JAD-058「適応するものたち」
「人間って、たくましい物よね」
「レーテが言ったときには、まさかと思いましたけど……」
防衛に出た人員と合流した私たちは、まず怒られた。
焼かれては食えない、と。
(確かにこう……火力が強すぎたかしら?)
私の攻撃で、ルビーの力が当たったオオカミは丸焦げだ。
そうでなくても、半端に焼かれた形では、問題があるそうだ。
「見事に回収、解体、と。手にしてるのは探知機? へぇ……」
完全に、手慣れている。
この場所だけじゃなく、開拓に出る人間というのは、こういうものなんだろう。
あるものを使い、得られるものは得る。
皮ははがされ、牙や骨は別に分けられていく。
と、牙が積まれた場所に感じるものが。
「牙が、そうなんですね」
「みたいね。ああいう襲撃が多いなら、確かに石がたくさんあるわけだわ」
不思議と、獣やミュータントたちの体、その中にある石は、掘ったものより力がある。
同じ石英、水晶の類でもなかなかに侮れないのだ。
「ここにいたか。空を飛ぶJAMとは……珍しいな」
「ずっとってわけにはいかないけど。どこか見てきてほしい場所でもある?」
私の言葉に、ニヤリとリーダー格の男。
話が早いといわんばかりだ。
本命の前に、こういう時の分配に関して説明を受ける。
それに従い、分配を受けつつお茶に誘われた。
向かった先は、無骨ながらも頑丈そうな建物。
すぐに、ここがこの町の中心だと感じることができた。
「細かい話は抜きだ。水源の調査と、おそらくいるであろうミュータントの追い出しをしたい」
「追い出し? 倒す、と言わないってことは正体不明なのね」
「その割には、あまり焦りが町中にないようですね」
カタリナのいうように、襲われるかもしれない場所という緊張感はあっても、それ以上ではない。
暮らしていけるかどうか、という恐怖はもっとわかりやすいものだ。
「水源はいくつかあってな。それに、影響は川の水位がたまに増す、ぐらいなんだ」
曰く、一時的に水位が上がるが、またもとに戻るとのこと。
色々確認した結果、おそらく水源に何かがいて……と。
(何か毒になるようなものを出してこないとも限らないか)
「地図をもらえる? さくっといってくるわ」
「頼めるか? 無理そうなら一度戻ってきてくれ」
簡単ながらも周囲の地図を受け取り、機体のもとへ。
向かう準備をしつつ、ミュータントについて考える。
異形だったり、巨体だったりする相手たち。
異形はともかく、巨体はいつも不思議なのだ。
何を食べて生き残っているのか、と。
これに関しては、前から個人的な仮説が1つある。
(石が、関係している気がする……)
宝石の力は、火を産み、水を招き、風を吹かせる。
なら、栄養とは言わずとも、何か生き物に必要なエネルギーを生み出すことも可能ではないか。
そんな、妄想めいた仮説だ。
「いつでも行けますよ」
「ん、じゃあ行きましょう」
ブリリヤントハートを真上に飛ばし、高度を取ってから移動開始。
地上に近いところを飛ぶと、何かを刺激するかもしれないと思ったからだ。
しばらく進むと、確かに光るものが見えてきた。
結構大きい湖だ。
「ずいぶんと、丸っとした湖ですね」
「んー、たぶんあれ、クレーターだわ」
ちょうど地下水源が近かったのだろうか?
きれいに丸い湖の違和感に、そう口にする。
「なるほど……レーテっ!」
「ええ、見えたわ。何か、いるわね」
遠くからだと詳細はわからないけど、何かが水面を揺らした。
風、ではない何か。
「ルビーをアクアマリンに変更」
「了解。貴石変換します」
動力の片方を、水や氷の力を引き出す石に変更。
湖の中で、真っ二つでもしたら汚れてしまうからだ。
「このまま湖の上に一度行くわ」
「まずは確認、ですね」
高度を下げず、湖へ。
周囲には木々が生い茂り、1本の川が流れ出ている。
向かう先は、町。
そして、湖と川の境目に何かがある。
「堰……ですかね?」
「それにしたって、なんであるのかって話よ」
あれがあるせいで、川への流れが変化しているんだと思うけど……。
「ゆっくり降りましょうか」
何が飛び出るか、不安を抱きつつ、堰のそばへと降りていく。




