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JAD-044「心はどこに」


 作業機械の音が心地よく響き渡る。

 無人のJAMと遭遇したという男の機体を見るためにやってきたのだ。


 整備工場といえば、油と汚れのにおい……というのが定番。

 けれども、JAMはそうともいえなかったりする。


「よーし、腕パーツつり上げ! 接続よーし!」


「回路接続確認! 同調始まりました!」


 そう、宝石の……言い換えると大地、星の力を使う不思議な動力のJAM。

 宝石の鎧、星の代弁者、そんな呼び方もされるブツだ。


 今は、鋼鉄等の素材を使い、動力源の殻を作っているという。

 その中に、決まった形に加工した人工宝石で出来た器を入れ、配線代わりのものを仕込む。

 そこに動力源となる宝石を入れる筒を差し込み……完成だ。


 もっとも、ブリリヤントハートは少し違う。

 崩壊前に作られたであろう動力源で、殻からして……特別だ。

 分解はしたことがないけど、もしかしたらこれは人工物じゃなく……。


「いつ見ても不思議ですね。理屈ではデータにあるんですけど」


「まあね。最初はコンテナに対する推進装置だったらしいから、こうでもしないと不便だったんでしょ」


 普通の機械と違い、ボルトや溶接なんてのがいらない。

 なぜか、くっついて動くJAMという存在。


 だからこそ、いざというときには手足のパーツすら任意で切り離せる。

 有線でつながれている通常の機械では、なかなかこうはいかないだろう。


「よくわからないけど、使ってるというのが実情よね。で、あれが撃たれたJAMの腕か」


 工場の隅に置かれた、壊れた腕。

 一見するとただ壊れたように見えるけど……。


「なるほど。確かに壊されてるわね。獣やミュータントじゃない。武器に、だわ」


「これは弾痕? 無人で発砲する存在が動き回っている?」


「私たちは動いて回る人工物を否定できないわね」


 苦笑しながら思い出すのは、つい先日の遺跡でのことだ。

 管理AIが遥かな時間の果てに……だめになってしまった結果。


 となれば、JAMではない何かの機械が暴走を始めたということもゼロではないだろう。

 問題は、それが普通の動力なのか、宝石動力のJAMなのか、だ。


(あの人は相手がJAMだと感じたという。ジュエリストが持つ独特の感覚……)


「話が本当なら、戦闘不能にしてはぎ取ってみたいわね」


「うーん、でも……そんなにいい石が入ってるとは……」


 渋るカタリナに、やってみないとわからないと説得をかける。

 結果として、十分な準備をしてからということになった。


 まあ、私たちの場合は予備弾丸と、荷台の空きを作っておくぐらいなのだけど。


 いくらかの物資を買い込み、宿にはまた出かける日を伝え……。


「酒場にも一応不在を伝えたのが聞こえてたかしらね?」


「かもですね。結構有名になってきたでしょうし」


 数日後、出発する私たちには同行者がいた。

 正確には、たまたま同じ方向に稼ごうと出発する人間たちが、だが。


「ま、弾除けは多い方がいいでしょう。お互いに、ね」


「あっちも私たちの戦力をあてにしてるでしょうし、ええ」


 砂煙をあげながら、トラックを進ませる。

 ある程度の距離をとった、不思議な集団が北西に向かう。


 それから数日は代わり映えしない時間だ。

 適度に進み、適度に休み、そして適度にミュータントなどを排除。


「依頼を受けてるわけでもないのに……レーテは律儀ですよね」


「ん? そうかしらね? あれは好戦的な奴だから万一のためよ」


 言いながらも、ゲームとして過ごしていた時のことを思い出した。

 ミュータントは、人間の手による生物が適応したもの。

 それ以外にも、環境が進化を促したものもいる。


 そうして、JAMの動力源も……星の力が……あれはゲームの設定でしかない。

 星の力が意識を持っているなんてことは、あるはずも……。


「……あと半日もしたら、目撃の場所が見えてくるかしら」


「ええ。あの人たちの移動速度を考えるとそのぐらいかと。周囲も……荒地ばかりです」


 私たちも、それ以外も、適当に大きな岩陰に隠れるようにして停車している。

 すでに周囲は、人の住める場所ではない。


「今も動くJAMか……あるいは、私のように遠隔操作ができるジュエリストが近くに?」


「かもしれませんけど、結構な数といってましたよ? そんな数が?」


「それもそうよね……それに、自分でいうのもなんだけど心がないとだめなのよ、JAMは」


 搭乗者の、宝石への感情、心が力を引き出す。

 石にも複数の力があり、それを選択し、使うのが心なのだ。

 ミュータントですら、その感情で石の力を使うのだから。


「まだ見ぬJAMたち……その心は……」


 どこに、あるのか。

 それはまだ私にはわからないでいた。



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