JAD-038「青春を追う」
「プラント……前文明の生産工場、その総称だったかしら?」
「ああ。どうでもいいようなものから、飲料水を生み出す巨大なろ過装置まで、さまざまだな」
この辺りはゲームと同じらしいと気が付く。
ゲームでも、依頼でそういう場所を取り合うことはよくあったのだ。
食料関係のプラント奪還作戦後は、食事も改善していた……ような?
「お前さんも見た通り、この辺りはまだ自然が早く回復している土地だ。言い換えると……」
「色んなものが、発見される前に埋もれている?」
にやりと、笑みが返ってくる。
黙って聞いたままのカタリナを見、うなずく。
「実際に、プラントは発見されてるんですか?」
「まあな。数年に1つ、ぐらいか。表に出てないだけで、もっとあるかもしれん」
「それは……ものを考えたら、結構な頻度ね」
すでに失われた機械群、工場となれば価値はまさに一山当てたという状態だ。
ここまで聞いて、ピンときた。
(黒騎士……ううん。この町がどこか強気なのは……)
よくよく考えれば、このご時世に統一したデザインのJAMがあるのがなかなか稀だ。
せいぜい、数機を合わせるぐらいだろうと思う。
大きな理由は、JAMの適性だ……どうしても素質の都合、バラバラになりやすい。
「ありがとう。これ以上は有料って感じね」
「あんたは生き残りそうだな。そら、食って飲んで金を落としてくれ」
注文が届いたのを契機に、マスターは離れていく。
二人、喧噪をBGMにちびちびとつまむ。
「思ったより、大きな話になりそうね」
「そうですね……兵器プラントはないといいんですけど」
心配そうなカタリナの表情。
人間よりも人間らしい、そう感じる瞬間だ。
もともと、人間も生身の肉体があるだけにすぎない。
人間を人間としているのは……っと、考えがそれた。
「全部掘ってみないとわからないわね。研磨工場なんかがあるといいのだけど」
「持ち運びできる機材があれば最高ですね」
使い道は、いろいろだ。
自分で手に入れた原石をカットし、磨き、力あるものにする。
理由はわからないが、見た目の美しさは宝石の引き出せる力に直結している。
熟練の職人が手掛けた石は、大きさが多少小さくても十分なパワーを誇るのだ。
「そうなると、大規模より小規模かしら……」
取り合いのように人が集まっている掲示板を見つつ、行動方針を考える。
やみくもに探しても見つかるものではない……。
でも、あたりをつけるのも難しい話だ。
「自分の感覚を頼りに、広範囲を移動してみましょうかね」
「ああ、レーテのカンなら確かに……」
私の体が原因なのか、そういう素質があるのかは不明。
けれども、私には表層に近い金属反応などを感じられる力がある。
この力を頼りに、少しドライブでもしよう。
「そうと決まれば、少しでも稼げるものをっと……ずいぶん古い張り紙があるわね」
「本当ですね。いわゆる塩漬けというやつですか」
古風な言い回しをよくも知っているものである。
酒瓶を手に、掲示板のほうへ向かうと、気になるものがあった。
喧噪の隅にはられた、数枚の紙。
その中の1枚を見ると、幻の財宝を探してほしい、とある。
「幻なのに探してほしい?」
「なんでしょうね、これ」
「ははっ、あんたら見ない顔だな。腕は立ちそうだが……そいつは依頼人がもう死んでるよ」
すぐそばで飲んでいた壮年の男性が、そう教えてくれる。
目の前のグラスは空だったので、持ったままの酒瓶から適当に注ぐ。
「ありがとよ。ああ、もう何年ぐらい前だったかな……爺さんが、先に依頼料を払って出したやつだ」
「それで取り下げにはなってないわけですね」
「へえ……面白そうじゃない」
まだ張り紙があるということは、財宝は見つかってないということ。
少なくとも、表向きは、ね。
話を教えてくれた男性にさらにおごることにし、詳しい話を聞くのだった。




