り道も面白いだろう。


「期待してるぜ。目玉飛び出るようなのを、頼むわ」


 そう言って笑いながら、リーダー格の男はほかの騒ぎに混ざりに向かう。

 すぐに、騒ぎに男の声が混じりだした。


「元気ですね。それに、たくましい」


「そうでなくちゃ、町を離れて新しく、なんて続けられないわ」


 お金のやり取りがあまりない、自給自足のような生活。

 それでも、未来に希望を持てるメンタルの人だけが、この場所にいるのだろう。


 かつての文明が、そこに至るまでにたどってきた道のり。

 今、人類は同じように歩みなおしている……といえるのかもしれない。


「どこを探ってみますか?」


「まずは色々話を聞いてからにしましょうか。巨大ミュータントがいないとも限らないから」


 今みたいに、酔っぱらってないときが良いわね、なんてつぶやきつつ。

 私も宴の盛り上がりに混ざるべく、お代わりをもらいに行く。


 味気ないけど、お酒を作る仕組みそのものは今の時代も再現されてるらしい。

 風味は別にして、アルコールそのものは濃度が高い。

 医療用にも使われていそうなそれを、注いでもらう間、空を見る。


「星が今日も……ん?」


 満天の星空。その中に瞬き方の違う星がいる。

 むしろ、瞬いていない。


「レーテ?」


「あれ……流れ星?」


 指さす先で、光は大きくなり……そして……。


 私たちが来た方向から、光が走る。

 宇宙へと向かい走る光は、流れ星を直撃した。


「メテオブレイカー……ということはあれ、直撃コースだったのね」


 光の破片となった流星がいくつもの火球となって降り注ぐ。

 そのうちのやや大きいものが、遠くに落ちるのが見えた。


「明日の目標は決まったわね」


 狙うは、宇宙からの来訪者、だ。




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― 新着の感想 ―
[一言] 流れ星なんてそうポンポン落ちてこないし デカイの来たら人間なんて滅んでるので 小さいのを呼び込む機構とかがあるんだろうか?
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