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JAD-037「青星を胸に」



 ドラゴンたちの襲撃からしばらく。

 じっくりと整備を行ったブリリヤントハートはきれいな姿を取り戻した。


 ぱっと見はそう変わらないように見えて、中身は成長していっている。

 その変化自体は、以前にも起きていた。


 ブースター能力の向上と、増設。

 そして、ジェネレータとしての増強。


 このままいけば、どんどんかつての記憶のような機体になるだろう。


(そうなれば……たどり着くことになるのかしら……)


─ 七色のカラーダイヤを同時に使用する日に


「まずは一歩ずつ、ね。この感覚、間違いないわね……」


 今回の成長は、やや特殊なもの。

 それは、遠隔操作、リンクというものだ。


 今は機体から降りている。

 それでも感じる、確かなつながり。

 向かい合った状態でも、動かそうと思えば動かせる、そんな力だ。


「腰にハードポイントを増設して、投擲武器なんかを増やせるそうですけど……レーテ?」


「え? ああ、そうね。毎度ライフルというのも味気ないか……いくらかもらうわ」


 喧噪の響く工房。そこで一人考えに沈んでいたようだ。

 ゲームだと、都合のいい空間に交換パーツはいくらでも保管していたけど、そううまくは……。


 トラックでの旅も、十分楽しいのでこれはこれで、というところだろうか?


 整備を終え、工房横の空き地で稼働チェック。

 問題がないことを確認して、料金を払えばこれで自由の身だ。


「さてっと、どうしましょうね」


「戦場跡にすぐ顔を出すのかと思っていましたけど」


「それでもいいのだけど、もう少し情報が欲しいところね。それに、新しい力の実験もしたいし」


 町長直々に、危ないと言われた北西の戦場跡。

 一体、どれほどの戦いがあったかはわからない。


(最悪の場合、足を踏み入れた途端、衛星から撃たれる可能性もある……)


 かつての文明が打ち上げた、宇宙の目、矢。

 多くは時間の流れに、消えていったはず。

 理由は、破片の衝突や隕石などなどだ。


 でも、まだ結構な量が生き残っており、人類にネットワークの恩恵を与えている。

 噂じゃ、自己再生を能力としてもったものもいるとかいないとか。


「しばらくは、仕事をしながらあっちに行って帰ってきた変わり者がいないか、探すとするわ」


「わかりました。気になったのが、ドラゴンたちがどこから来たかなんですよね」

 

「気にしても仕方ないような……でも、確かにそうよね」


 見た目が獣とそう変わらない、そんなミュータントが圧倒的に多い。

 一部は巨大化し、別の生き物と化しているわけだけど……種類はそう多くない。


 そして、そんな奴らの主な発生理由は2つ。

 1つは、進化というべき変化でそうなったもの。

 もう1つは、かつての人類が犯した過ち、遺伝子改良などで生まれた生き物の末裔だ。


「それこそ、大昔には恐竜っていう生き物がいたことはあるらしいけど……この星だったかしら?」


「そういえば、この星がどの星かすら、わかりませんね」


 私はつい、記憶にある地球という感覚でしゃべったが……その通りという保証はない。

 当然、全然別という可能性も十分にある。いや、そうであってほしいという気もする。


 遺跡として出てきたものが、私の知らない昔のものだった場合……。

 私は、自分が本物でないと突き付けられることもあり得る、そう感じた。


「今……ここで生きている。それで十分だわ」


「ええ、そうですね。色のついたダイヤも探さないといけませんし」


 うなずいてる間に、定宿になってしまった宿へ。

 顔を出した宿の主人に手を振りつつ、駐車場へ。

 女の子が、洗車のためにかバケツとモップを持って飛び出してきた。


「お姉さん! 今日もお泊り?」


「そうよ。いつもありがとう。これでお菓子でも買うといいわ」


 お小遣いとしては多すぎず、少なすぎず。

 お金の分は作業をしっかりしよう、そんな金額だ。


「いつもすいません。お客様なのに」


「いいのよ。私も……あのぐらいの家族が欲しかったってことにしておいて」


 買い物と、依頼を見てくると告げて宿から市街地へと向かう。

 ここだけ見ると、平和な町中だ。


「獣やミュータントの狩りは、しばらく荒れるでしょうね」


「増えるか減るか、極端になりそうだわ。その分は黒騎士たちが面倒を見るでしょう」


 町の守り手、なんて話は嘘ではないらしいから……。

 その自負が、変にプライドを刺激するときがあるのかもね。


 情報が集まるであろう酒場に向かえば、まだ日は落ちてないのに騒がしい。


「適当につまめるものと……へえ、ワインがあるのね。もらうわ」


「私はアルコールなしで」


 視線を感じるが、ちょっかいを出してくるような奴は……いないかな?

 実力の具合は、わかる人にはわかるのかもしれないわね。


「腰に物騒なのをぶら下げてるからですよ、きっと」


「え? ああ、そういえば……あの羽根つきトカゲを斬った時のままだったわね」


 酒場のマスターにも、むき出しでぶら下げていたことを謝罪する。

 どんな武器か、わかる人間にはわかるのだろう。

 幸い、マスターは慣れているのか苦笑だけで済んだ。


 そのうち、視線も散っていき……騒がしくも、静かな時間がやってくる。


「発掘の依頼あたりがあると美味しいのだけど……なかなかなさそうね」


「当たれば大きいはずですからね。みんな自分たちでやるんですよ」


 掲示板に張られた大小の張り紙たち。

 男たちがその前であーでもないこーでもないと……。


「? それにしては騒がしくない?」


「何か、目玉となる依頼でも張り出されてるんでしょうか」


「プラントの探索さ。軍用のな」


 注文を置きに来たマスターが、そうつぶやく。

 そちらを向くと、マスターはゆっくり語りだしてくれた。







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