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JAD-040「一人ぼっち・前」



「前方クリア」


「後ろからも何も来ませんね」


 謎の洞窟に突入して数分。

 まだ入り口の光が見えるぐらいの位置だ。


 さすがに、この距離では何も変なものは見つからない。


「一本道……でもないか」


 ハンドガンとライトを構え、じりじりと進む私。

 その視界には、古ぼけた人工物の壁と、左右に分かれた道が見える。


「何も音はしないわね……」


「私のセンサーにも、生き物の反応はないです」


 カタリナは、人間ではない。

 おそらく、文明崩壊前後の科学による人造人間、アンドロイドだ。

 力も強いし、色々な能力を持つ。


(それでいうと、私もどこまで違うのか……)


 唐突にこの世界で目覚めた私。

 おそらく人間であろうという気持ちはあるものの、保証は誰もしてくれない。

 生身ということは間違いないだろうけど、それだけだ。


「レーテ?」


「ええ……何の施設なんだろうって」


 シェルターの類では、ないと思う。

 もしそうであれば、こういった入り口付近は何層もの障壁があるものだ。


「高さはそうありませんね。幅は……車が2台…そのぐらいでしょうか」


「重機の類は十分通れる、と。何かの搬入口かしら」


 ふと、まだつながりを感じるブリリヤントハートに意識を向ける。

 不思議なことに、この距離でも確かにつながっている。

 なんなら、消耗は激しいけどライフルを撃たせることだってできそうだ。


「外のトラックが、何のために置かれていったかよね」


「ミュータントがいた……故障……いろいろ考えられますけど……」


 中に凶暴なミュータントがいて、突入した人間がやられたか、逃げた。

 そう考えるのが一番わかりやすいけど、その割にはきれいすぎる。


 そう、きれいすぎるのだ。

 中に入ったであろう人たちの、足跡すらない。

 おそらく、何人かと車1台ぐらいは中に入ってきたと思うのだけど……。


「この砂たちは、きっと外のよね。あれが開いて、そのままだから最近入ったって感じ」


「待ってください。となると、それまでこの場所はずっと封印されていたってことに……」


 自然と、ハンドガンを握る手にも力が入る。

 スライムが出てくるような隙間はない。

 けど、ゲームのように壁から何か罠が出てきそうではある。


「右は……上に上がってる? なんだか、別の出口くさいわね。左に行きましょう」


「了解。後ろは任せてください」


 曲がり角は、急に広くなっている。

 それこそ、ちょうど重機が方向転換やすれ違いができそうなほど。


 そんな場所に、落ちているものがあった。


「効果の切れた照明棒……か」


 私が投げ込んだように、数時間は灯りになる棒だ。

 それがもう光っていないということは、少なくともそれだけ前のもの。


 顔を上げ、通路の先を確かめる。

 すると、いくつかの扉が目に入った。


「ロックがかかっていますね。どうします?」


「放っておいてもいいけど……こういう時、そのまま進むとこれが開いて何か出てくるパターンよ」


 冗談めいた言葉に、そういうものなのですか?なんて言われてしまう。

 実際には、そんなことはないだろうとは思うけど、この場所が何かがわかるかもしれない。


「噓でしょ。電子ロック、生きてるわ」


「どこから電力が……」


 武装の確認をし、スターエンゲージソードを手にして力を注ぐ。

 通路と私たちを照らす光の刃が、扉に突き刺さる。

 少々強引だが、仕方ない。


 ロック部分を切り裂き、力に任せて蹴り飛ばす。

 扉の左右に二人で隠れるが、中からは何も出てこなかった。


「先に来てた連中は、この中には入ってないみたいね」


「めぼしいものは何もありませんね」


 実際、お金になりそうなものはない。

 あるのは、無機質な椅子、棚、といったところ。

 逆に、この場所が長い間封印され、保存もされていたことを証明している。

 ついさっきまで、何かいたかのようだ。


「どこかに、発電装置があるわね。しかも、長期間メンテナンスのいらないタイプ」


「あるいは、管理AIもあるのかもしれません」


 確かにその通りだった。

 人間は何百年と生きられないが、機械、AIなら別だ。

 誰も来ない中、延々と整備を続ける何かがいるのかもしれない。


「逆に誰もいないほうがいいわ。少し、見えてきたわね」


「これまでの情報を総合すると、地下で何か発掘か生産をしたものを運び出す場所、でしょうか」


「そうね。ここはドライバーの待機部屋だったのかも」


 なんにせよ、ここまできれいな状態で放棄、封印されている理由がわからない。

 警戒をしつつ、さらに奥へ。


 すると、広い空間に出た。

 先ほどまでが通路なら、急にビルの一フロア丸々といった空間。


「ここは……」


「見てください、レーテ」


 カタリナのライトが示す先。

 そこには、大きな扉と上下を示す矢印。

 明らかにエレベーターだ。


 いろんなコンテナっぽい箱や、操作レバーらしきものもある。


「下手に地下に行きたくはないわね……電気は……来てる」


「JAMを腹ばいにさせてくるとかどうです?」


「それもありね……ん?」


 2人だけの場所。

 そのはずの場所に、物音、そして気配。


「誰っ!? ……人?」


 それまで気が付かなかった理由はわからない。

 でも、入り口付近のコンテナの脇から何かが出てきた。

 作業服に見えるものを着込んだ、人影。


 でも、その顔は黒かった。

 日焼けなんて生易しい表現ではなく、光を飲み込む黒。


『ア……アアアアアアッ!!!』


「発砲!」


 合図とともに、弾丸を打ち込む。

 獣や、たいていのミュータントであれば倒せるはずの弾丸。

 だが、人影は止まらない。


 着弾の衝撃に、動きが遅くなるが確実に接近してくる。

 一気にとびかかってきたのを回避することができた。


「っとお! コイツ、何!?」


「レーテ! ほかにも来ます!」


 突進をよけ、どう倒したものかと考えた時のいやな報告。

 離れたコンテナの脇から、何かが動いている。


「外に逃げ……何か音が……下がってる!?」


 見ると、最初に突進してきた何者かが、隅にあった機材にぶつかっていた。

 そこには、明らかにレバーがあり、動いている。


 扉の先がエレベーターだったのではなく、この場所そのものが上下する仕組みのようだ。


「動きを止めて、首を飛ばす!」


「了解!」


 射撃はカタリナに任せ、私はスターエンゲージソードで切断をすることにした。

 人を斬るようで嫌な感じだが、仕方がない。


「さあ、来なさい!」


 挑発ついでに声を上げると、3体の人影が私に迫ってくる。



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