JAD-046「人間であるということ」
「これ……保管用コンテナ?」
「形状からすると、間違いありませんね」
戦場跡で襲い掛かってきた謎の無人JAMたち。
その正体は、崩壊直前のアンドロイドによるものだった。
長い長い時間の果てに、彼か彼女は、何を思ったのか。
「増援に連れてこられた機体たちがいまさら?……にしては、だいぶ傷んでたわね」
「そうですねえ……でも、考えても仕方がないのでは?」
確かに彼女の言うとおりだ。
現実が目の前にあり、その結果を私たちは受け止めるしかない。
たくさんあるコンテナは多くが傷んでいる。
そのうちのいくつかは運よく、痛みが少なく……保存機能も生きているようだ。
これ自体は、動力の石を交換して使うことができるはず。
『ラストピース、聞こえるか』
「ええ、聞こえるわ。拾うものは拾えたかしら」
『おかげさんでな。こいつら以外はただ荒地があるばかりだぜ』
一緒についてきたジュエリストからの報告。
それは、この場所はまだ酒場のマスターのいうところの危ない場所ではないということだ。
儲け話はあるんだろうけども、危険も隣り合わせ。
さすがの私も、かつてのクエストボスみたいなものが複数来たら厳しい。
(勝てない、とは言わないけれど……)
「話が気になっていただけだし、戻ってもいいけど、そっちは?」
『同感だ。どうもこいつら、今じゃ生成が難しい金属でできてるっぽいからな。十分黒さ』
「了解。じゃあ行きましょうか」
トラックを呼び寄せ、乗せられるだけ乗せる。
と、いくつかのコンテナ、その有用さに気が付く。
原理は不明だけど、重量を軽減できそうだ。
ホバーでもなく、かつての技術であるリニアでもなく……。
床面ぎりぎりに、JAMのスラスターに近い動きがあるのが見える。
「陸上戦艦とか、この仕組みを使ってたのかしら?」
「どうですかねえ……。なかなか高く売れそうですよ」
このコンテナ自体、素材もなかなか面白そうだ。
四角いコンテナに、手足が付いたかつてのJAMもどきを空想しつつ、帰路へ。
本当は、夜は動かない方が良いのだけど、この時ばかりはしょうがない。
下手にとどまり、次が出てこないとも限らないからだ。
「動力の石は、普通のだったし……あのアンドロイド……」
「……」
独り言のようなつぶやきに、カタリナは答えずハンドルを握っている。
私もあまり突っ込むつもりはない。
ある意味では、私以上に人間らしさにこだわるカタリナ。
自分が人間であることに、自信が持ちきれない私。
「一度、出会った場所とかに戻ってみましょうか」
「レーテがそうしたいなら……私は……」
「どうせ自由な身だしね。……ん、夜明けの方向に感。ミュータントかしら」
自然と先頭で進んでいる私たち。
進行方向に近い方面から、何かを感じた。
何か薄暗い中を……細かいのが飛んでる?
「渡り鳥、ですね」
「まだあんなにいるのね……」
かつての記憶を刺激するような光景に、しばり言葉を失う。
影になってしまって、種類はわからない。
けど無数の鳥が飛んでいる……自然が回復してきているのだ。
「ふう……。落ち込んでても仕方ないわよね。やりたいことを、やれることをやってこそ、か」
「その通りですよ、レーテ。それでこそ、です」
広くない運転席で、2人して笑いあう。
きっと、こうして悩んで語り合えるのは、人間であるということなんだろう。
ひとまず、町に戻ったら美味しいものを食べて、ゆっくりしようと心に決めるのだった。




