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JAD-035「翼持つ者」



「一匹ぐらいは仕留めてからと言ったけれどっ!」


「レーテ、上空!」


「わかってるっ! 一番の脅威は私たちだと、突き付けてやるわ!」


 スラスターを大きく吹かせ、咄嗟に後退。

 さっきまで機体があった場所を複数の火の玉が通過。


 空を舞う異形、小さなドラゴンたちによる攻撃だ。


(そうよ、そのまま私を無視したらいけないと考えなさい!)


「雷撃、チャージ……そこっ!!」


 不用意に突進して来た年若いだろう個体に、ブレードを一閃。

 ペリドットから引き出した雷撃の力が光り、翼を切り裂きつつ感電させる。


 解剖したわけじゃないけれど、体の中に火炎袋なんてのを持っているわけではない。

 この感覚は……石の力だ。

 

「散弾! 上に抜ける!」


「いつでもっ!」


 ブリリヤントハートの腰にぶら下げた銃、JAM用のショットガンに持ち替え、放つ。

 私に襲い掛かろうとしていた複数の影は、それで一度動きを止める。

 その隙に、ブリリヤントハートを一気に上昇させた。


「落下した個体に黒騎士たちの攻撃を……推定ミニドラゴン、沈黙!」


「そのぐらいはしてもらわないとねっ! 次っ!」


 敢えて威力を抑えた攻撃を、どんどんと叩き込んでいく。

 1匹1匹を順番に仕留めるのではなく、相手の攻撃を自分に釘付けにするためだ。


(頭がいいだろうと思ってたけど、予想よりも……怒ってたわけね!)


 私が手負いにさせた異形、通称ドラゴン。

 どこかで復讐に来るだろうと考えた私は、機体の修理が終わった後も街にとどまった。

 幸いにもというべきか、ドラゴンが現れる霧は近いうちに出現するそうだからだ。


 そして、霧の日。


 復讐に来るとは思っていたけれど、まさか配下のように他のミュータントを率いてくるとは。

 逆に考えれば、この地方に分散している脅威を一気に叩くチャンスだ。


『こちらナイトリーダー。ラストピース、状況は』


「見ての……とおりよっ! そっちは町とみんなを守るのを優先しなさい! 叩き落としたのは任せる!」


 そこまでする義理はないと言えば無いのだが、このままドラゴンたちを放っておけない。

 正確には、正面から街の戦力とは当たってほしくない。

 なにせ、相手は鉄板程度なら切り裂くだろう攻撃を持っているからだ。


 それに、空飛ぶ相手以外にも地上には獣がいる。

 恐らく、ドラゴンたちが暴れることで森から追い出されたのだろう。


「敵は多数、空にいるのは私だけ……ははっ、大した注目具合ね」


 まだ、あの手負いのドラゴンはいない……見えない。

 どこかに隠れているか、遠くで様子をうかがっているか。


 いずれにせよ、今は目の前の相手をしなければ。


「ダイヤとペリドットのままを維持。引っ掻き回しながら落としていくわ!」


「了解。動力維持に努めます」


 会話の間にも、空飛ぶ相手の攻撃が時折迫る。

 それらを回避しつつ、相手の観察は忘れない。


 大きさは違えど、みんな共通している部分がある。

 それは、鳥と違ってこれは飛べないだろう、という姿ということだ。


「体のどこかを宝石質にして、力を使ってるわね……まるでファンタジーだわ」


 極まった科学は魔法のようである、とはいつの言葉だったか。

 人間の業と罪、そして自然の底力は生物を変化させたようだ。

 骨や牙、内臓といった部位に、宝石と同じように星の力を引き出す能力を与えた。


 異形の体が力となる、作り話のようですらある。

 恐らく、目や牙が光って見えるのは、気のせいじゃないんだろう。


「考えても仕方ないわね……っと! ふうん、連携染みたことまで……」


「レーテっ、そんな小刻みな急制動は体にっ」


「大丈夫よ、このぐらいなら……ねっ!」


 この動きなら、ゲームでさんざんやった……ような記憶がある。

 空を飛びながら、予備スラスターを横に吹かせてひらりと回避。

 そのまま上下に、タイミングをずらして動いてやれば回避成功だ。


 多少、Gが襲い掛かってくるがまだまだ。


「空さえ飛んでいなければっ! 落ちなさいっ!」


 すれ違いざまに、翼を切りつけ、段々とその力を奪う。

 何度か繰り返せば、自然と空を飛ぶ相手は数を減らす。


 地上はと言えば、苦戦はしているようだけど、なんとかなっている。


「ひとまず……か」


「レーテ?」


 雷撃の力をまとわせたブレードを仕舞い、ライフルも腰に。

 空に背を向けて、片手を腰に沿えるようにした。


 一見すると、地上の様子見をしているだけにしか見えない……はずだ。

 けれど、アイツが私の思うような頭の良さで、狙っているのなら……!


「反応っ!」


「せやぁぁぁあああ!!」


 カタリナの叫びのような報告と、大きな異形が上から降ってくるのはほぼ同時。

 聞いてから何かしたのでは、間に合わないだろうタイミング。


 左右のスラスターを使い、一気に機体を回転させた。


「……レーテ?」


「隙を狙うのは、頭の良い証拠。でもね、単純すぎたのよ」


 モニターの隅に、落ちていく()()の影。

 使っていなかったほうのブレード、ASブレードで切り裂かれたドラゴンだった物、だ。

 記憶を思い出しながら、居合切りのように振り抜き、切り裂いた。


 カウンターとして決まった、必殺とも言える一撃だ。


「さ、援護にいきましょう」


「了解!」


 物資としての回収は後の話だ。

 そのまま、地上の黒騎士たちへの支援を開始するのだった。






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