JAD-039「過去が眠る土地へ」
町を出て、すでに一週間が経過していた。
平和といえば平和、収穫なしともいえる。
「町から出て山へ向かい進め……か。曖昧というか、それでこそというべきか」
「お宝探しって感じが出てきましたね」
運転を、というか操作をカタリナに任せ、助手席で機銃を操作する。
カメラもついているから、周囲を索敵するのに便利だ。
町並みはとっくに遠くなり、周囲は大自然ばかり。
道路と呼べるものはなく、草原をひた走るという感じ。
「地雷は……さすがにもうないか」
「地雷ですか? こんな場所に?」
「こんな場所だからこそ、よ。周囲と比べて、木々が埋め尽くしてないってことは、何かあるのよ」
例えばそう、しばらくは車やそれに相当するものが行き来するルートだった、とか。
あるいは、不定期に何かが爆発でもしてしまっているか。
「いわれてみれば、時折穴というかへこみみたいなものが?」
「まあ、金属を感じないから、今は大丈夫だとは思うけどね」
すると、レーテがいうなら大丈夫ですね、なんてカタリナに言われてしまう。
苦笑を浮かべつつ、カメラ越しの映像を確認していく。
動くものは……今のところはただの獣ぐらいだ。
工場みたいなのがあるなら、水源が近い方がいいだろうけど……。
「ん、山のほうに何か反射してる」
「映像拡大……確かに、何か人工物がありますね」
さすがに世界崩壊前のものがむき出しで残っているとは考えにくい。
そうなると、こちらに来ている変わり者が私たち以外にもいた?
(どうかしら……酒場のマスターの話じゃ、最近受けたのは私たちだけみたいだけど……)
「静音モードで向かうわ。後ろめたい何かがある奴らかも」
「了解。エンジン切り替え行います」
すぐに、先ほどまで聞こえていた駆動音が小さくなる。
念のために、機銃から手を放して荷台の機体へ。
脇腹付近から乗り込み、起動。
正面を向いてうつぶせ気味にさせて構えさせた。
「さあて……何か出るかしらね」
「何事もなく探索できるのが一番なんですけどねえ……」
カタリナのいうことはもっともだけど、情報源としてはアリ、だと思う。
というか、そろそろ区切りをつけてシャワーでも浴びたいところだ。
目撃できた人工物に近づいたところで……スコープには、やや汚れたトラックが見えた。
「そっちでも見える?」
「はい。トラック……ですね。パンクや破損してる様子はありませんが」
「乗り捨て……こんな場所で? 2台以上で来ていて、1台は置いて行った……ふむ?」
少し離れた場所に車を止め、ブリリヤントハートを立たせる。
これであちらに何かがいれば、わかるはずだ。
ゆっくりと歩き、機体を近づけていくが……反応はない。
「誰も、何もいない……か。そして、これね……」
トラックが止まっていた場所から少し先に、大きな黒い穴が口を開いている。
正確には、扉が、である。
「もとは草木が覆いつくしていたというところかしらね」
周囲に、おそらくトラックに乗っていた人間が草木を刈り取った跡がある。
地下に向けた入り口を見つけ、解放した……そんなところか。
「カタリナ、こっちへ。周囲の確認の後、内部の捜索をするわ」
「わかりました。今のところ反応はなし。見える範囲での穴の中も同様です」
ぽっかりと開いた黒い穴。太陽光の差し込む範囲では、明らかに人工的な建物だ。
地下洞窟を整備した、ともいえるかな?
「JAMは入らないか……対ミュータント想定で武装、突入よ」
「レーテがそうするなら……」
荷台からできる限りの武装、ハンドガンや軽機関銃、投擲武装などを用意する。
もちろん、ブツを持ち帰るためのリュックもね。
こういう時は、人間離れした肉体がありがたくはある。
少し、さみしいことでもあるけれど。
「じゃ、お宝探しと行きましょうか」
内部の化学反応により、2時間は灯りが持つものを軽く投げ込む。
照らされる内部は、なぜか記憶を刺激した。




