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JAD-052「太古の遺産」


 夜の森を進み、見つけた要塞へと近づいていく。

 すると、妙なことがわかってくる。


「計測から行くと、大体200メートルほどはあるみたいです」


「要塞、砦といったものとしては……少し小さいわね」


 ここに拠点がある必要性はわからないけれど、そう考えたとして、小さい。

 小規模なもの、ということになるとすると……。


「何も置かないのは問題だけど、しっかりした施設を用意するのは無駄、そんなぐらいかしら?」


「でしょうかね? っと、この先地面が荒れてますよ」


「地震でもあったような……掘り返されてる?」


 砦の裏側に回り込むため、進む森は見事な森林だった。

 そんな中、山肌がつい最近、掘り起こされたかのような状態になっているのを見つけたのだ。

 目の前で、森が途絶えているのが気になるところだ。


「どうします?」


「行くしかないわね。ちょうど、裏口っぽい部分もあるし」


 防衛施設が、生きていたとしたら何か反応がある。

 その覚悟を決めて、機体を森から出していく。


 一歩出た途端、いくつものライトがこちらを照らし出した。


(この距離で!? ずっと周囲を確認している!)


「っ! 発砲やめっ!」


「レーテ!? ああ、いえ……これは……」


 ライトをつぶすべく、ライフルを向けた私。

 でも、そこに敵意はなかった。


 こちらに攻撃するためのロックオンではなく、ただの灯り。

 そして、聞こえてくる声。


『来訪者を確認。身分証の提示を……機体及び搭乗者にコード確認。ようこそ、同胞』


「同胞……一体……。この距離で何かをスキャンしたんでしょうか?」


「行きましょう。招いてくれるなら、話が早いわ」


 音を立て、開いていく裏口。

 JAMが余裕で通れるその場所を、念のために警戒しつつ通っていく。


 見えてきた中身は、立派なものだった。

 表面こそ、風雨で傷んでいるように見えるが……。


「すごいですね。あちこち、強度を保っていますよ。周辺の壁は傷んでいる箇所が多いですけど」


「ずっと維持していた……でもあのAIはだめになっていた……何が違うのかしら」


 思い出すのは、かつての採掘工場だと思われる施設で出会った相手。

 あのAIも、施設を維持し続けていたが、命令の無さに、だめになった。

 言い換えれば、刺激がなさ過ぎた、となるだろうか。


「ここは……士官室、そう読めますね」


「ええ、そうね。降りるわ」


 重厚な扉が、私の目の前で動く。

 ほこりを舞わせながら、開いた先は……予想通り、きれいなもの。


 足音が響く暗がりを、人口の灯りが照らした。

 周囲を警戒し、銃を構えるカタリナを片手で制す。


「見るからに、命令を出すための場所ね……」


『同胞の来室を確認。状況報告をしても?』


「誰だかわからないけど、了承するわ。ただし、だいぶ端折って頂戴」


「レーテ、危険です」


 心配そうなカタリナの声。

 確かにその通りなのだけど、なぜか私は安全だと感じていた。


 そう、これを私は……知っている?


 目の前に浮いてきたのは、金属でできた球体。

 空中に何かが光ったかと思うと、スクリーンとなって文字や絵が動き出す。


 私の望み通り、かなり省略されているけれども、歴史が目に飛び込んでくる。

 かつての文明、その崩壊。そしてこの場所が何なのか。

 入った時から……いや、見かけた時から感じていたのは、これだ。


「なるほど……この場所が、次の作戦行動地点……そのための強行偵察だったのね」


「強行偵察? 施設を作っている余裕が?」


『はい。いいえ、後輩。作っている余裕はありませんでした。なぜなら、この施設は……』


 言葉の途中で、地面が揺れた。

 地震……とは少し違う気のする揺れ。

 同時に、私の何かが、宝石を感じる。


 強烈で、とんでもない力。


『同胞、支援を要請します。所属国家不明の、兵器と思われる相手の排除を。私では追い返すのが限界でした』


「それはいいけれど、私がいても大丈夫なの?」


『はい、同胞。貴方の先達たちとも、共闘してきました』


 それだけ聞ければ十分だ。

 戸惑うカタリナの手を引き、ブリリヤントハートのもとへ。


「レーテ、さっきのはどういう……」


「まずは飛翔するわ! 相手を確認する! ああ、答えは簡単よ。この要塞は、建てられたんじゃないの」


「え? ええ?」


 夜空に向けて、機体を飛ばす。

 そうして眼下に見下ろす要塞が……震えた。


「かつて、人間たちは考えたのよ。いちいち建てているのはコストの無駄。移動できる施設ができないか、と」


 周囲に轟音が響き、地面が……盛り上がる。


「移動要塞、メテオブレイカー……表向きは、隕石の落下に備え、衝突コースに移動することで迎撃するという仕様の……自律兵器よ」


「こんなとんでもないものが……見てください!」


「なるほどねえ。これが動くわけだ」


 まだ遠いはずなのに、大きさを感じる相手。

 それは、かつてのビルにも負けない大きさの、巨大ゴーレムだった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 起動音は勿論、ブッピガァン!!ですね分かりますwww
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